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第誤回 私立古賀裕人文学祭感想

*テーマは「第一座右の銘」


「鶴だけど恩返しをもうやめたい」 佐藤昔話平さん

 みなさんご存じ「鶴の恩返し」のパロディー。
「男に二言はない」が座右の銘のおじいさんは、恩返しにきた鶴との約束を守り、決して鶴が機を織る部屋をのぞこうとしない。一方で、鶴はだんだんと機織りに飽きはじめる。
 おじいさんに気づいてもらうために、鶴が羽をバタバタさせ、最後には障子をくちばしで突き破ったのには笑ってしまった。着眼点がおもしろい作品だ。

「泳げ! 古賀裕人」 佐藤古賀裕人平さん

「これはまだ、ペンギンが「古賀裕人」と呼ばれていた時代の話」という1文目が衝撃的な作品。古賀コン恒例の古賀裕人ネタのようだ。
 自然界では泳ぎが苦手で仲間からバカにされていた古賀裕人=ペンギンが、水族館で「溺れている姿がかわいい」と人気になる展開にはほっこりしてしまった。持ち前のコミュニケーション能力を生かし、ペンギンと人間の架け橋になるラストシーンは「ファースト・ペンギン」という古賀裕人=ペンギンの第一座右の銘がうまく生かされていたと思う。
 最後まで楽しく読めた作品。この作品に投票した。

「一生懸命」 佐藤一生懸命平さん

 作者の座右の銘である「一生懸命」という四字熟語が最初から最後まで続いているだけの作品。古賀コン最多文字数を目指し、一生懸命に一生懸命を打ったそうだ。文字数は見事10万字を超えている。よく頑張りました。

「Less is more.」 佐藤最小限平さん

「。」という一文字(?)だけの作品。作者のXの投稿によると、座右の銘である「Less is more.」を表現しようとしたようだ。さらには古賀コン最小限文字数、最短執筆時間を目指したらしい。正直、反応に困る作品である。

「No music, No life」 佐藤音楽平さん

 古賀コン初の音楽作品。noteには楽譜と歌詞が貼られていて、Youtubeには実際に演奏してみた動画がアップされている。古賀コンの応募要項には「ジャンルは不問です。小説、エッセイ、短歌、官能なんでも大丈夫。」と書かれているから、たぶんアリなのだろう。
 一時間が作詞・作曲をした作者の才能は驚異的である。しかし、歌詞がほとんど「No music, No life」を繰り返しているだけなのが残念。もうすこしひねりが欲しかった。

「ゆるやかに流れる時」 佐藤時間平さん

 問題作だらけの今回の古賀コンの中でもかなりの問題作。正確には、作品自体は時計がたくさんある洋館を舞台にしたありきたりな殺人事件である。問題は執筆方法だ。
 作者は古賀コンのために、秒針の進むスピードが十分の一の特別な時計を作ったらしい(動画はSNSで公開されている)。だから、実際は6時間かけて「ゆるやかに流れる時」を執筆したことになる。「時計館の殺人」の逆みたいなトリックである。
 たしかに応募要項には「また規定の「1時間」をどう捉えるか、テーマをどう扱うかなどは、全て執筆者の方の自己判断にお任せ致します。自分が1時間だと思ったらそれが1時間なのだ!」と書かれている。しかし、これはずるいのではないか、という意見がSNS上で多数見られたのも当然のことだろう。
 私自身は作者の「1時間」の概念をゆがめる卓越した発想と、その発想を実現させた行動力は称賛に価すると思う。しかし、それなら作品自体も時間という概念に挑むなど、徹底的に「時間」と向き合ってほしかった。「Time is money.」という座右の銘も、作品内でほとんど生かされていないように思える。

「今日も快便! うんこ90cm」 佐藤うんこぶりぶりおしっこびっしゃー平さん

 タイトルの通り、作者は一時間の間トイレにこもり、実際に作品だけでなくうんこもひねりだしたらしい。「毎日快便」が作者の座右の銘らしく、それをしっかりと実践しているのがすばらしいです。
 作者はこのペンネームで某有名推理小説新人賞の受賞を目指しているらしい。心から応援しています。

「人工知能に書いてもらった! あなたの第一座右の銘は?」 佐藤人工知能平さん

 タイトルの通り、生成AIが書いた小説のようだ。「年齢性別国籍問わずどなたでもご参加頂けます」と古賀さんは言っているが、これは許されるのだろうか?

「吾輩は古賀裕人である」 佐藤文豪平さん

「吾輩は古賀裕人である。名前はまだ無い」という矛盾した冒頭ではじまる作品。これも古賀裕人ネタの作品のようだ。「どこで生まれたか頓と見当がつかぬ」と書いているが、古賀裕人さんの実家は西葛西駅から徒歩15分の清新南ハイツである。全体的に古賀裕人さんに対する知識と愛情が足りない作品だと言わざるをえない。

「第誤回 私立古賀裕人文学祭感想」 佐藤相平さん

 作者にとって3回目となる偽感想集。作者は今作にも自信を持っているようだが、以前の作品のネタを再利用しているのは残念。特に後半はネタ切れを感じる。 
 佐藤相平さんは「用意周到」が第一座右の銘らしい。前回の古賀コンで全作品の感想を律儀に書いたのも、すべてこの作品のための準備だったようだ。

*この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
*この作品は、【第5回】 私立古賀裕人文学祭に参加しています。


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英語を教えながら小説を書いています/第二回かめさま文学賞受賞/第5回私立古賀裕人文学賞🐸賞/第3回フルオブブックス文学賞エッセイ部門佳作