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Day267:「未来を実装する」ーテクノロジーで社会を変革する4つの原則

「未来を実装する」

著者:馬場隆明 出版社:英治出版


【本について】

この本のキーワードは、「協働」

「日本に足りないのは、テクノロジーのイノベーションではなく、社会の変え方のイノベーション」

社会の仕組みを変えなければ、新しい技術が社会に需要されることはない。

テクノロジーの社会実装を考えるとき、私たちはテクノロジーの「社会への実装」という観点から、「社会との実装」という認識に変えなければならない。

実装する主体となる人たちだけの営為ではなく、社会との対話や共同作業を通して、はじめて実現できる。テクノロジーの社会実装は、社会との営みである。

【WHO】誰のための本か

デジタル技術を活用して大きな課題を解決しようとする起業家、企業の新規事業担当者、協働する行政関係者やソーシャルセクター、若手の事業家より中堅層以上、野望を持つ人たち

【WHAT】「社会実装」とは

新しい技術を社会に普及させることではなく、「社会の変え方」のイノベーション。

テクノロジーの社会実装のためには、テクノロジーそのもののイノベーションだけではなく、組織や法制度、慣習といった社会的な仕組みにもイノベーションが必要。

例えば、ルンバ(お掃除ロボット)を家の中でうまく稼働させるためには、まず床に散らばるものを片付けて、ロボット掃除機が通りやすいようにしておく必要がある。

【WHY】なぜ、「社会実装」が必要か

新しいテクノロジーが開発されても、それを受け取る社会の方も変えていかなければ、新しいテクノロジーが生きることはない。

人類の手によって生まれたテクノロジーを最大限活かすには、テクノロジーをうまく受け入れて活用できる社会が必要で、そのためには社会を理解し、社会を変えていく必要がある。

2020年代は、デジタル技術がより社会へと浸透していく年代になっていく。10年から20年かけて、デジタル技術はより広がって、更なる価値が生まれていく。

すると、デジタル技術によって引き起こされる変化と既存の規制、社会規範との調和が必要になってくる。

デジタル技術と国際政治との関係が深まると、多くの事業者がより積極的に国内・国際政治や国家のガバナンスの問題に関わらざるを得ない状況が増えてくる。金融業界のP2Pレンディング、自動車業界のMaaSなど、業界構造も大きく変化する。産業の構造が変わると、同時に変わらざるを得なくなるのが「法律」

つまり、これからの社会実装には、社会全体を巻き込む力が必要になる。(事業を政治との近接)

公益に利する事業に取り組むスタートアップが増えていく。

今までの短期決戦型、破壊型のモデルではうまくいかない。

【WHAT IF】社会実装の事例

■普及した例ーAirbnb

より良い未来を作ることを目的として、社会の仕組みに目を向け、人々とともにプロジェクトを進めていた。テクノロジーを社会に実装しようとしていたというより、テクノロジーが生み出す新しい社会、つまり「未来を実装」しようと努めていた。

行政、管理組合などのステークホルダーとユーザーとの調和的な取り組みに積極的だった。

そして、創りたい未来が明確だった。「Belong Anywhere」(どこにでも居場所がある)

■普及しなかった例ーUberTaxi

規制(白タク制)の問題で、日本では普及しなかった。また、Uberの戦略と日本の風土が合わなかった。

規制、日本のビジネス文化、業界団体、規制当局との調整の薄さ、さまざまな原因があり、広まらなかったが、本当の理由は、“そもそも市場に大きなニーズがなかった”からということが、後の調査でわかった。

【HOW】テクノロジーで社会実装を成功させるための4つの原則

1、最終的なインパクトと、そこに至る道順を示している
2、想定されるリスクに対処している(不確実性を飼い慣らす)
3、規制などのガバナンスを適切に変えている(秩序をつくる)
4、関係者のセンスメイキングを行なっている(納得感を醸成する)

*センスメイキング(納得感、腹落ち)

デマンドがある前提で、長期的な目的や理想であるインパクトについて考え、それを達成するための適切なガバナンスの方法を示しながら、そのインパクトとガバナンスのあり方を関係者にセンスメイキング(腹落ち)してもらう。

■インパクト:理想と道筋を示す

テクノロジーの社会実装において、最も大事なこと「インパクト」(未来の理想)

インパクトを描き、道筋とともに提示する。理想を定めることで、理想と現状との差が課題や問い「なぜ今はそうなっていないのだろう」「どうやればそこにたどり着けるのだろう」といった問いなどが見えてくる。

インパクトを描く力は新たな問いを生み出す力であり、良い問いを生み出す力は論理的思考やデザイン思考などに加えて、これからのビジネスパーソンに必要とされる能力になる。

インパクト(理想)を設定し、理想と現状のギャップによって新たなイシュー(課題、問い)を生み出し、インパクトを提示することで人々を巻き込みながら、そのイシューを解決していくインパクト思考が求められる。

ーインパクトが重要な理由①

インパクトを設定することが変化のために必要な要素だから。

*変革のモデル:「不満」「ビジョン」「最初の一歩」が「変化への抵抗」を超えなければならない。

ーインパクトが重要な理由②

長期的な成果に目を向けることで、短期的な費用便益(コストベネフィット)のバランスの合わなさを補填できるから。

ーインパクトが重要な理由③

目指すべきインパクトがあることで、関係者に目的を説明できるようになる。

ーインパクトが重要な理由④

インパクトを示すことでデマンドを醸成できる。

■インパクトの見つけ方

良いインパクトはひらめきのように訪れるのではなく、徐々に形作られていく。

良いインパクトを見つけるには、何か興味のあることや小さな社会貢献を始めてみることが1番の近道。

*良いインパクトを設定している企業のトップたちは、数多くのインプットをしていた傾向がある。「読書」「自分の経験」「多様な人間関係」から。

【響いたメッセージ】

テクノロジーの実装で特に重要なのは、理想とするインパクトやガバナンスという全体像について考えつつも、結局は目の前にいる「〇〇さん」という顔の見える一人の欲望や行動を少しだけ変える活動であり、それと同時に、私たち一人一人が変わるための活動だと認識すること。

スマートフォンの使い方がわからずに困っている人に少しだけ優しく使い方を教えてあげることや、そのやりとりを通して相手のことを知ること…

誰かのために何かを作ってあげたりすること。これも1つのテクノロジーの社会実装で、私たちができる「未来を実装する」こと。

【アクション】

自分の仕事に関わるテクノロジーは何か、これから先はどうか?

誰を巻き込む必要があるか?巻き込むためにどんなイベントを開催する必要があるか?

自分の仕事に、他にどんな「デマンド」があるか、私の「インパクト」は今のままで十分か、もっと大きなインパクトをつくれないかという2つについても考える。


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