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独演会後記。

「人にはそれぞれ、思い出したくない記憶があって。私にとってのそれは、四年間の社会人時代。考えたく無いから、創作にするのをずっと避けて来たが、漸く触れられるようになったんです。」

半年前、ツーマンライブ"裏日本"の際に『月曜日の雪を知っている』を初演奏した時のMCだ。

そしてそこから徐々に、社会人時代の曲が増えてゆく。

--------五月頭、或る状況で自宅で一人の男に昔の話をする事になる。

ボロボロと泣きながら、怒りながら、古い記憶を辿り、なんならその時の感情が憑依したように語った。

全てを話した後、私は「カウンセリングをして貰ったみたいです。有難うございました。」と言った。男は帰った。

全部を聞いて貰うのって、こんなに楽になるんだなとこの時に気付いた。

同時に、過去と向き合うべきタイミング何だと言うのを突き付けられた感覚で。

六年だ。いい加減に逃げていられないのだ。

明らかに、この"カウンセリング"以降に昔の事を思い出す事が増えた。良くも悪くも。

社会人時代をそのまま扱う曲は元より、今と昔が錯綜する曲も生まれてゆく。

そして話がまた最初に戻るが、ライブ"裏日本"の話だ。

2024年も早半年以上が過ぎ、数多くのライブを観たが今だに鮮烈に脳内に焼き付いてるのは、この日の片山氏の『砂漠』。

裏日本後記という文章でも書いたのだが、これを見せられ「この人の域にはまだ自分は達してない」と痛切に思わされて。

だから昨日の独演会では、私自身があの日の砂漠にあったような人の心を抉る、グチャグチャに、ボロボロにしてしまうような事をやりたかった。自分にそれが出来るか試したかった。

当然、それには自分の痛みが伴う。自分が痛くて痛くてしょうが無いから、人に痛みが伝わるのである。

私は、自分が痛くなるのをずっと避けていたんだと思った。地獄の四年間を、スコップで掘れる限りに掘る必要があった。

朗読詩を書く際に、嫌でも昔の生活、朝起きてから寝るまで鮮明に思い出す事もした。

辛い。辛い。創作は辛い。
でもやらなければいけない。

憑依するように、この頃の感情を思い出すように努めた。精神も不安定になった。

逆にそれも良かった。もっと昔に乗り移れる。

・自殺者対策会議
・生きてて良かった。
・月曜日の雪

という三つの代物が出来た。「生きてて良かった。」は、以前に書いた文章も織り交ぜる。

自分の事だ。自分事しか曲にしない私。
当然の如く曲と関連する。

ストーリーが全て伝わるように、セトリを組んだ。第二部に、私の過去を全部詰め込む。

第一部は前菜。昨日は、あの第二部がやりたかったのだ。

当たり前の話だが、私の表現は人を選ぶ。
カラスさんがブログに書いてくれた。「絶対に人気は出ない。アートなのだ。それでもやるのだ。私は支持する」と。

決して大入りでは無かったが、聞いた人全員の心に何かを残せた気がした。

短歌会の知り合いの人がボロボロ泣きながら聴いてて、そして終演後に私が発した色んな言葉に感情を露わにして触れてくれたのが、本当に本当に嬉しくて。

一人の人間の心を、ここまで動かせたのならもう成功なのです。何千人集めるより、意味があるのです。嬉しかった。嬉しかった。

自分のステージは、自分では見れない。
映像で見ても、それは違う。
本当の意味では決して見れない。

私は昨日、砂漠のような事が出来たのだろうか。
そうだったら良いのだが。

"裏日本"から半年。
どう変わったのだろう。私は。

行きたいところへ行ってるだろうか。
昨日も、ちょっと行きたいところへ進んだ筈なんだ。

初めての独演会、やる事にして良かった。
"やらなければいけない"と思った事は、間違いでは無かった。

私は昨日、あれをやらなければいけなかった。

【第一部】
1.犬の川
2.空っぽの青い犬小屋
3.じゅんさいになった猫
4.亀のいる木橋
5.泣いているのはなまはげです。
6.遠い昔の冬の空
7.ブラジルで夢を見よう。
8.たった一つだけの記憶
9.(朗読)帰郷
10.友川カズキを聴きにゆく(スローver)

【第二部】
1.(朗読)自殺者対策会議
2.裏日本(片山さゆ里・共作曲)
3.(朗読)生きてて良かった。
4.アトピーのうた
5.盛岡、雪。上田病院。
6.(朗読)月曜日の雪
7.月曜日の雪を知っている
8.(朗読)27年前
9.私は婆さんの死を知らない

アンコール.夏の風はいつも苦しい

・・・・・・終演後のムジカ。歩くクリム。時計は1時を過ぎ、帰る事を諦め色んな人と色んな話をする。日本酒が今日も美味い。本当に美味い。

朝も4時に。人気も無くなった店内。りょうさんと話し込む。

いつになるのか、実現するのかも分からないけど、また一つ夢が見れそうな夜明けの日暮里だった。

流れて来たCDの歌声を聴いて、私も生きていかねばと思った。生きてるうちは死にたくないから。生きてるうちは。


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