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【対談】人生を狂わす実写化映画の地図 2010-2020「2012年を語る」③

前回

『倉木』

 個人的には、賭ケグルイの前に、の実写で映画を漫画的に~っての成功を感じたね。

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 実写に向いている漫画っていうのは、間違いなくあるから、そういうのは落としどころを見つけやすくて成功しやすいのかもね。

 感覚的な意見になるんやけど。少女漫画原作の恋愛映画は落としどころを見つけやすくて、ラブコメ(たとえば、かぐや様)は落としどころをみつけにくい気がする。

 実際、かぐや様はアマプラで見てて、AV見るより恥ずかしいものをみてる感があった。

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 そして、実写向きで万人にすすめやすいジャンルという、アドバンテージがあったのは宇宙兄弟やと思うんよね。
 ある意味では、それなりの良作が約束されていた実写なわけで、重要な作品として推したい。

 ただ同時に、るろうに剣心は王道少年漫画という実写に不向きなジャンルを成功に導いたという点では、評価が高くなるのは当然。
 るろうに剣心の続編以外に、王道少年漫画の実写化の成功が続いていれば、文句なしに推せるのだが。

 るろうに剣心と読者層が近いという作品を考えると、暗殺教室鋼の錬金術師とか頭に浮かんだけど、浮かばないほうが良かったと思えてきた。

 るろうに剣心の漫画と実写の落としどころでアクションもやるぜってんで面白いのは、寄生獣があるっちゃあるんやけどね。

 るろうに、を打ちすぎて、るろうに、が僕の中でゲシュタルト崩壊を起こした。

 誤字ってないのに、るろうに、とくに、るろう、ってなに? ってなってらぁw るろうに、るろうに、るろうに。

『郷倉』

 咲-Saki-に関しては英勉監督の作品ではないので、どのような共通項があるのか僕には測れませんが、ギャンブル映画ではあるかと思いますので、倉木さんの話を楽しみにしています。

 また、少女漫画の実写化には落としどころは見つけやすく、ラブコメには落としどころが見つけにくい問題は確かにあると思います。

 その原因の一つとして「ラブコメ」はコメディであることが挙げられます。

 日本の映画ってシリアスな人情ものが主流になりすぎて、コメディの文化が根付いていない気がするんですよね。

 脚本的に三谷幸喜とか宮藤官九郎とか優れたコメディを書く人はいるのに、映画にした途端まったくウケない。
 それが何故か詳細には分かりませんが、そういう土壌がある為、ラブコメ作品って成功しにくい気がするんですよ。

 ただ、福田雄一監督の台頭もあって、今はコメディもいけるって空気があって、それ故にかぐや様とかが撮られたんだと思うんですよね。
 医者役とかで佐藤二朗を出しちゃう辺り、福田雄一の後追い感を強く感じました。

 英勉監督も見方によっては、福田雄一を踏まえたような部分もあるんですが、単なる後追いになっていない感じもして、その辺が僕の評価ポイントなんですけど、2012年にそんな話をし始めると、後々言うことがなくなってくるので、割愛します。

 るろうに剣心の後に続く王道少年漫画が無かった、という話ですが、おっしゃる通りだなと思う部分もあって、だから「るろうに剣心」って特別で、ある種、唯一無二な作品だから、評価すべきでは? というのが僕の立場ではあります。

 だいたい、ジャンプ漫画の主人公で30歳を超えているし、テレビアニメ版の後にOVAとして「追憶編」と銘打ってリアルな作画で原作を超えるクオリティで剣心の過去が描かれるって、後にも先にもありませんよ。
 原作から、るろうに剣心は特別だったんですよね。

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 そういう点で、実写に不向きで、正当な後継作品としては「キングダム」とかになるんじゃないですかね?
 山﨑賢人も佐藤健に匹敵する、稀有な俳優に思えますし。

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 さて、などと書いていくと、大奥には触れられそうにないので、このまま4週目にいきましょうか。
 良いですかね?

 その中で、大奥に触れられそうだったら触れますが、僕としては宇宙兄弟とヒミズを見たので、その話をしたい所存です。

『倉木』

 四週目いきますか。
 個人的にGANTZには、るろうに剣心の代わりになれるポテンシャルはあったのにと、僕は悲しくてなりませぬ。
 GANTZの失敗? は、漫画原作映画の歴史を遅らせたのかもしれぬ。

『郷倉』

 さて、2012年のまとめに入りたいと思います。
 今回触れた映画なのですが、

ヒミズ
宇宙兄弟
荒川アンダーザブリッジ
闇金ウシジマくん
るろうに剣心

 って感じですかね。
 さて、そんな2012年ですが、2021年5月の終わりから振り返るなら、絶対に触れておくべき作品がありました。
大奥 ~永遠~ [右衛門佐・綱吉篇]」です。

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 というのも、「逃げるは恥だが役に立つ」の主演の二人、星野源新垣結衣が結婚されて、「逃げ恥婚」だとネットの世界では大盛り上がりでした。
 いやぁ、本当にめでたい。

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 けど、それで言うなら2012年には「大奥 ~永遠~ [右衛門佐・綱吉篇]」の共演をきっかけに菅野美穂堺雅人が、結婚をしているんですよ。
 まさに大奥婚ですよ! しかも、副題は「永遠」です。
 なんと縁起が良いんでしょうか。

 更に、「大奥 ~永遠~ [右衛門佐・綱吉篇]」は政治的に子供を産む道具として扱われてきた菅野美穂と、親に売られて知らない女性と寝ることを強要され続けた堺雅人が、出産に囚われない年齢まで達してようやく、愛の行為としての性を手に入れる物語なんですよね。

 いわば、そこでようやく菅野美穂と堺雅人は政治的な立場をなしに、対等になることができるんです。

 この構造は「逃げるは恥だが役に立つ」にも共通したものがあります。とくに注目したいのは着地点が男女の関係が対等になる部分です。

 男女の関係の着地点が対等となる作品に共演した二組の男女がそのまま、夫婦となった。
 あくまで偶然だと言うことはできますが、色んなものに意味を付随させて考えちゃう、わたくしとしては作品の力があったのではないか、と疑っております。

 そんなことを考えていた翌日に「ベルセルク」の作者、三浦建太郎が亡くなられた、というニュースがあったので、本当ここ数日は混乱の最中にいます。

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 さてさて、勝手に恒例としつつある○×な小説を書きたい人へ勧めたい映画のテーマを決めたいと思います。

 今回は「見終わった後に、思わずその後の物語を想像したくなる」映画というのは、どうでしょうか?

「ベルセルク」が未完の名作となってしまい、「大奥 ~永遠~ [右衛門佐・綱吉篇]」や「逃げるは恥だが役に立つ」は主演の二人が、物語が終わった後に結婚という形で、その後の人生を歩んでいます。

 どんなものにも終わりは訪れますが、終わった先から始めることも可能です。また、物語の終わりの続きを考えることは、小説や物語を考える上で極めて重要なことだと僕は思っています。

 倉木さんが、思わずこの後を考えてしまう映画ってありますでしょうか?

『倉木』

 前回、前々回と比べて、よりいっそうセンスが問われる質問やね。

 続編の予定がある作品をススメるのは違うと思うから、ガーディアンズオールドガードはあげる必要ないし。

 そもそもハッピーエンドの続編って、それまでのファンの誰かにとっては見たくなかった不幸が内包されてると思ってるからなぁ。
 トイ・ストーリーとか、お前らが続編求めて、見たかったやつと違うみたいな空気出すなや。

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 だから、登場人物が再び不幸になるという覚悟を持った上で、その後の物語を考えたい作品。

 ちなみに、バッドエンドで終わった映画なら、ここから幸せになるってわかりやすいストーリーラインの想像になるから、今回はハッピーエンドで終わった物語から考えたいです。

 子供のときから、続きないの? と不満を持ってた映画は、バックトゥザフューチャーなんやけどね。

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 ああいう、特異なものを手にして、最後に手ばなすというのは、オチものの典型的な形やけど。
 なくなったあとの物語やと、続きを想像するというか、別ストーリーになる感じやし。

 そもそも、今回のオススメ映画のコーナーやけど、見終わったあと、その後の物語を想像したくなる。ってのは、把握した。
 でも、どういう小説を書きたい層に向けての映画なのかが決まってないやん。
 だから、パッと思い付かんのかもしれん。

 異世界転生もの、青春もの。なにを書きたい人向けなんやろう?


『郷倉』

 なにを書きたい人向け、という部分で言うと、僕の書いたものだと分かりにくい部分があったので、少し話の方向性を変えさせていただきますね。

 映画って二時間とか三時間とかっていう明確な終わりが設定されているんですよね。また、ドラマでも話数は基本的に決まっています。

 ただ、小説のとくにWEB小説って書こうと思えば、いつまでも永遠と書けてしまうんですよね。
 なので、WEB小説を書いていて終わり方を見失った人に見て欲しい映画というので、どうでしょうか?

『倉木』

 明確な終わりを想定して書き始めても、道中で書きたいことが増えて、話が長くなってしまうことは、よくあります。
 WEB小説を書いていて、終わり方を見失った人っていうのは、そいうのじゃない気がする。本当に、終わらせ方がわからない人もいるのではないかな。
 これは、漫画などの長期連載が増えた弊害かもしれない。最後まで追いかけて見届けた作品の経験値が少ないのではないかな。

 さて、そんな方々にも、参考になるであろうおすすめ映画です。

 まずは、タイトルを。
・バタフライエフェクト
・ミスト
・ハングオーバー
・ジョーカー

 ハングオーバーとジョーカーは、同じ監督作品です。
 同じ結論からオススメするんやけど、コメディとシリアスでジャンルが違うので、好きなジャンルをみて欲しいといいことで、二個になってます。

 いつも、長尺になってるコーナーなので、今回はさくっと終わらせたい。具体的には、仕事の休憩中に終わる文量を目指す。

 ちなみに、バタフライ・エフェクト(バタフライ効果)とは、ほんの些細な事がさまざまな要因を引き起こした後、非常に大きな事象の引き金に繋がることがあるという考え方のこと。カオス理論の一つである。これを題材にしたのが、本作。

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 以下、ウィキペディアのあらすじ。

 時折、短時間の記憶を喪失することがあった少年エヴァンは、医師の勧めで治療の一環として日記を書き始める。大学生になり、記憶喪失の症状が丸7年起こらなかったことに喜び、日記を読み返すと、その日記に書かれている過去の時点に戻れる能力がある事に気づく。自分のせいで幼馴染のケイリーの人生を狂わせてしまった事を知ったエヴァンは、過去に戻り運命を変える事を決意する。しかし、過去に戻り、選択肢を変えることによって変化した現在では、必ずエヴァン本人もしくは彼が救おうとした誰かが不幸になっていた。

 いわゆるタイムリープもの。シュタゲ僕だけがいない街と同じジャンルですが、これは、そのお手本です。
 と同時に、構造上は、続けようと思えば、ずっと続けられるものとなっている。それこそ、ドラえもんクレヨンしんちゃんなどの、一話完結で永遠に続くものに、タイムリープを題材にすることで、一つのリアリティーをもたせた。

 理想の未来になるまで、永遠に続けさせる。本作には、映画の上映時間の関係もあって、タイムリープの回数制限があったけど、もしそれを取っ払ったら、一生続けられる。
 起承転結の承を無限に作れる。これこそが、WEB小説の終わりを見失った状態なんじゃないかと思って。

 だから、要は転と結さえ用意すれば、どのタイミングでも終わらせられる。
 クオリティーを維持して引き延ばすのは茨道です。それを承知で終わり方を見失ってWEB小説を続けるのならば、せめて転と結は用意しておこう。という点を頭にいれて、バタフライ・エフェクトを視聴したら得るものがあるのじゃないかな。

 そういえば、こち亀に関する都市伝説で、作者が急死した際に、最終話が保管されていたというものがありました。その緊急最終話にあたる回は、定期的に更新されていき、更新された最終話予定だった回は、ときたまこち亀であるシリアス回が、それにあたるとか。あくまで、都市伝説なので、本気で信じないでね。

 そういえば、ハリーポッターシリーズも、ラストあたりの原稿は、早い段階で用意されて、保管されてたとかきいたことがある。

 あと、個人的には、この結末に向かっているってのは、執筆のモチベーションになるから、とにもかくにも転と結は考えて執筆したいよね。

 予告した順番と前後しますが、ハングオーバーとジョーカーです。

 どちらとも、トッド・フィリップス監督作品。

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 ハングオーバーは、結婚式前夜に男友達で羽目を外して、二日酔いで目覚めたら大変なことになっている。

 ジョーカーは、アメコミヒーロー・ダークナイトバットマン)の永遠のライバルにして、悪のカリスマのジョーカーが、いかにして誕生したのかが描かれる。

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 どちらの物語も、とんでもないことに至るのやけど、その導入は、あり得なくない展開。いわば現実的なんよね。だから、現実からスタートしても、徐々に変化することで、大きな変化が待っている。
 前述したバタフライ効果にも通じる展開なので、バタフライ効果やカオス理論といった難しい言葉をわかりやすくあらわした作品ともいえそう。

 そもそも、日本人ならバタフライ効果という言葉より、ことわざの「風が吹けば桶屋がもうかる」のほうが馴染みあるやろう。小さなものも巡り巡って大きなものになるという意味合いだと、昔話のわらしべ長者だといわれれば理解しやすいのかも。

 けどまぁ、風が吹けば桶屋がもうかる。より、蝶が舞えば、地球の裏側で竜巻が起きる。のほうが、格好いいとは思う。

 さて、トッド・フィリップス監督のハングオーバーとジョーカーに共通しているのは、あらすじを詳しくかけばネタバレに直結するということかな。

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 導入と結論がかけ離れていても、途中の展開が団子のように一本の串に繋がっているので、物語が破綻しない。
 売れないコメディアンが悪のカリスマになった。人を笑わせる道を選んでいた人が、いかにして悪のカリスマという遠い位置に至るのか。

 結局、導入から大きな変化があれば、いわゆる一つのおとしどころとなる。その大きな変化に至る過程を、コメディかシリアスか好きなジャンルで学べるんじゃないかな。

 さてさて、コメディやシリアスとか、作品のジャンルに触れて思ったのは、終わらせ方がわかんなkなったら、自らの作品のジャンルを問うべきなのかもしれない。

 ミステリーなら、事件解決、完。
 恋愛ものなら、男女がひっつく、あるいは別れる、完。
 スポーツものなら、決着がつく、完。
 などなど。ジャンルに終わらせ方のヒントは隠されている。

 そして、ジャンルを自問しても、終わらせ方が見えないならば、最終手段が描かれているミストを視聴しましょう。

 ミストは、その結末から賛否両論の映画です。
 ただ、結末ばかりが議論されるけれど、そもそも、あの衝撃的な展開であっても、名作といえるのは、それまでの作中での積み重ねがあってこそなのだと、観終わったあとも忘れないでほしい。

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 ちなみに、ミストのあらすじは以下の通り。

 深い霧に包まれた街で巻き起こる怪異と徐々に秩序を失う人々が描かれる。

 多くの展開を語っても、最後のシーンにもっていかれるので、深く語るのを諦めました。
 結局、続きの展開が存在しないようなシナリオを用意すれば、どんな作品でも終わらせられるのではないかな。

 ミストはキャッチコピーの「ラスト15分の衝撃的展開」のとおり、後味の悪さを追及した名作です。これを小説でするならば、まともな編集がいれば止める展開でしょう。

 Web小説は、まともな編集がいないことで、叩きどころがいっぱいで、読んでいてリアリティーがなくて恥ずかしくなる展開も多いです。
 文章以前の問題なのに、それでも読まれれば正義なのかアニメ化したものも多いです。

 編集がいたら、いやもっと言えば、ちゃんと意見をくれる仲間のような読者さえいれば、もっと面白くなったのに、修正されることなく産み出された数々web小説たち。
 どうせ修正の指示が入らないのであれば、僕ならミストをこえるような結末を目指して執筆したいという気持ちがあります。

 そんな気概を持ってる方にこそ、ミストはみてもらいたいかな。

 とりま、以上です。

つづく


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