見出し画像

認知症、母との電話バトル

「電話した〜?」

「帰ったら電話してよ!いつかけてもおらんね。」

夜中の1から2時の間に母からかかってくる恒例の電話である。毎夜10分おき、いや気分的には5分おきに電話がかかる。
今や認知症のご家族がいる方は沢山いらっしゃるだろう。病気なのだから仕方がない。

次に鳴ったら取らないと、これが1時間続くのは避けたい。禅の気持ちで電話をとる。

「今、夜中だからね。明日ね。」


「あら、夜中かぁ、ごめんごめん。それでね」
時差のことは頭に無く、話したい母は喋り続ける。


「みんなが起きてしまうから、切るよ!」

ガチャン。

怒るまいと思うのに強く言ってしまう。そんな時はしばらく後悔で眠れない。時間だけが過ぎていく。ようやく眠れそうだな...、と思ったら枕元のiPhoneが朝の5時を告げる。

タラララ〜ン🎶


うちの愛犬ココもしょぼしょぼした目でこちらを見ながら、寝転んだままストレッチ。


「ココは寝ていていいからね。」と頭を撫でて
超スピードで家族の朝食を作り、支度をして5:40amには仕事へ向かう。

怒ってしまった後悔の気持ちを引きづりながら、通勤の車の中で母に電話をする。

母「あら〜、さっちゃん」

私「昨夜は何だったの?何かあった?」

母「何のこと?」
私「夜中に電話して来たでしょ」
母「かけてないけど?」
私「.......。」

私が怒ったことも忘れてくれているのか、ワザと忘れたふりなのか、どちらにしても良かった。
何も無かった様に、職場に着くまで他愛のない話しをする。
「もう着いたから切るよ。」
と言うと
最後に必ず
「電話してくれてありがとう。長くなくていいから回数かけてね!」

「了解!またかけるね。」

画像2

そして夕方
ココの散歩をしながら電話する。
そうするとまるで何日も話していない様に母は毎回喜ぶ。
「今朝も話したのに。」
と言うと
「そうなん?記憶に残る様な会話なら覚えていると思うんだけど。」

その言葉にモヤモヤしながら、また気持ちを禅に戻して

「そう言えば、ミヤネ屋見た?」

母「何?ピラニア?」

母は真剣なのだ。

「ワクチンの事、ニュースでやってない?」

母「何?ダスキン?」

「いや、ワクチンよ」

母「あ〜、ナプキン!」

2人で爆笑!!

もうワクチンの事なんてどうでも良くなる。笑えるっていい。

画像3


「散歩が終わったから切るよ、またすぐかけるから。でも、もう夜だから明日ね。こちらからかけるから、絶対にそっちからはかけないでよ。」

母「分かった、分かった。かけるなって言われるならかけないから。待ってる。」

画像4


そして、午前1時
プルルル、プルルル....


母「電話した〜?」


.......... 。



いつまで続くんだコレ….


画像1


ピースじゃないって!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?