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【小説】 とあるゲイの恋物語【第1話】

30歳を迎え「恋」とはなんなのか。
その答えを求めて、とある夜の街へ足を踏み入れた。


ここは、会社員が仕事を終え、1日の疲れを癒しに通う飲屋街。
薄暗いビルの2階。

とあるお店のドアの前で、唾を一度飲み込み
重い扉を開けた。

ー 出会い ー

「こ、こんばんは。初めて来たのですが…」

「あら、いらっしゃい。はじめて?こちらの席にどーぞっ。」

ちらっと店内を見ると、誰かと目が合った。

軽く会釈をして、案内された席に座る。

そこには、先に座っていた2人組のお客さん。


席に座って、間も無く。
奥の席からガタイのいい男に話しかけられた。

「はじめまして。こちらのお店は初めてなんですか?」


急なことに少し戸惑い。

「は、はじめまして。飲み屋さんに来るのが始めてでして…」
「以前から気になってはいたのですが、なかなか勇気が出なくて。」


ガタイのいい男は、少し驚ていた。

「ってことは、今日が初めてなんですか!?」
「もしよかったら、お祝いに一緒に飲みましょうよ!」


「…はい!」

緊張しながらも3人で席を寄せ合った。

「かんぱ~い。」

なれない手つきで、グラスを交わす。

「名前はなんていうの?」
ガタイのいい男が質問して来た。


「としやって言います。お2人は、なんとお呼びしたら良いですか?」

ガタイのいい男が
「俺はだいき、こいつはこうすけ。改めてよろしく。」

「っす。」
と大男は寡黙な人なのか
横の席で軽く会釈をされた。

「よろしくお願いします。」
としやも、会釈をした。


「としや君は何歳?お仕事は?どんな人がタイプなの?」

早口で質問を続けるだいきに圧倒されていると、
見かねた隣の大男が口を開いた。

「おい、だいき。そんなに聞いたら、としやくんが話せないだろ?」

そう言って、
としやの肩に「ぽんっ」大きな手を置いた。

「ごめんね、としや君。大丈夫?」
っと顔を覗き込むこうすけ。


「ドキッ」

一瞬息が止まり、言葉を詰まらせた。

「だ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
っと、としやはぎこちない笑顔をこうすけに見せた。


…時計が夜の10時を超えた頃

「今日は楽しかった。としやくん、ありがとう。」
「としやくん、付き合ってもらってありがとう。とても楽しかったよ。」

だいきとこうすけが嬉しそうにお礼をした。

「こちらこそ。とても楽しかったです。」

としやも嬉しそうに返事をした。


楽しい時間を過ごした後、3人でお店を出た。

「じゃあ、またね。」と手を振る2人に

「また。」
と会釈をして、1人帰る道。

今日の初めての感覚に戸惑いながら。

「カップルっていいなぁ。」

としや少し寂しげな表情で、立ち止まり、空を見上げた。


頭には、こうすけの顔が浮かび
『また来よう。』と心に誓った。

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