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「ない」を楽しむ温泉

20数年前から憧れていた温泉宿についに行ってきました。(今月は色々な憧れを叶える月間となっております)

部屋には電気もない、コンセントもない、テレビもない、あるのはランプの明かりだけ。場所は青森県黒石市の山の奥(ざっくり言えば十和田湖の西、岩木山の東)にある青荷温泉です。

訳あって実家(三八地方)、お墓参りを経由し、十和田湖を通ってヘアピンカーブを何度も何度も曲がり、山越え谷越えハードなドライブを経て辿り着いた時、眠気と疲労で倒れそうでした。

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↑駐車場に着いたら山ぶどうが!何十年ぶりかで見た。

宿の建物に入ると、廊下には既にランプが灯っていました。フロントもランプの明かりでスタッフの方が薄暗い明かりの中で見えます。ランプのオイルの匂いがします。

スタッフの方は津軽弁で、私は南部弁で会話します。(宿泊施設で南部弁を話したのは久しぶり)「なんでも自分でやっていただくスタイルです」と説明を受けました。

ランプの明かりが灯る廊下を通り、お部屋に案内されました。お部屋にある明かりは天井に一つぶら下がったランプのみ。窓の外には葉の色づき始めた木々が見えます。まだ15時でも結構な暗さです。しかしオレンジ色の明かりは落ち着きます。

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↑スマホ画像では明るく見えますが、実際はもっと暗い感じ。

まずは一服お茶を。スマホの電波はとっくにありません。

お茶で一服した後はさて、お風呂にでも行ってみるか、とお風呂へ。脱衣所もお風呂場も明かりはランプ。なんとも優しい雰囲気です。聞こえるのはお湯の流れる音ばかり。

部屋に戻ると何とも言えないくつろぎ感。けれど暗いので、何もできません。ぼーっとするのに最適です。それでも何かしたくて売店に行ってハガキを買って実家宛てに書くことにしました。宿でハガキを書くのもなんだか久しぶり。深夜に目が覚めて4時半に出発して仙台から運転してきたので、夕食までの時間少し横になることにしました。この時の昼寝が何ともあずましかったこと。

夕方寒くなってきたので、石油ストーブをつけようと思いましたが、なかなかつきません。フロントでスタッフの方に声をかけ、部屋まで来てもらいました。なんとなく縄文系だな、と感じるその男性スタッフの方が親切に対応をしてくださいました。

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18時、夕食会場の大広間へ。入口のふすまにねぶたみたいな絵が描いてあります。大広間もランプが灯り、とても風情がありました。ランプの明かりの中に集う温泉客。何となく、昔ってこんな感じだったのかな?と思いました。(1997年中国湖北省の武漢から荊州市までの途中で見た果物屋を思い出す色合いでもあった)

お料理は山の幸が中心の素朴なお料理。料理長が出てきて素朴な津軽弁のあいさつが始まり、何度も笑いが起きていました。お腹もペコペコで全て美味しくいただくことができました。(ご飯とみそ汁は中央にあってセルフサービスです)

部屋に戻ってまったりしてもまだ19時。でもなんだかもう真夜中みたい。朝日と共に起きだして、夕日と共に休む、そんな暮らしがここにはあるなあ、と思いました。

いつもならスマホをちらちら見て過ごしているけれど、何しろ電波が一切ないので、スマホを見たとしてもアルバムを見る程度。20数年憧れてようやくたどり着けたけれど、スマホ、Wifiが当たり前になったこのご時世、やっぱりタイミングは今だったんだな、と思いました。

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暗いと目から入る情報が少なくり、思考もシンプルに。普段いかに時間に追われてピリピリしていたか、普段がいかに明るかったか、情報量が多かったか、いかに緊張していたか、色々感じる旅でした。私にとっては、お墓参り、実家立ち寄り等含め、忘れられない旅になりました。

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前後の道中も含め、圧倒的な癒しがありました。

1年に1回くらいは行きたいなあ。


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