【知恵の本棚】ベストの尽くし方、見直してみませんか?
目標を達成するために、ベストを尽くす。
言葉にするのは簡単ですが、何をすれば、ベストを尽くしたことになるのでしょう?
「ベストを尽くす」=「自分の今持っている力をすべて出しきる」だと思っている方は多いかもしれません。
私も若い頃はそうでした。特に仕事では、へとへとになるまで頑張ってでも、すべてを出し切ろうとしていました。
締め切りまでの時間が理不尽なほど短くても、残業に残業を重ねて何とかしようとしたり、自分の知識や技術が不足していても、何度も何度もトライエンドエラーを繰り返して答えを出そうとしていました。
でも、どう頑張っても、仕事の締め切りを延ばしてもらうか、どこかで妥協して間に合わせるか、どちらかになります。いくら頑張っても、周りから褒められることはありません。何か自分だけが、辛い仕事をしているような錯覚に陥ります。
厳しいノルマを課されると、このように仕事の時間を増やして対応しようとする人が多いと思います。特に若い人にはその傾向が強いはずです。
私の場合は運よく大丈夫でしたが、普通はこんなことを何度も繰り返していると、体や心に不調をきたします。
私は幸運にも、入社3年目からプロジェクトリーダーを任されました。何度かプロジェクトリーダーを経験するうちに、それまでの自分のベストの尽くし方が間違っていることに気づきました。
今振り返ると、体を壊しかねないような働き方がおかしかったのは明らかですが、当時はそれが当たり前だと思い込んでいました。
今の私の「ベストを尽くす」の定義は、当時と全く違っています。
その答えを言う前に、2つの例を挙げて、まずは、「目標」、「行動」、「成果期待値」の関係性を、一緒に考えてみましょう。
会社の営業職の人が、ある商品の売上を20%アップさせるノルマを与えられたとします。
ノルマを達成するために、それまで以上のこと、例えば、飛び込みの営業を増やしたり、話術を勉強したり、商品プレゼン用のツールを改善させたり、自分にできるありとあらゆる手を尽くします。
その成果は、売上20%アップできるかもしれないし、10%アップで終わるかもしれません。
目標=売上20%アップ
行動=自身の営業手法、能力の改善
成果期待値=売上20%アップかもしれないし、10%アップかもしれない
マラソン選手が、ある大会に勝つことだけを考えて、ベストを尽くす場合はどうでしょう?
大会出場者の顔ぶれや、過去の優勝タイムから、勝つために必要なタイムを設定し、それをクリアするようトレーニングや技術面の強化練習をします。本番に強くなるメンタルトレーニングをしたり、ライバルに勝つための戦術も考えます。
その成果は優勝するかもしれないし、しないかもしれません。
目標=大会での優勝
行動=自身で考えたトレーニングや練習
成果期待値=優勝するかもしれないし、しないかもしれない
営業職の例でも、マラソン選手の例でも、一見、ベストを尽くしているように思えます。しかし、成果の期待値を見てみるとどうでしょう?
営業職の場合、うまくいけば20%を少し超える程度の売上アップを達成できますが、目標未達になる可能性も十分にあります。
マラソン選手の場合、うまくいけば優勝できますが、優勝できない可能性も高いでしょう。
私たちは、ノルマを与えられると、それを達成する方法を考えがちですが、それでは、うまくいってもノルマをぎりぎり達成することしかできません。少し想定外の事態が起きたとたん、ノルマ未達となる可能性が高まります。
では、ノルマを大きく越える目標を設定するとどうなるでしょう?
営業職の人なら、20%売上アップを実現させようとするのか、100%売上アップを実現させようとするのかで、ベストの尽くし方が変わってくるはずです。
20%アップでよければ個人の営業スキルだけで対応可能かもしれませんが、100%アップを目指すなら、最新のマーケット調査や商品の改良など、営業職以外の人も巻き込んだ活動が必要になるかもしれません。
結果的に、売上100%アップは達成できず、50%アップで終わるかもしれませんが、それでも、もともとのノルマである売上20%アップを越える可能性は高まります。
目標=売上100%アップ
行動=チーム活動(マーケティング、商品改良、各個人の業務改善)
成果期待値=売上100%アップかもしれないし、50%アップかもしれない
マラソン選手なら、優勝さえできればよいと思うのか、日本記録で優勝したいと思うのかで、ベストの尽くし方が変わってくるはずです。
優勝だけを目指すなら、同じ大会に出るライバルの持ちタイムを超えるように準備し、相手との相性の良い戦術まで考えれば十分と思ってしまいます。
でも、日本記録を出すとなると、優秀なコーチや特別なサポートチームの存在が必要になるでしょう。
結果的に日本記録が出なかったとしても、優勝する確率は高まります。
目標=日本記録で優勝
行動=優秀なコーチとチームにサポートされた練習
成果期待値=日本記録はわからないが優勝する確率は高い
つまり、ベストの尽くし方は、何を目指すかで大きく変わるものであって、「自分の今持っている力をすべて出しきること」とは限らないということです。自分以外の人の力も借りた、さらに上のベストの尽くし方もあるわけです。
そういう意味で、真のベストはあなたが考える遥か上にあるはずです。ただし、無限に上にあるわけではなく、時間やお金や人といった有限なリソースとの兼ね合いで、どこかに落ち着きます。
だからノルマを与えられた時、自分ひとりでできる範囲でベストを尽くすのが良い選択なのか、よく考える必要があります。
誰かとお互いに手を貸し合う方が高いアウトプットを出せるかもしれません。目標達成のキーマンとなり得る人からアドバイスをもらったり、サポートしてもらうべきかもしれません。
2人で協力し合うことで2倍になったリソースを、最大限有効に使うことができれば、アウトプットは2倍どころか、3倍にも4倍にもなり得るからです。
自分の苦手な部分を得意とする人と手を組めば、強みの部分に注力できるようになります。お互いが弱みを補い合うことができれば、どちらにとってもアウトプットまでの時間を短縮でき、その時間を仕事の質の向上に充てることもできるはずです。
トライアンドエラーで膨大な時間を使うよりも、有識者にアドバイスをもらうことに時間を使った方が、短い時間で高い成果を出せるでしょう。
自分ひとりで頑張るより、もっとスマートに、高い費用対効果でアウトプットを出せる方法があるとしたら、それが本来の「ベストを尽くす」ではないでしょうか。
今の私の定義はこうなります。
「ベストを尽くす」=「利用できるあらゆるリソースを含めて、費用対効果が最大になるであろう方法を選択する」
"費用対効果が最大になる"というのがポイントです。工夫をすることで労力やコストを抑えながら、より大きな成果を目指すということです。それにより仕事の単価も価値も上がります。
一人だとへとへとになって頑張っても出せないような成果を、もっと楽にスマートに出す方法に気づくためには、目標を適度に引き上げてみるのがおすすめです。ただし、異常に高い目標設定をすると、何をするにも障壁が高すぎて、身動きが取れなくなりますので、引き上げすぎは禁物です。
ノルマを与えられたら、自分だけで達成しなければならないとは考えず、もっと広い視野を持って、それを大きく越えるための手段はないかを考える。そうすれば、私がそうであったように、仕事に追われる日々からも孤立感からも解放され、仕事がもっと楽しくなるかもしれません。
視点を上げることで、思考が変わり、ベストの尽くし方が変わり、成果も変わって来るということは、知っておいて損はないと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。このnoteが、あなたのお役に立てたなら嬉しいです。
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