6月2日まとめて
肋のない空虚が、不安のバランスで支えてくれる。老婆のような霧に、体温をめぐらす死。日記を書き忘れてしまった日の焦燥で、産まれた魚が、空気を泳ぐ。釣り上あげた口で、この世がいっぱいだったとき、口のなかは、やさしい孤独で溢れていたが、死は美味で未来に向かい、新鮮であり続けた。
孤独は、
だった。
離島は
墓は、秋の夕方の同じ風。 風は、自分の髪の毛から、
信仰は、
静かな無意識が伺いをたてているのは従姉。
植物は惑星からの続きなのだろうか
温和な戦争に挑もうとして、
維管束の脈動
体液を水に薄めようとする。鹿は、液体の流れが響きつづける常に未完成の家に、帰らなければならない。
まだ旧姓が 転がっている
横恋慕の成分が、薄くにじんでいる
木陰で感じる雨音の思念でしょうか、それとも副詞でしょうか。孤独な沼で腹を上にした肉塊が、幸福としかいえない膜で覆われます。誰も傷つけない味の薄いスープに口をつけ、この水面の死を次の季節へ溶かしてみます。
置いていく
皮膚に、傷を付ける
水の影
神様が礼拝のあいだ、
考えている。
深い色をしめして、
あるかないかわからない水
なかで溶けるチョコレート
小さな嘘をもとめていた。沼にひそむ両生類が、深海の噂話をはじめる夜がある。深海魚はかつて、
祖母の、不安から産まれていたらしいし、呼吸とともに口中に入り込む季節風はと喋りあった。
…裏庭に点在している羊歯は、幻想する領土の画策だった。木々と枝枝と動物の関係について、森林のなかにいることの不思議さについてそのときの水田の体液は 臓物のにおいをさせていたか 水面に 鳥が脚を差し入れる ときほどの揺らめきがあったか 乾ききった枯れ草の束に尿のあと わたしには
土は、骨壺だった。
妹のほうが、
沼には、妹がいて、一緒に暮らしていた。
妹はいつも、指先に切り傷をつくっていた。妹は、切り傷のようだった。
耳を澄ます
目で、嗅ぐ。
触れる
視る
鼻
聴く
移動水族館
生命を運ぶ
臓器
貝の化石になるだろう。金属の虫が産まれるだろう。
かわってしまう。花粉で色のついた冗談まじりの涙が、決まったところを流れないから、
鹿は、木々の間で鹿が耳を
澄ましていましたが、
田園にふきおろされる風が始まる気配がしていました。
あ摩擦、
手首で多数決の果実をもぎ取ったばかり。不意に、昨日ながめた地球儀を置いた所が思い出せなくて、挙手を忘れた。ながら乗ってたブランコがまだ揺れているけど。
雨宿り
雨やどりの方法メモ。雨宿りの仮定のなか、鹿は水辺で瞳孔をひらく。晴れの日に、雨やどりを求めている。雨やどりのような鹿、雨やどりのように群れる。水は、雨やどりをどうするか考える。雨やどりに潜む水。雨やどりを小さくする。魚は、雨やどりを知ることがあるのだろうか。雨やどりから生まれる。
雨宿り
営みに、雨やどりが運ばれてくる。いつでも植物の成長に苦しめられてきた。かつては海底だったという記憶の深い色。水揚げされた深海魚の、飛び出した目玉が、水を憎み信頼する。水は、妥協のない活字で、具体的な時間だけを綴りながら、経験でうみだされた輪郭など、とっくに手放し続けている。
意味の、森林がどこからわいたのか。納屋の奥の、においにつかう形容詞から、文字が生まれたかもしれない。存在することで、透明な排泄を繰り返し、まだつたない筆遣いでも、小さな嘘を画くことをおぼえていく。ため息の場所を探しながら、偏見が颯爽と、引用する主体が使う連用形の、儚さをはこぶ。
水気に、群がる霊魂を、解剖するひらがなが、摩耗しはじめている。水鳥は、泥に拡散した光を啄んだ後、肺を小さくする次の季節への脈動に、姿を変える。置き忘れられる肌。テリヤキビーフバーガーって美味しいよね。あなたはウェンディーズ派。おれロッテリア。
窓から、家が生えはじめる。ふきこむ風が、どこかで霞むように消失するはずの、遠心力をともない訪れる。朝露は、自分が水滴になったのを、おどろいて滴る。窓は、あらゆる水の途中を、引き込んだ。水面に、尾を垂らし、墨をたらすように緩やかな産卵。水流は、将来の疾病の、予感をはこんでいる。
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