ドーハの必然
1993年のW杯アジア最終予選最終節•イラク戦。試合終了間際、同点に追い付かれた日本代表は、掴みかけていたW杯初出場のチャンスを逃してしまった。「ドーハの悲劇」と呼ばれるこの出来事を選手として経験したのが、今の日本代表で指揮をとる森保一監督だ。あれから30年の時を経て迎えた、今回のカタールW杯。ドイツとスペインに勝利した日本代表の躍進ぶりは「ドーハの奇跡」と称されている。
僕の高校のサッカー部には「必然の奇跡」という言葉が、先輩から代々受け継がれていた。高校に入学して間もない頃の自分にとって、その言葉は、5文字で矛盾を表しているようにしか思えなかった。でも、サッカーと向き合い続けるにつれて「必然の奇跡」という言葉が何を伝えたいのか、しだいに分かるようになってきた気がする。
高校最後の大会が近づいてきた頃、チームのエースがLINEのステータスメッセージに〈奇跡を起こすための努力〉と記していたのを、今でも覚えている。強豪と呼ばれるようなチームを倒すことは、奇跡なのかもしれない。でも、相手との差を埋めるべく必死に努力すれば、奇跡を起こすことができるはず。それが、スポーツの醍醐味でもある。
日本サッカーに関わるさまざまな人が〈奇跡を起こすための努力〉を続けてきたからこそ、ドイツにもスペインにも勝つことができた。そういう現象をただ「奇跡」という言葉で片付けるのは、もうふさわしくないのかもしれない。言うなれば「ドーハの必然」だ。時代は変わった。決勝トーナメントでも、さらなる躍進を見せてほしい。
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