見出し画像

【おもしろいの正体:7】おもしろい、は隙間に挟まっている。

不自由だからこそ
隙間をなんとか
見つけようとする。

CMを作るという仕事をしていていつも思う
ちょっと不謹慎な感覚ですが、

ビジネスとエンタテインメントの間と言うか
真面目と遊びの間と言うか

自由と不自由の両方を持っていて、
常にどっちに転ぶかわかんない。

まあ中途半端と言えば中途半端で、
そこが魅力でここまでやってきた気がします。

仕事は目的を達成するためにあるので、
やるべきことはガチガチに固められている、
一方で、なぜか隙間があって、
その隙間をなんとか見つけようとする
そんな作業のような気がします。

隙間を作ることで
体感速度を長くする。

最近のCMは、
その隙間が見えづらくなっていて、
そもそも隙間があることに気づいてない。

または、隙間というのが悪いこと、
目的の反対側にあって邪魔するもの、
みたいに見てるようにも感じます。

CMを作るときに考えていたのは、
15秒や30秒をどう長くするか。

これは物理的な意味ではなく
体感速度を長くするってこと
で、

そのために
隙間を見つけようとしてたように思います。

むずかしく言うと
時間の隙間を広げることではなく、

同じ時間軸に
別のレイヤーを重ねるような広げ方で、
普通に見ただけでは
見えない「層」のようなものが、
目を凝らすと見えるようになる、
という広げ方だった
ように思います。

一つのものが複数の意味を持っていたり、
ゴールにたどり着く道筋を
逆から辿ったりする。

わからない、という
隙間を作ることで
おもしろくする。

結果、パッと見、
意味がわからないCMというのが
なぜか成立していて、そんなものが
1980年~90年くらいには結構ありました。

CMとは「モノを売るためのもの」なので、
意味がわかんないというのは本来ありえない。

それは「なぜそれがいいものなのか」を
伝えられないから。

それでも一定数、意味のわからないCMはあって
ボクらはそれが大好きでした。

映画なんかだと、
ハリウッドとフランス映画みたいに、
わかりやすいエンタテインメントと、
どこか不条理で
深く感情を揺さぶるものが両立していて、
好みはあるにせよ、どっちも成立してます。

「わからないけど好き」が、
購買意欲につながらないのか
というとそんなこともない。

結局好きは正しいを超える。
人間はそんなに正しいことだけで
動くものでもない
です。

だけどなぜこれで売れたのか、の
説明がつかないから応用が効かない。

方程式にならないので
なかなかわかってもらえない。

考えるという隙間を
見る側に渡してあげる。

最近は効果が証明できないと
作らせてもらえないので、
今のCMにはわからないものが少ないし
作ってもあまりウケない。だから

おもしろくても
わからないことに我慢できず
すぐにスッキリさせちゃう。

受け手にも許容度がなくなっちゃったのか。
とも思う一方で、わかんないから考えたい、
という需要はやっぱりある
ようで、

考察したくてたまらない人は多く、
こっちはこっちで高まってる感じもします。
だから考える隙間の需要みたいなものが
なくなったわけではない
です。

考えるという隙間を
見る側にプレゼントしてあげることで
おもしろいという感覚を作ることができる。

わからないものが好きだ vs わかるものしか愛せない

ムンクの叫びとねじ式(つげ義春)

わからないけど好きなもの、を考えてたら
この二つを思い出して(ねじ式とムンクの叫び)

この日本とノルウェーの、
何だか頭おかしい風景が似ていたことに
衝撃を覚えました。

こういうのって確かに意味はわからないけど、
面白いと思っちゃう
のは何なんでしょうね。

たぶん子供も好きだから、
理屈じゃないんだろうと思います。

虫とか恐竜とか電車とかブルドーザーとか
誰も教えないのに好きだったり、
てかこういうの、子供だけじゃないですね。

怖いとか気持ち悪いとかグロいとか、
でかいとか硬いとか、
どんどんフェチな方向に行っちゃうけど、

そういう教科書に載ってない、
人を惹きつけるもの、ってものすごく強力です。

そして、やっぱり猫にはかなわない。

(理屈より感情に訴えるをコンセプトに制作したレインボーモータースクールのポスター)

結局勝負したら理屈のない方が勝つと思う。
それが結論です。

ねじ式、すごくおもしろいので
知らない方はぜひ読んでみてください。次回は

【おもしろいの正体:8】わかりにくいはわかりやすいよりおもしろい。

気が向いたら、また遊びに来てください。

いつも「おもしろい」を探してるクリエイターへ


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?