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落ち込むならば堂々と


10月に入ってからずっと心の調子が良くない。

9月末から10月頭に北海道に行っていた多幸感が現実の辛さを強めたせいか、はたまた寒さがドッと押し寄せてきたせいか。

心を探れば思い当たる節以外むしろ存在しない。そういえばアレも嫌だった、アレはまだ解決していない、アレは結局…。
芋づる式もいいとこだ。僕が芋農家だったら収穫は一発で終わることだろう。

職場でも程度の低いミスをし、なんでもないことで涙が出る。相手からの小さな発言の裏という裏を勘ぐり、それは石の下にうごめくダンゴムシやムカデを躍起になって探す子供のようだった。

「君はちょっと気にし過ぎなんじゃないか」
そう近しい人は言った。
しかし怒りと悲しみに支配されている僕からすれば、「お前のような友達も多く家庭も裕福であらゆる面においてツルツルの汚れのないような奴に言われたくないわ!」と怒鳴り散らしたくなる。
これはもちろん単なる八つ当たりであり、どんな環境だとしても必ず大変なものを抱えているのだ、ということはおジャ魔女どれみで勉強済みである。

とにもかくにも10月の呪縛から逃れるべく、友達と会ったりやるべきことに邁進したり、1日しっかり寝てみたりなどしたが、どうしたことかサッパリである。

むしろ酒のタバコの量が増え、好きなはずの映画鑑賞でピンと来ないままエンドを迎える始末。
創作意欲と感情が薄れてしまった今の僕はスーパーの30円引きになってさえも売れ残ったきんぴらごぼうだ。美味しいのに、きんぴら。

情緒が不安定になる度にTwitterでチビチビと愚痴る毎日。
ライブや予定が入れば少しは気が晴れるものの、1人部屋に帰ると波が再びザワザワと近づいてくるのだ。

頭は言葉と感情でいっぱいになり、僕と僕で口論が始まる。そのうるささから逃れるようにタバコと酒を体内に押し込みやり過ごす。しかし結果はより悪い方への進み、結局泣きながら寝落ちする…。これがもはや自宅で過ごす際の十八番となっていた。

君はなんて暇なんだ!筋トレでもやってごらんなさい、と愚かな体育会系はのたまうが、残念ながら過去に実証済みであるから黙っていて欲しい。

僕はともかくつらいのだ。
お前のせいかもしれないしアンタのせいかもしれない。いやいやしかし根本はいつだって自分自身なのだ。だがそれを受け入れることが苦しい。
逃げ続けてきた人生、とまでは言わないけれど、僕もそれなりに甘やかされて育ち、優しい人たちに囲まれてきた。
僕の周りには素晴らしい人たちがいる。もはやそれが苦しくなってきているのだ。
人と話すたびに、ああなんて僕はこんなことも分からないのだ、なんでこんな意地悪を言ってしまうのか、なんでこの人のような結果が出せないのか。
意味のない自責の念に囚われた責めのオンパレード、責め責めパラダイスである。

こんな生活から抜け出すべく、僕はカウンセリングへと足を運ぶことにした。
以前もチャレンジしたことがあったが、躁転した時に全てキャンセルするという有様で、鬱状態になった時に躁の自分を恨むのがいつものパターンだ。

しかし今回は鬱状態が大変長いことが功を奏した(とは言えない、なにしろめちゃくちゃしんどい)ので、無事カウンセリングの当日を迎えた。

以前行った心療内科では、軽い診察の後にすぐに薬がやってきた。
それはADHD用の薬で、多動や突飛な行動を抑える薬だった。
しかしそうした傾向は、ものづくりにおいてある種必要不可欠であり、注意散漫だからこそ周りの音に気づき柔軟に対応できる。
それ音楽や絵を描いたりして心の平穏を保ってきた僕からすればなおのこと不便だ。
服用した時は、まるで手足を奪われたような気分だった。

そうしたこともあり、不安のままカウンセリングへ向かった。
初めてだったこともあり、1時間半に及ぶ人生の振り返り。
初対面のカウンセラーに、自分の簡単なプロフィールから細かな悩みに至るまでを話すというのは至難の業だということを思い出した。

家族のことや、自身のことをこんなにしっかり話す機会があまりないため、時折自分が本当に事実を伝えられているかどうか不安になった。
自分の都合の良いように発言してはいまいか、話し漏れがあるのではないか、といった懸念が頭を埋め尽くし、後半は何を話したのかすでにぼんやりである。

その日はほぼ質問に答えるだけだったこともあり、特に手応えなどもなく、投げ出されたような途方もない気分になった。
これからどうなっていくのだろうか。

おやすみモードにしていた携帯に目をやる。特に目ぼしい通知もなく、興味がとうの昔に失せているメルマガや、迷惑メールのみだった。夕空と秋風が、より一層僕を惨めな気分にさせた。クソが。闇雲に寒くてすぐ暗くなってしまう秋冬に殺意さえ湧く。

高校生の時、好きだった女の子に「Twitterで暗いことばかり書くきむら、嫌いだな」と言われてコロリとアカウントを削除したことがあった。
そこから大学時代を経て、できるだけ暗い話は避ける努力をしてきた。
しかし人には変られない部分がある。僕の場合、人目につく場所で悲しみや怒りを吐露せずにはいられないのだ。

普段できるだけ明るく振る舞っている分、当然ギャップがあることだろうが、僕は所詮根暗どころか全暗である。頭の先から足の裏まで、暗くて暗くて仕方ないのだ。
これが僕だ、ということをわかって欲しくてこんなところまで来て喚き散らしているのかもしれない。
そうです、僕は面倒臭い人間。しかし人の都合に合わせて扱いやすい人間になってたまるかよ、というもはや誰も幸せになることのない意地を張り始めている。

ええい、どうとでも思うがいいさ!
俺は俺だ、暗闇ロードを突っ走り、暗闇なりの幸せを手に入れてやるんだ!
この際なりふり構わず、生きやすい環境と、自分をコントロールする力を育てていきたい。
そのためにも、窮屈な140文字で自分の全てを語ろうとせず、推敲しながらしっかりと、まじめに、落ち込んでいこうと思う。


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