【知恵の本棚】仕事の正しい見積もり方とは? 大企業で学んだ、私の見積もりノウハウを公開します。
仕事の見積もりって何? 何のために見積もりするの?
わかるようでわからない「見積もり」という作業。
しかし、仕事をする前の見積もり、実は非常に大事なんです。それは、見積もり方ひとつで、その仕事の成果が大きく変わるからです。大きな仕事になればなるほど、見積もる力の差が、成果の差として跳ね返ってきます。
このnoteの後半に、私の見積もりノウハウを公開しています。高い成果を出す見積もりのしかたを知りたい方は、必見ですよ。
見積もりとは計画を立てることではない
仕事を外注する時、納期と金額の書かれた見積書が送られてきますよね。
一方、あなたが上司から仕事を依頼されても、普通は見積書なんて作りません。
でも、その仕事を具体的なアクションへ落とし込んだり、期限を決めたりはしているはずです。無意識でも見積もりはしているんですね。
では、見積もりって何を決めることなのでしょう。
納期? 金額? アクション?
最初に、会社の上司からそれなりに重い仕事を依頼された時を例に、具体的に何をしているか考えてみましょう。
アウトプットを出すのに必要なアクションをピックアップする
↓
各アクションにかかる時間(工数)を予想し、総工数を出す
↓
その総工数を1日に使える時間で割って、完了日を計算する
↓
完了日を決定し、上司の合意をとる
一見、これで問題ないようにも思えますが、アウトプットが満足いくものになるかという点では、疑問が残ります。
どういうことか。
この見積もりのアウトプットは、計画を決めたことだけです。
私の経験から、「見積もり=計画を決めること」だと思っている方は、とても多いように感じます。
本来、見積もりとは、仕事の価値を見積もることです。計画は、その判断材料の一つにすぎないんです。
具体的には、アクション、工数、完了日に加え、コスト、利益、マイルストーン、リスクなど、たくさんの情報を集めないと、仕事の価値を正しく判断できません。いずれかの情報が欠けると、無駄な仕事をしてしまう恐れがあります。
仕事の価値を見積もる
では、集めた情報から、仕事の価値をどう見積もればよいのでしょう。それには、費用対効果の概念が必要です。
100万円の売上を見込める仕事でも、120万円のコストがかかるなら、よほど特殊な事情でもない限り、その仕事はしない方がよいということになります。
一方、20万円のコストで100万円の売上を見込めるなら、やってみる価値はあります。
直接お金のやり取りをされない方は、自分の仕事にコスト計算は関係ないと思わるかもしれませんが、そんなことはありません。会社からお給料をいただく時点で、それがコストになります。
例えば、1日8時間、月に20日働いて、月給32万円だとすると、時給換算では2000円になります。何もしなくても1時間あたり2000円の人件費コストが発生するということです。
実際は、社会保険料、交通費、福利厚生費など、雇用にかかる様々な費用もコストになるため、時給の何倍にもなります。仮に、すべて含め、全社員の平均コストが、1時間あたり1万円としましょう。
つまり、一人あたり1時間1万円以上の利益を出せなければ、会社は赤字になるということです。
コスト単価1万円だと、10万円使ってアウトソーシングすることで20時間の労働をカットできるなら、その方が10万円得します。5時間のカットしかできないなら、5万円損するので、アウトソーシングしない方が賢明かもしれません。
これは、費用対効果を数値化し、仕事の価値を判断していることに他なりません。コストと利益を計算してはじめて、こういう判断ができるのです。
このような単価を使った費用対効果の計算は、価値判断の材料として使えますので、ぜひ覚えておいて下さい。
私の見積もりノウハウ公開
では、具体的に、見積もりのしかたを見ていきましょう。ここでは、プロジェクトチームを作って、ある製品を開発するケースを想定しています。
STEP1:マイルストーンの作成
たいていの場合、仕事の依頼者が希望する納期というものがありますので、その日より前にプロジェクト完了日を設定します。万が一、完了日が後ろへずれても問題ないよう、納期に対し多少余裕を持った日付にしましょう。
次に、プロジェクトを進める上でポイントとなる重要イベントと、その日付を決めていきます。進捗確認会議、重要アクション完了日、製品レビューなど、進捗への影響の大きいイベントは、漏れなくピックアップします。
前のイベントから順に日付を決めていくと、前半は余裕がある一方、終盤にイベント盛りだくさんという計画になりやすいです。少しでも計画が狂うと完了日に間に合わなくなるので、この決め方はおすすめできません。
各イベントの日付は、プロジェクト完了日から遡って決めていくようにしましょう。終盤にドタバタしなくて済む計画にできます。前半から余裕の少ない計画にはなりますが、その方が気の緩みも出にくいので、一石二鳥です。
STEP2:アクションの洗い出し
目指すアウトプットを達成するために、必要なアクションを書き出します。
あまり細かいところまで考える必要はありませんが、外せないアクションや、ポイントとなるアクションを漏れなく洗い出すようにします。
難易度の高いアクションが出て来た場合は、有識者の手を借りる、アウトソーシングする、などの検討を加えましょう。
STEP3:担当者の割り振り
各アクションを行うのに、誰が適任かを決めていきます。
単純に、アクションを各メンバーに均等に割り振ってしまうと、進捗にばらつきが出ます。
メンバー全員が、だいたい同じ時期に担当業務を終えられるよう、各自の経験や能力、他の仕事との兼ね合いなどを考慮して、割り振るようにしましょう。
割り振りは、最後にもう一度調整することになるので、この時点では、大まかに決めるだけで大丈夫です。
過去に経験のないアクションは、早い段階で着手して、スケジュールリスクを見極める必要があります。最初から専任できる人をアサインしましょう。
STEP4:工数の見積もり
洗い出したアクションごとに、それを実行するのに必要な時間を計算します。
過去に似たようなアクションをしたことがあれば、その時にかかった時間を参考にするとよいです。
各アクションが、問題なく順調に進むとは限りませんので、少し多めにしておくようにしましょう。アクションごとに判断するのが難しければ、一律10%増しとかでもいいでしょう。
過去に経験のないアクションの場合、さらに多めの工数を見込んでおくようにしましょう。余裕があれば、見積もり前にさわりだけでもやってみて感覚を掴んでおくと、見積もり精度が上がります。
STEP5:ガントチャート作成
横軸を日付にし、縦にアクションを並べていき、どの時期にどのアクションを行うかを、帯状グラフで記入していきます。Excelで作っておくと計画変更時の修正も簡単です。
最初に決めたマイルストーンをその日付の位置に書いてから、帯状グラフを記入していきます。
1日5時間使える担当者の場合、見積もり工数50時間のアクションは10日かかりますので、営業日10日ぶん、グラフが引かれることになります。
同じ担当者の複数のアクションが同列に並ばないよう、注意しながら表を埋めていきましょう。(数時間で終わるアクションなら、同列に並べてもかまいません。)
担当者ごとに色を変えると、無理のない計画になっているか確認しやすくなります。
ガントチャートを埋めてみると、各マイルストーンまでに必要なアクションを完了できないメンバーがいたり、一番最後の完了時期がメンバーによってばらついていたりするのが、わかってきます。
矛盾もなく、無駄もなく、無理もない計画になるよう、アクションの割り振りを調整しましょう。
STEP6:コスト試算
開発にかかるすべてのコストを洗い出します。製造原価、試作費、開発費など、発生する費用は漏れなく含めるようにします。
人件費は、最初にお話しした通り、トータル工数に単価をかけて算出します。人件費単価は、マネージャーなら知っていて当然なので、課長以上の人に聞いてみて下さい。工数見積もりの際、一律10%増しとかにしたなら、その分も費用に含めます。
各費用を合計したものが、トータルコストになります。単価にする場合、トータルコスト÷全工数で計算します。
STEP7:利益計算
予想売上からトータルコストを引いたものが予想利益です。
この利益の値がどれくらいかによって、プロジェクトの価値を一次判断します。
期待するほどの利益を出せないなら、工数を削減するか、コストを下げるか、売上を上げる余地がないか、再検討しましょう。
それでも打つ手がない場合は、プロジェクトをやめる判断が必要でしょう。
STEP8:リスク分析
数字の面からはプロジェクトを始める価値があると判断出来ても、まだ終わりではありません。
プロジェクトを失敗させる可能性のある要因を、洗い出しておきましょう。
例えば、納期を守れないと売上がゼロになるとしたら、プロジェクトの遅延が大きなリスク要因になります。
リスク発生時に打つ手、例えば、追加できる人員を確保しておくとか、外部のサービスを利用して加速するといった手段をもっておくようにします。
STEP9:価値判断
STEP8までで、プロジェクトを実行するだけの価値があるかを判断する材料が揃います。
期待する利益がとれ、失敗するリスクも低いという見積もり結果なら、実行する価値ありとなります。
失敗するリスクがあっても、大きな利益を期待できるなら、リスク要因をモニターしながら、プロジェクトを進めようという判断になるかもしれません。
リスク要因が多いわりに、利益も期待できないという見積もり結果なら、プロジェクト中止の判断になるでしょう。
アクションと完了日を見積もっただけでは、価値を判断できないことが、おわかりいただけると思います。
STEP10:合意形成
見積もった結果については、その全てを関係者全員と共有し、合意を取りましょう。
これを怠ると、特に仕事の割り振りに関するトラブルが発生しやすくなり、頻繁に計画の見直しが発生する原因となります。
以上が、具体的な見積もり手法になりますが、これくらいのレベルで見積もりができると、仕事の成功確率はぐんと上がります。
まとめ
仕事の価値を見積もるとはどういうことなのか、おわかりいただけたなら幸いです。
プロジェクトチームの仕事を例にお話ししましたが、一人で完結する仕事でも、検討範囲が狭くなるだけで、考え方は同じです。
正直なところ、見積もる作業は、そんなに簡単ではありません。特に、仕事の経験が浅い方にとっては、難しい作業になります。
それでも、仕事の価値を見積もる習慣は、身につけておいた方がいいです。
事務職の方など、コストや利益の見えにくい仕事をしている方でも同じです。社員100人の会社で、各社員の年間10%の労働時間削減に貢献しているなら、あなたの1年の労働コストが、その10倍のコスト削減という利益(大きな価値)を生んでいることになるのです。
私もそうでしたが、見積もりを何度も繰り返すと、受けた仕事の価値を、その場で直感できるようになってきます。
いま若い方でも、将来リーダー職に就いたり、マネジメントをしたりするようになると、こういう直感が大いに役立ちます。多くの場合、リーダーやマネージャーにはその場での即時判断が求められるからです。
あなたも今日から「価値を見積もって仕事をする」習慣を始めてみませんか?
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。このnoteが、あなたのお役に立てたなら幸いです。
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