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美術展ではなるべく図録を買うことにした


7月に見に行った「塩田千春展『魂がふるえる』」の図録が、昨日、家に届いた。

※ 図録:美術展や展覧会会期中に会場で販売される展覧会カタログのこと。

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美術展の初日に行ったこともあり(正確に言うと初日の前日に内覧会で行った)、図録の印刷が間に合わなかったのだと思う。

というか、たぶん「作品の設営」に公開前日の夜までかかった、みたいなことだったのだと思われる。

だって想像するだにものすごい労力がかかるアート展示だった。会場に糸を張り巡らすあの労力たるや・・・。

なので、撮影して編集して製本するという工程がまるで間に合わなかったのだろう。会場で図録を買うのは予約制だった。会場で予約してお金を払い、送付してもらう、という段取りだった。


家の断捨離を継続的にやっているので、本を増やしたくはない(すでに数千冊を処分したが、まだまだだ)。

そういう意味では、分厚い図録も増やしたくない。

ただ、塩田千春展は本当に感動したので、どうしても何か手元に置いておきたくなり、リトグラフと図録を買ったのだった。

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 ※
買ったリトグラフ(↑)
塩田千春の以下の言葉が美術展に貼られていた。
この言葉を味わいながらこのリトグラフを見て、手元に置いて何度も味わいたくなったのだった。8万円。タイトルは「Connect to the Universe」。

人間の命は寿命を終えたら、この宇宙に溶け込んでいくのかもしれない。
もしかしたら死は無と化すことではなく、何かに溶け込んでいく現象に過ぎないのかもしれない。
生から死へ、消滅するのではなく、より広大なものへと溶け込んで行く。
そう考えれば、私はもうこれ以上死に対して恐れを持つ必要がない。
死ぬことも生きることも同じ次元のことなのだ。




で、図録。
買って良かったな、と思う。

もちろん内容もよく、改めて塩田千春の世界にゆっくり浸れた。
アンドレア・ヤーンとの対話などの企画物も素晴らしく、とても読み甲斐のあるものだった。

それと同時に、「気に入った美術展の図録ってやっぱり買った方がいい」と思うことがあった。

武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』という本を読んだのだ。

その本の中で、著者の秋元雄史氏(東京芸術大学大学美術館長・教授および練馬区立美術館館長)は、「図録は普通の画集より3倍の価値がある」として、図録を買うことを勧めている。

以下、引用。

近年のミュージアムショップは絵葉書をはじめ、手ぬぐいやお酒など、多種多様なアイテムが並んでいて、非常に魅力的です。ただ、レジに並ぶのが億劫な人は、混雑時には素通りしてしまうことも多いと思います。ですが、どうしても手に取ってもらいたいものがあります。それは、どの展覧会でも用意している「図録」です。定価はおよそ3000〜5000円と一般的な美術系の書籍より値が張るものが多いのは確かです。しかし、その内容は、研究者や専門家が本気で作っているもので、定価はほとんど採算度外視に近いものがあります。この図録を手元に置いておき、眺めるだけでもよし、読むことができなかった解説を読むもよし、さらに読み込んで、新たな発見を得るのもよし・・・と、持っておいて決して損はしないものです。つまり、図録を買うという行為は、知識を深めるきっかけを買うようなもの。何を土産に買うか迷ったときは、ぜひ図録を買うことをお勧めします。


まぁ、著者自身が美術館長なので、「図録が売れ残らないように」という事情もあるとは思う。

ただ「採算度外視」なのはよくわかる。
研究者や専門家はここではさすがに手を抜けないし、それどころかプロたち相手に腕の見せどころですらある。
物理的にも、市販しないこともあって採算のための妥協もおこらない。

しかも、図録の場合、書籍ではなく「展覧会の記録カタログ」なので、展覧会出品作の著作権料がかからない。つまり書籍の作品集などに比べて破格になる、ということだ。

※ 逆に言うと、よく図録を見ていて「ここまで内容が充実しているなら、いっそ出品作以外の写真なども載せてもっと総合的な作品集にしてほしい」とか思うことがあるが、出品作以外だと著作権料がかかってしまう、ということなのだな。


まぁいろんな意味で、チカラが入った制作のわりに、安価なのである。

実際、塩田千春展の図録は330ページの大部で、印刷の質もよく、内容もとても充実している。
これで3000円は、超オトクだ。
物理的には高いんだけど、でも実際に手に取るとそのお得感がわかる。

ボクがいま所有している図録は(ずいぶん捨ててしまった気がするが)、現代アートのものとか伊藤若冲とかマティスとか、どうしても手元に置いておきたかったものばかりなのだけど、それらの満足感も考えると、やっぱりこれからはなるべく買おうかな、と思っている。

断捨離するときも、アート好きに贈ったらきっと喜ばれるしね。

ということで、気に入った美術展においては、これからなるべく図録を買おうと思っている、というお話でした。


それはそれとして、塩田千春、見逃さない方がいいですよ!
2019年10月27日まで!



なお、図録とともに美術展を振り返るシリーズは、以下のマガジンにまとめていきます。随時更新です。




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古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。

ありがとうございます!じっくりじんわり書いていきます。
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コミュニケーション・ディレクターです。 さとなお名義で食やエッセイの本、佐藤尚之名義で広告関係の本を書いています。最新刊は『ファンベース』(ちくま新書)。 1995年から個人サイト「さとなお.com」を運営しています。

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