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「コミュニティデザイン」という言葉の分かりにくさについて

コミュニティをデザインすることではない

 コミュニティデザインという言葉は分かりにくい。プロダクトデザインはプロダクトをデザインすることだし、グラフィックデザインはグラフィックをデザインすることだ。だから同じように、コミュニティデザインはコミュニティをデザインするということだと思う人が多いとは思うのだけど、それは誤解だ。

 コミュニティデザインに関する書籍として、最も有名なのが、山崎亮さんの『コミュニティデザイン』(学芸出版社)だと思う。ズバリのタイトルで、この本が「コミュニティデザイン」という言葉を世に広めたといっても、決して言い過ぎではないだろう。

 さて、この山崎さんのこの本には副題がついている。それが、「人がつながるしくみをつくる」だ。この副題からも分かるように、つまるところ、「人がつながるしくみをつくる」ことをコミュニティデザインというわけだ。要は、「人がつながるしくみをつくる」ことによって、結果的にコミュニティができるのであって、ここでのデザインの対象はコミュニティそのものではなく、「人がつながるしくみ」の方にある。言い方を変えれば、コミュニティをつくることをゴールとしながら、そのプロセスをデザインするのがコミュニティデザインということだ。なんと分かりにくい。


あらゆるデザインを包括する広義のデザイン

 〇〇デザインという言葉は結構多いけど、その中には狭義のものと広義のものとがある。冒頭のプロダクトデザインもグラフィックデザインも、狭義の意味でのデザインで、デザインの対象が限定的だ。一方、広義のものには、インクルーシブデザインやユニバーサルデザイン、ソーシャルデザインなどがある。これら広義のデザインは、射程が広く、概念的で包括的。コミュニティデザインはこちらに分類される。

コミュニティデザインに関して言えば、その概念の中には、プロダクトや建築物といったいわゆるハードなものも、グラフィックやワークショップ、パブリックリレーションズなどのソフトなものも含まれる。プロジェクトに応じてもそうだし、対象者や地域性によっても、また、フェーズごとにも、必要となるデザインは違うし、求められるデザインが変わってくる。だから、コミュニティデザイナーと称する人たちは、あらゆるデザインを使いこなす必要がある。もちろん、すべてを一人でこなすなんてことはできないので、必要に応じて、各分野のプロフェッショナルに参画してもらいながら、全体をディレクションしたりするのだけど、それもコミュニティデザインを分かりにくくしている要因なのかもしれない。


コミュニティ力が問われだす

 まちづくり分野におけるコミュニティデザインの目的はと言えば、結局のところ、地縁型にせよ、テーマ型にせよ、「コミュニティによる自主的な活動を通じて、地域の課題の解決を図ること」と言えるだろう。少子化と高齢化と人口減少が加速度的に進展している日本社会において、コミュニティの課題解決力の重要性はますます高まっている。極端な話、この人口構成の変化は、行政府にとっては、税収の減少を意味し、行政サービスの質の低下に直結する。だから、これまでのように行政府をあてにできなくなった時に、コミュニティの課題解決力が問われることになるのだ。そして、その時は、刻一刻と近づいている。

 コミュニティデザインは分かりにくいが、これからの時代、日本にはコミュニティの課題解決力が重要な意味を持つ。幸いにして、各地の大学でコミュニティデザインを学ぶ学科が設置される動きもある。コミュニティの重要性やコミュニティデザインを理解し、「人がつながるしくみ」を作れる力を持つ人、つまりコミュニティデザイナーの今後の活躍に期待したい。



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