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静岡・下田→千葉沖80km漂流についての考察
2024年7月8日から10日にかけてこんな出来事がありました。
まず、この事故において、捜索や救助に関わったすべての人々に深いリスペクトを表します。
迅速な対応と献身的な努力により、被害者が無事に助かったことを大変嬉しく思っています。
白浜で20年以上ライフセーバーとして海を見てきた経験をもとにこの事案を考察してみます。夏休み、海水浴シーズンを前に何かの気づきとなれば幸いです。
経験則による部分も多く、根拠に欠ける点もあるかもしれませんが、公式なものではなく個人の見解としてご理解ください。
当日の気象海象は
当日の天気図を見ると、事故発生の前後にかけて高気圧下にありました。
風は平均で約5m/s、最大風速で約10m/sの西よりの風。波の高さはほどほどで、海が荒れていたわけではありません。
風速5m/sというと、葉っぱが舞ったり小枝が揺れ、ゴルフなどでは旗が軽くはためく程度。一方で、SUP等のアクティビティでは中止の目安です。
5m/s程度の風でも、沖合で流される強さであるということがポイントとなります。
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白浜の地形と風
白浜周辺のピンポイントの風向風速の記録はありませんが、浜では南西風が吹いていたと推測できます。
谷状の地形の特徴から南から北西の風が、南西風として吹くことが多くなります。これは経験則による推測です。
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黒潮の支流の影響
伊豆から千葉南房総方面は流されることは、これまでにもありました。私の知る限りでは、いずれも無人でしたが、漂流したフロートやシーカヤックが館山近辺に流れ着いたケースがあります。
気象庁は、海流(水深50mの深海流)に関するデータも公開しています。こちらを見ると、確かに千葉方向に向かう”黒潮の支流”が目立って存在しています。深海流に関する知見はあまりないのですが、表層の流れも同様と考えると千葉方向に流されたことも納得できます。
また、海岸近くでは北東方向への弱い流れがあります。南西方向への流れは10km以上離れたところが境目となっています。
沖合10km程度まで風で流され、その後海流に乗った。という状況が推測されます。
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の水深50mの海流
"離岸流"の可能性はあるのか
その時間、その場所に離岸流が発生していたか定かではありませんが、当日のコンディションでは可能性は低いと考えます。
サーフスポットでもある白浜は、波が高い日もあり、離岸流が発生することもありますが、数km先まで流されるような離岸流は珍しく、風の影響によるものという推測が妥当です。
南西風が吹くと、浮き輪やフロートはかなりのスピードで沖に流されます。
海水浴場として開設されると、沖合100m程度の位置にブイが設置され、この範囲までが遊泳エリアとして規制されます。
ライフセーバーがボードやIRBを利用して声をかけ、自力で戻れなくなる前に誘導しますが、こういった声かけは1日に数十件に及びます。
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救助ボート
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監視するライフセーバー
こちらのリンクも参考にどうぞ
浮いて待つという方法
今回のケースはまさに「浮いて待つ」ことで、わずかな生存率を上げて助かったものです。
ただし、ものすごく運が良かったケースです。
2023年度の警察庁調べでは、水難者の約44%が死亡・行方不明となっています。そういう状況にならないことが大事です。
装備も持たず、天気予報も確認しない登山者に「助けが来るまでビバークしてれば生き延びれる」というアドバイスすることは正しいでしょうか?
海水浴であっても、準備段階から安全に対する意識を持つことが大事だと考えます。
具体的なアクションが必要
海水浴期間外での、海の事故が起きると「海開き前でした」「海水浴場ではありませんでした」という報道がされます。
海開きが行われていれば安全、海水浴場であれば安全が確保されているという認識を助長しているようにも感じてしまいます。
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人工的に管理された水場もありますが、基本的に海は自然環境ですので絶対的な安全はありません。事故を防ぐためには、具体的な安全対策や意識向上といったアクションが必要です。
暑い日に目の前に海があれば飛び込みたくなります。利用のしやすさは海の良いところでもありますが、その手軽さゆえに危険性が過小評価されがちです。
穏やかに見える海面でも、風や海流の影響は目に見えにくいのです。特に浮き輪やフロートは風の影響を受けやすく、気づかぬうちに沖へ流される原因となります。
昨今の富士登山において、気象条件に対する無知や無謀な行動が問題視されていますが、海や自然環境では同様の危険性があることを認識し、安全にアウトドアレジャーを楽しんでいただきたいです。
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