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【主人公は僕だった】

もうすぐ自分の人生が終わってしまうと知った男が、死を阻止するために奔走するファンタジードラマ。

映画の主人公は、小説の主人公。
主人公には、作家の声が聞こえる。
作家は、主人公の行動を正確に描写していく。

主人公にしか聞こえない声。
未来を俯瞰で捉える第三者。
主人公は、自分が登場人物であることなど、知る由もなかった。

この"知る由もなかった"という表現が、キーワードの一つとなってくる。
自分の人生を誰かは知っている。
そしてその声は、悲劇しか書けない作家の声だった。

人には必ず死がやってくる。
死がやってくることは誰もが知っているけれど、どうやって死を迎えるかは、知る由もない。
ただ、もしそれがわかっていたとしたら。

自分が死ぬことを避けたいと思うけれど、自分が死ぬことが一番美しいラストだったとしたら?
自分の死がこの世に作品として傑作を残すとしたら?

コロナ禍で、コンパスがグルグルと回り、どこを指すのかわからなくなっている今だからこそ、観るべき作品かもしれません。

作家役を演じているエマ・トンプソンの、コミュ障であり、かつ天才的な匂いのする役作りが素晴らしかった。
本当は美しいはずなのに、美しく見せようなどとは微塵も感じさせなかった。
それなのに、ラストシーンのエマは、とても美しかった。

役者は、想いを表現する。
あなたの人生の主人公はあなたです。
あなたもまた、役者です。
あなたはどんな想いを表現しますか?

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