里野山女魚

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文体の舵をとれ練習帳

練習問題③追加問題問2  どこにでもよくある話だ。不幸だなんて言うにはおこがましく、より苦しみを味わう人間からすれば、お前ぐらいで絶望するな──と鼻で笑われてし…

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1か月前
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文体の舵をとれ練習帳

練習問題③問2 「今から死にます。今までどうもありがとう」と友人から連絡が届いたのは深夜三時頃で──その日はたまたまアルバイトが休みで、夜更かしをしている晩だっ…

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1か月前
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文体の舵をとれ練習帳

練習問題②  その日が最後のコンサートで運良くそのチケットを当てたファン達はみんな彼女がステージに上がった途端すすり泣きを始め最後の一曲ですと彼女が言うのを聞く…

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1か月前

文体の舵をとれ練習帳

練習問題①問1  紫電清霜、鳳凰なつめは歩く台風である。蝶よ花よと育てたゆえに自己愛大きく、だがしかしそれを自己陶酔と貶すものはいない。いないというのは言えない…

里野山女魚
1か月前

文体の舵をとれ練習帳

練習問題③追加問題問2

 どこにでもよくある話だ。不幸だなんて言うにはおこがましく、より苦しみを味わう人間からすれば、お前ぐらいで絶望するな──と鼻で笑われてしまうのでは無いか、〈不幸である〉踏ん切りの付かない無防備な人間の話だ──彼女はもう何もかもが面倒だった、思い通りにならないとすぐに彼女を引っぱたく父親に、味方をしてくれない母親、彼女から借金をして返さない彼氏、子供の頃から一向に改善しない

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文体の舵をとれ練習帳

練習問題③問2

「今から死にます。今までどうもありがとう」と友人から連絡が届いたのは深夜三時頃で──その日はたまたまアルバイトが休みで、夜更かしをしている晩だった──私は(そうか、いよいよ決めたんだな)と素直に受け止めたりして、「それなら今日の昼、十二時まで待って死んでほしい」と返事をしてから、寝ていた両親をたたき起こし──当時の私はうつ病で大学を休学中のため、親のすねかじりをしていた──自分で

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文体の舵をとれ練習帳

練習問題②

 その日が最後のコンサートで運良くそのチケットを当てたファン達はみんな彼女がステージに上がった途端すすり泣きを始め最後の一曲ですと彼女が言うのを聞くと何とか我慢していた泣き声も抑えがきかなくなって溺れるような声で泣くので会場に響くえずく声と鼻水をすする音彼女はステージに立ってその汚い音を冷たくて月肌のように美しい本物すぎて偽物みたいな眼球で客席全体を見下ろし黙って聞いていてその姿はフ

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文体の舵をとれ練習帳

文体の舵をとれ練習帳

練習問題①問1

 紫電清霜、鳳凰なつめは歩く台風である。蝶よ花よと育てたゆえに自己愛大きく、だがしかしそれを自己陶酔と貶すものはいない。いないというのは言えないというわけではなく、歩くたびに蹴散らしてしまうので物体としていないということである。ひらりと制服のスカートひるがえし、くるりと一回転。半径五〇〇キロメートルに、風速四十メートル毎秒の風が吹く。彼女はバレリーナ。くるりくるりと左回転。風が上

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