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【就職相談】ハローワークで相談員と面談したお鼻し(お話)

退職して幾日か経ち、僕は転職スキルを身に着けようと、それなりに多忙な日々を送っていた。そんなある日、ワークサポートの相談員と面談をすることになった。

■ ワークサポートの相談員

ハローワークの支店みたいなもので、ワークサポートセンターというのがある。僕の住んでいる地域の担当ハローワークとは別に、駅ビルの中にちょっとした事務所という感じの「ワークサポートセンター」があった。

調べてみると「若者仕事相談」というサービスがあって興味を惹かれた。予約制の相談で、職業斡旋スキルのある担当者と面談できるというものだった。ちょっと良いアドバイスがもらえそうだと思い、早速申し込んでみた。

■ 転職活動

この頃の僕は中途採用の面接も経験し、リク◯ート社のセミナーにも通っており、それなりの転職スキルは身につけていた。とはいえ、情報はどんどん集めていくべきだと考えていた。

なにしろ転職がかかっているのだ。

無料とはいえ、税金で運営されているハローワーク。予約制の転職相談となれば、有益な情報も手に入るに違いないと考えたわけだ。事前に聞きたいことや悩み、全体の話の構成まで考えて準備万端、当日を迎えた。


■ 相談員と面談スタート

「よろしくおねがいします!」

スーツ姿の僕が元気に挨拶をすると、おごそかな挨拶が返ってきた。担当者は年の頃なら50代後半。わりと格好のいいシャツを開襟・ノーネクタイで着こなしたおじさま。髪は白髪交じりだが清潔にカットされ、カジュアルな相談係といった感じで、見た目の印象は悪くない。だが気になったのがその身に漂うテンションの低さだった。

転職に悩んでいる相談者より低いテンションってどうよ?

しかし瞬時に気を取り直し、勧められた椅子に腰掛ける。ここはリ◯ルート社ではなくハローワークなのだ。気合の入った準備をしてきたとはいえ、相談員のレベルが高いとは限らない。それにつては想定内だ。

ようは使い方次第。僕は気持ちを切り替え、この時間を、いかに有益に過ごすかを考えることにした。

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■ 転職相談

僕は受け身でいるつもりはまったくなかった。さっそく準備してきたことを伝える。これまでの活動を簡単に説明し、相談の目的、悩みなどを、順番に話していった。相談員とのやり取りが始まった。

が、ちょっとマテ。暗いし、テンション低くすぎないか?

僕にとっては想定内だが、深刻な悩みを抱えた人も来るのではないか?初めての転職で不安な人もいると思う。仕事が見つからず落ち込んでいる人もいるのでは?そんな相談者を励ますどころか、むしろ一緒に沈んでいくようなこの雰囲気は何だ!?

僕は思った。ここは主導権を握らなければ。

決意を胸に秘め、相談を進めていくことにした。

■ 新たな発見

僕の誘導が効果を発揮し、相談員の説明に少しづつ調子が出てきた。仕事選びのアドバイス・経験の棚卸しなど、これまでに聞いたことのある話も多かったが、中には「なるほど!」と感じるアドバイスや情報も出始めた。いい感じだ。ビハインドを負ってスタートした転職相談ではあったが、どうやら有益な時間を過ごせているようだ。

しかし異変は突然起こった。

僕があることを発見してしまったのだ。
それは、彼の鼻からでている一本の鼻毛だった。

■ 全てが「H」になる

出ている。鼻毛が。(倒置法・強調)

もうこうなると何を話しても鼻毛。何を聞いても鼻毛。すべてが鼻毛になってしまった。僕の力ではどうすることもできない。

『これまでの経験をさらに「伸ばして」いくならこの仕事がいいですね』

『…まだこの先「長く」く働いていくのだから』

話すたび動くたび、集中力のすべてが彼の鼻毛に注がれる。ここまでか…僕は敗北を悟った。

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■ 終焉の時

「今日はこのへんで「切り」あげましょうか」

彼の声で僕は我に返った。これのどこが「想定内」だというんだ。しかし、悔やんだところでどうすることもできなかった。僕は負けたのである。「ありがとうございます。また相談(鼻毛を確認に)に来ます」なんとかその場を取り繕うと、僕は席を立った。

こうして初めての転職相談は幕を閉じたのである。そしてその日、転職相談で得た収穫はたった一つ。

鼻毛は致命的だということ

すべては鼻毛で始まり、鼻毛で終わる。僕はこの日を忘れることはないだろう。そして、ほんのちょっと身だしなみについて考えることができた。

ほんのちょっとだけど。

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