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職員室のアイドル

我が職員室にアイドルがやって来た。それは生後5ヶ月の赤ちゃん。

中国人の同僚が今年の2月に出産した。

1月から、ご主人の母親と姉が中国から手伝いに来ていたが、コロナ騒動で帰国できなくなり、最近まで一つ屋根の下で暮らしていたそうだ。

先日ようやく中国に帰れて、面倒を見る人がいなくなったという事で、現在彼女は赤ちゃんと一緒に通勤している。

というのも、タイは育休がなく、産前産後休暇は90日。預ける場所がなければ、連れてくるよりほかない。職員室の1番後ろの先生の机を移動し、プレイマットとマットレスを敷いて、赤ちゃんが寝られるスペースを作った。

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毎朝赤ちゃんが入ってくると、奪い合うように抱っこをする。そして、誰に最初に微笑んでくれるかを競うように、名前を呼んだり、手を振ったり、口で「クックック」と音を鳴らしたりしている。

職員室には常に誰かがいるので、彼女が授業の時は手が空いている先生が交代であやしている。めったに泣かない赤ちゃんで、今のところ誰が抱っこしても機嫌よくしている。

男の先生もみんなとても協力的で、昨日はミルクを作ってあげていた。私の前に座っているフィリピン人の先生も職員室に戻ってくるたびに抱っこして癒しをチャージしている。

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母親である中国人の先生は中国語で、タイ人の先生はタイ語で、フィリピン人の英語の先生は英語で、私は日本語で話しかける。贅沢な4カ国語のシャワー。将来はマルチリンガルだね!とみんなで言い合っている。

赤ちゃんが寝ると、職員室は静まり返る。初めの3日は電気すら消していたが、さすがにそれじゃ仕事に支障をきたすので、明かりを遮るように日傘を立てかけることで落ち着いた。

それにしても、こういうことが当たり前に許されているってすごいなと思う。数年前には事務室にも赤ちゃんがいたので、彼女が特別という訳ではない。誰も嫌な顔一つせず、むしろウェルカムな感じ。他の階の先生や職員が赤ちゃんを見に来ることもしばしば。

育休がなく、90日しか休みがない理由はこういう所にあるのかもしれない。手伝ってくれる人がいないと成り立たない制度であり、タイでは子育ては母親だけが育休をとってするものではないという認識があるのではないだろうか。

職場に赤ちゃんがいれば、こうして周りが勝手に(喜んで)面倒を見てくれるし、小学生まではどんなに体が大きくても、バスで席を譲ってもらえる。「ワンオペ育児」なんて言葉がある国出身の私にとって、タイという国は社会全体が子どもを歓迎しているように見える。

赤ちゃんはもう寝返りができ、今にもズリバイしようとしている。赤ちゃんの成長を、職員室のみんなで見守っていく所存である。

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