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文体の舵をとれ練習帳

練習問題①

問1


 紫電清霜、鳳凰なつめは歩く台風である。蝶よ花よと育てたゆえに自己愛大きく、だがしかしそれを自己陶酔と貶すものはいない。いないというのは言えないというわけではなく、歩くたびに蹴散らしてしまうので物体としていないということである。ひらりと制服のスカートひるがえし、くるりと一回転。半径五〇〇キロメートルに、風速四十メートル毎秒の風が吹く。彼女はバレリーナ。くるりくるりと左回転。風が上昇し人は舞い上がる。
 鳳凰なつめは歩く台風である。ぬくぬく温室育ちゆえ、自尊心高く、だがしかしそれを自分勝手と嫌うものはいない。ところが彼女は恋をした。強風、狂風、その中で、たった一人風を堪えた、はち切れんばかりの太もも筋肉。耐え抜いた彼と話したくて鳳凰なつめは右回転。巻き上げた人間を地面へ降ろし「今日良かったら一緒に帰りませんか」
 やっと日本は晴れました。


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