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PAD London Art+Designでもサステイナブルなデザインが注目に

PAD Londonのようなアートフェアは、ケルナー・クンストマルクト(アート・ケルン)が世界で初めて開催された1967年以来続いています。この60年ほどの間に様々な変化がありました。アートフェアが、ギャラリーとコレクター間の金銭的な取引であることは変わりませんが、アートとは何かという伝統的な分類を和らげる、ますます創造的なプラットフォームになっています。その結果、デザインは絵画に劣るものだという決めつけもほとんど消え去りました。

デザインに対する認識の変化の一端は、これからご紹介するお2人の働きかけが大きいです。
2006年、Löic Le GaillardとJulien Lombrailは、Frieze Londonの誕生から3年後、チェルシーにCarpenters Workshop Galleryを立ち上げました。彼らのウェブサイトには、「私たちはデザインに興味はありません。その代わり、自分たちのエネルギーはデザインがアートになるこの特別で稀な瞬間、つまり新しいムーブメントの始まりに集中しています」というマニュフェストが描かれています。そして、昨年、ル・ガイヤールは『フィナンシャル・タイムズ』紙に「Friezeが始まり、力のある現代アートギャラリーが登場した。私たちは、フランス流のコレクション・デザインの見方を提示できると考えたのです」と語っています。

ル・ガイヤールとロンブライユにとって、1998年にパリでアート&デザイン・パビリオン(通称PAD)を立ち上げたパトリック・ペランと組むことは理にかなっていました。ペランは常に時代の最先端を走ってきました。「美術品の市場で仕事をするのは常に自分のゴールでした」と語るペランは、1890年代にディーラーだった曽祖父を持つパリの4代目アンティーク・ディーラーであることを誇りに思っていたためでしょう。
彼らの手によって2007年、ロンドンで初めて開催されたPAD(当初はDesignArt Londonと呼ばれていた)は、Frieze期間中に開催され、たちまちデザイン界に衝撃を与えました。

2008年、ニューヨーク・タイムズ紙は、Frieze期間中に開催されたサテライト・イベントについて記事を書き、DesignArt Londonを「アート、建築、デザインが一体となったアヴァンギャルドな世界を覗くことのできる見本市」と名づけました。ロンドンの会員制クラブやプライベートバンクのオフィス、高級住宅街などのあるメイフェアのバークレー・スクエアに張られたスタイリッシュなテントで開催されるPAD Londonは、現在、ヨーロッパ、北米、アジアから60以上の国際的なギャラリーを招き、20世紀のデザインだけでなく、アート、写真、コレクタブルなジュエリー、装飾品などを紹介しています。

その成功の要因には、デザイン・ミュージアムやV&Aといった機関が行う実験的な展示と並行して開催していることもありそうです。ペリンの伝統を受け継ぐPADロンドンは、過去を尊重しつつも過去にとらわれることなく、リスクを恐れません。第16回目となる今年もその例に漏れないでしょう。もちろん、同世代で最も影響力のあるデザイナーのひとり、マーク・ニューソンのような有名人も参加します。

PAD ロンドンに加わる新たなギャラリー

PADロンドンには新たに10軒のギャラリーが加わり、その多くがロンドンを拠点としています。

Aquamarine Ellipse by David Patchen

London Glassblowingは、ヨーロッパ有数のガラス・アート・ギャラリーであり、最も長い歴史を持つホットグラス・スタジオのひとつで、1976年にピーター・レイトンによって設立されました。今回、PADロンドン初のガラス専門ギャラリーになるため、ロンドン・グラスブロウイングにとって重要なマイルストーンになることでしょう。ここでは、デビッド・パッチェンの華麗なガラス彫刻、アンソニー・スカラの錯視作品、モネット・ラーセンとニーナ・カッソン・マクガーヴァの自然にインスパイアされた作品が展示される予定です。

ロンドンとミラノを拠点とし、「研究、革新、オリジナリティを第一に考える才能のインキュベーター」を自認するMovimento GalleryもPADデビューを果たします。同じ大理石の塊から各デザイナーが制作したユニークなコレクション「Divergence」でデザイナーの創造性を披露するこのギャラリーは、「PADは機能的なアートの世界への窓の役割を果たし、多様な世界、文化、アイデアをひとつ屋根の下で探求する機会を提供する」と語っています。

ロンドンとミラノを拠点とし、「研究、革新、独創性を第一に考える才能のインキュベーター」を自認するMovimento GalleryもPADデビューを果たします。同じ大理石の塊から各デザイナーが制作したユニークな作品を集めた初回コレクション「Divergence」でデザイナーの創造性を披露します。このギャラリーのオーナーは、「PADは機能的アートの世界への窓の役割を果たし、多様な世界、文化、アイデアをひとつ屋根の下で探求する機会を提供してくれる」と言っています。

Taras Yoom’s Dif lamp


一方、タラス・ユーム(Taras Zheltyshev生まれ)は、独自の宇宙を創造しており(彼のウェブサイトには、「”he was a doctor before he became the captain of spaceship Popato-1 that explores the Yoomota universe”とあります)、PADロンドンでの彼の存在は、どれほどワイルドで奇妙なことをやりたがっているかを示しています。20代のYoomのYoomootaコレクションは、彫刻、絵画、ミクストメディア作品、漫画、絵本、NFTを通して「大きな物語」を語っています。彼は自分の作品を「メタ・アート」と表現し、ダ・ヴィンチからインスピレーションを受けていると語っています。PADロンドンでは、機能よりもフォルムを重視した気まぐれな家具のコレクションが展示される予定。ブルーとグリーンのInflated Assチェア、ベージュのLymphosofa、そして大脳、アレルギー、心膜、偏桃体、性感帯の5つのカテゴリーがラベル付けされた錠剤箱の色鮮やかな彫刻、Magnum opusがあるそう。

Taras Yoom’s Inflated Ass chair

時代を超えたコレクション

PADロンドンでの作品の中には、故意にエキセントリックに感じられるものもあるのですが、それが見どころの一つなのかもしれません。マクシミリアン・マルケザーニは、美食のバックグラウンドを持つイタリア系ドイツ人のアーティストで、ミラノを拠点とする彼のギャラリー、ニルファルによれば、「テクノロジーと有機的な世界との調和の探求に取り憑かれている」とのこと。彼がPADロンドンで発表したシーリングランプ「Vai O Stai」は、土、ブナ材、アルミニウム、ガラス、動物の毛、人間の毛、アクリル、ロジウムメッキされた真鍮でできており、自然対人工のバランスが実に魅力的です。ねじれた枝からLEDライトがぶら下がっているシャンデリアは、高級キャンプ場にも5つ星ホテルにも似合う、特別なシャンデリアです。

受賞歴のあるフランスの彫刻家ダニエル・ダヴィアウは、アルパカのグスタボを出展します。ダヴィアウはブロンズ作品を手がけ、しばしば絶滅危惧種に永遠の命を与えています。彼の印象的な作品は、ニューヨークのアーモリーショーやパリのPADなど、世界中の主要なアートフェアで展示されています。ニルファー・ギャラリーが代表を務めるアレグラ・ヒックスも、美しい赤褐色の色調で作品を制作しています。ヒックスのメタモルフォーゼ・キューブは、かぎ針編みのブロンズで作られたローテーブルで、古代とモダンを同時に表現しています。

PADロンドンの楽しみは、異なる時代のアートをシームレスに融合する力にもあります。そのため、かぎ針編みのブロンズテーブルのような現代作品とともに、フランスのミッドセンチュリー家具も展示されます。ロンドンのポルトゥオンド・ギャラリーでは、フランスの彫刻家でありデザイナーでもあった故モーリス・カルカによる、非常に曲線的で珍しいグラスファイバー製のブーメラン・デスクが展示され、パリのギャラリー・ムーブル・エ・リュミエールでは、フランスのデザイナーであり建築家でもあった故ピエール・グアリシュによる、真鍮とラッカー仕上げのメタルのダブル・カウンターウェイト・フロアランプが展示されます。ミッドセンチュリーの逸品は他にもあり、 オーレ・ヴァンシャーによるAJイヴェルセンのためのTチェア、ロベルト・メンギによるメタルフレームと赤いファブリックのペアアームチェア、ニールス・ヴォーダーのためのフィン・ユールによるNV45のペアアームチェアなども見どころの一つです。

今回、「the Ones-to-Watch section(注目すべきもの)」のセクションにも注目しています。リック・オウエンスはファッションデザイナーでもありますが、アイリーン・グレイ、ブランクーシ、カリフォルニアのスケートパークにインスパイアされたデビューコレクションで、未加工の合板、大理石、ヘラジカの角を使った家具を2005年からデザインし、活動の幅を広げています。カーペンターズ・ワークショップ・ギャラリーが代表を務める彼のPADロンドンでの作品は、トラ合板で作られた角ばったGallic Chair Tigre Plywoodで、その力強いデザインで注目を集めています。

それとは対照的に、館林かおりは日本生まれの陶芸家で、手作業で成形された白いストーンウェアを使い、立体的な花や植物を再現し自然の儚さと美しさを見事に捉えています。オックスフォードシャーの「ジューン・ガーデン」は、春の終わりの花を繊細に再現したものです。

Kaori Tatebayashi (b. 1972) is a Japanese ceramicist, living and working in London for the last 20 years. While studying ceramics in Kyoto and London, Kaori explored what new possibilities clay could have and what this familiar material meant to her own identity. 

PAD Londonでは、持続可能なデザインが大きなテーマの一つに


昨今のPADでは、自然との共生を表現するアート作品や廃棄物を再利用したり、持続可能な素材や再生可能な資源を使った作品も展示されています。メキシコのデザイナー、フェルナンド・ラポスは、その代表的な例です。彼は、メキシコの先住民コミュニティと協力し、天然繊維であるサイザルやメキシコのトウモロコシの葉を使った華やかな寄木細工を制作しています。この取り組みは、単なる美しいデザインだけでなく、地域の伝統的な工芸技術と土壌や生態系を回復させる再生農業の理念を結びつけ、農業とアートが互いに補完し合い、両者の技術が新たな形で発展していっています。

ガレス・ニールによる家具は、工業廃棄物やリサイクルされた木材を使用して作られたもので、彼の作品は、木材の美しさや伝統技術を再解釈し、環境への負荷を最小限に抑えるデザインを提案しています​。

また、Full Grownのようなデザイナーは、木を育てて椅子や彫刻を形作っており、自然との調和を目指した作品が注目されています。これにより、自然の成長プロセスを利用した持続可能な制作方法がアートとして評価されています​。

Full Grown作

PAD Londonは、単なる展示会にとどまらず、デザインを通じてサステイナビリティの重要性を伝える場として機能しており、持続可能な未来のための革新的なアイデアを発信しています​

PADの未来

PAD Londonの洗練されたセッティングは、コレクター、アート・コンサルタント、美術館学芸員、インテリア・スペシャリスト、デザイン関係者、そして一般の人々にインスピレーションを与えるようデザインされており、PADを特別なイベントにしています。
デザイン・ミュージアムやV&Aだけでなく、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートやセントラル・セント・マーチンズ、その他の英国のアートスクールの国際的な地位も手伝って、消費者がより洗練され、コンテンポラリーデザインへの関心が高まるにつれ、PADロンドンはより成功し、一目置かれるようになることでしょう。昨年はプレビューの日に6,000人が来場しましたが、今年も同様か、それ以上と考えられています。PADロンドンに出展されているものは、美しく洗練されたアイテムが大多数ですが、エキサイティングで境界線を押し広げるアートフェアでもあり、ルールに縛られることなく、誰もが楽しめる場所です。アートをこよなく愛する華やかな人たちが多く集っており、素敵な出会いも、再会もあるため、お洒落してお出かけしたくなる場所でもあります。

PAD Londonでは、トークイベントなども開催され、その場にいるだけで知識を深めたり、業界のトレンドについて学んだりすることができます。このフェアは、デザインとアートの境界を探求しておりますので、これからも世界のアートシーンに新たな風を吹き込むことでしょう。

2024年のPAD London は10月8-13日です。
🎫チケットなど詳細は上記をご覧ください。

Modern and contemporary art and design fair PAD London returns to Berkeley Square for its 16th edition from 8 to 13 October 2024.


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