松田さと子

ロンドン在住。ゼロカーボン改革スペシャリスト、BPSチャータードサイコロジスト🇬🇧臨床心理士、(国)キャリアコンサルタント、 COP25〜COP28や、その他世界各地で開催された環境系サミットに出席。✨25ansのWebでも連載経験あり。25ansビューティメダリスト

松田さと子

ロンドン在住。ゼロカーボン改革スペシャリスト、BPSチャータードサイコロジスト🇬🇧臨床心理士、(国)キャリアコンサルタント、 COP25〜COP28や、その他世界各地で開催された環境系サミットに出席。✨25ansのWebでも連載経験あり。25ansビューティメダリスト

最近の記事

カーボンフットプリントとは? 地球環境への影響と先進企業の取り組み

気候変動が急速に進む中、企業がどれだけの温室効果ガス(GHG)を排出しているかを把握することが、環境対策の要となっています。この環境指標を測るものが「カーボンフットプリント(carbon footprint)」です。カーボンフットプリントとは、製品の製造、流通、消費、廃棄など、企業活動のすべてを通じて排出される温室効果ガスの総量を二酸化炭素(CO₂e)換算で表したもので、企業が環境に与える影響の実態を示します。 本記事では、カーボンフットプリントの計算方法と測定基準、そして

    • COP29開催国アゼルバイジャンの課題と期待

      2024年11月11日から、アゼルバイジャンでは国際的な気候会議「COP29」が開催されます。COP(Conference of the Parties)は国連が主催する気候変動対策のための国際会議で、各国が地球温暖化防止に向けた協力を話し合う重要な場です。COP29は特に「気候資金(climate finance)」についての合意を目指しており、アゼルバイジャンは議論を導く立場として重要な役割を担っています。 しかし、アゼルバイジャンはアゼルバイジャンは石油生産量が多く、

      • Kew Gardensのハロウィンとクリスマス のライトアップは幻想的な美しさ

        世界遺産に認定された広大な植物園で、四季折々の自然が楽しめるキューガーデンですが、紅葉の美しい秋もおすすめの季節です。特に日本庭園エリアやキューガーデンのシンボル「メタセコイア並木」は赤やオレンジに染まり、秋らしい風景が広がり、カメラを持って散策したくなるスポットが多数あります。 今回は秋から冬にかけて楽しめるキューガーデンの見どころをご紹介します。 キューガーデンの歴史:王室の庭園から世界遺産へ キューガーデンは1759年に王室宮殿に附属する植物園として開園しました。

        • PAD London Art+Designでもサステイナブルなデザインが注目に

          PAD Londonのようなアートフェアは、ケルナー・クンストマルクト(アート・ケルン)が世界で初めて開催された1967年以来続いています。この60年ほどの間に様々な変化がありました。アートフェアが、ギャラリーとコレクター間の金銭的な取引であることは変わりませんが、アートとは何かという伝統的な分類を和らげる、ますます創造的なプラットフォームになっています。その結果、デザインは絵画に劣るものだという決めつけもほとんど消え去りました。 デザインに対する認識の変化の一端は、これか

          モナコ大公アルベール2世:海洋と気候を守る環境リーダー

          モナコ大公アルベール2世が環境問題に取り組み始めたきっかけは、個人的な経験と彼の高祖父の影響を受けています。彼の高祖父であるアルベール1世は、海洋学や環境保護に熱心で、モナコ海洋博物館を1910年に創設し、海洋生物学や海洋保護に関する研究を支援した方なのです。 モナコ大公アルベール1世の科学探検 アルベール1世は、海洋学の発展にも大きく貢献しました。彼自身が多くの科学探査に参加し、特に地中海や北大西洋での探査が有名です。これらの探査により、海洋の物理的・生物的なデータを集

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          Two years to save the world(世界を救う2年)

          ロンドンのChatham Houseで、今年の春、国連気候変動事務局長のサイモン・スティール氏の「世界を救う2年」'Two years to save the world’と題した講演会を聞きました。少しタイムラグがあるのですが、記録としてここに残しておきます。 気候変動対策に関して、世界は否定から先延ばしへと変わり、科学を否定することで擁護されるのではなく、行動に起こすために「コストがかかりすぎる」あるいは「達成不可能」であると主張されています。しかし、今世紀末までに地球

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          COP29の裏側 アゼルバイジャンの「未来のための気候投資基金」について

          今年の11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29。2年連続で産油国での開催となるため、進捗に懐疑的な人もいるかもしれません。私の知人の中には、少々諦めモードの人もいます。しかし、一方で、産油国であるが故に実現しそうな提案も見えてきています。COP期間中の発表を目指して、準備会合で話し合いが行われている発展途上国への脱炭素投資基金を例に取って、その息遣いをお伝えしてみようと思います。 この発展途上国への脱炭素投資基金は正式には「Climate Investment Fu

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          Frieze London 2024まで1ヶ月余り。サステイナブルな未来へ。進化するアートフェア

          Frieze Londonは、2003年に創設されて以来、コンテンポラリーアート界において世界的に重要な存在として成長を遂げてきました。当初はFrieze Magazineの延長として始まり、リージェント・パークでの小さなイベントだったものが、現在では国際的なギャラリーやアーティスト、コレクターが集う大規模なアートフェアに成長しました。さらに、姉妹イベントのFrieze Mastersも加わり、そこでは美術館で飾られているような著名なアーティストの作品も展示され、その多くは購

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          風力発電施設から発生する低周波音という課題

          将来にわたり持続可能な社会をめざした再生可能エネルギーのビジネスが増えてきており、その一つが風力発電です。 音は、スペクトラム(連続体)を持っており、私たちの耳で感知できる範囲はその中のごく一部に過ぎません。現在、世界のいくつかの国では、音響スペクトラムの中でも特に低周波音、特に超低周波音が健康に与える影響について研究が進められています。これらは耳には聞こえませんが、身体に異常を引き起こす可能性がある音波です。 音響スペクトラム 音響スペクトラムは大まかに「超低周波音」

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          イェール大学、気候変動と生物多様性の危機に挑むサミットをNYで開催 — トム・ステイヤー氏とジョン・ケリー氏も参加

          来月、イェール大学はニューヨーク市で4日間にわたる重要なサミットを開催し、気候変動と生物多様性の喪失という現代社会が直面する最も深刻な課題に対する大学の取り組みを紹介します。このサミットは、「Climate Week NYC」と国連総会の年次会合に合わせて開催され、イェール大学の「Yale Planetary Solutions(YPS)」を通じて、地球規模の問題に対し解決策を模索します。 Yale Planetary Solutions(YPS)とは Yale Plan

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          ヨーロッパの繊維廃棄物問題:新たな法規制で持続可能性を目指す

          欧州連合(EU)は、繊維廃棄物の問題に対する革新的なアプローチを打ち出しつつあります。これは、ファッション業界の高い生産量と低品質な商品による膨大な廃棄物を削減しようとする取り組みです。毎年、EU内で約1,260万トン、つまり一人当たり約12キログラムの繊維廃棄物が発生していますが、これまではその処理の費用を企業が負担することはありませんでした。 繊維廃棄物に対する「拡大生産者責任(EPR)」導入へ 2024年3月13日と少し前のことですが、欧州議会は、ファッションブラン

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          サウジアラビアの未来都市Neom

          約1万年前から7千年前にかけて、サウジアラビアを含むアラビア半島の気候は、現在よりも湿潤で、サバンナや湖沼があったそうです。この時代は「緑のサウジアラビア」とも呼ばれ、当時のアラビア半島には豊かな動植物が生息していたと考えられています。古代の人々はこの地域で狩猟採集生活を営み、後には農耕や牧畜が行われるようになったそうです。アラビア半島が砂漠化し始めたのは約6千年前から4千年前の間で、気候変動による降水量の減少と、植物の減少が進行し、徐々に乾燥化が進みました。サハラ砂漠が北ア

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          地熱発電:世界の動向 (特にケニアとアメリカを中心に)

          地熱発電は、地球が発する熱を利用したエネルギー源です。地球が発する熱は、地球上に均等に存在しているわけではなく、地熱発電には適している地域とそうでない地域があるのです。地球中心部の熱源は、プレートの境目に付近に多く表出しており、ホットスポットと呼ばれています。 地熱資源量が多い国のうち、アメリカ、インドネシア、日本、フィリピン、メキシコは全て環太平洋火山帯(Ring of Fire)に属しています。アイスランドは大西洋上のホットプルームという特殊な地熱資源環境に位置しており

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          COP28でのカーボンクレジットに関する発表とタンザニアの取り組み

          カーボンクレジットとは何か? カーボンクレジットとは、二酸化炭素(CO2)や他の温室効果ガス(GHG)の排出を削減、除去、または吸収する活動に対して与えられる証書であり、企業や国が排出する温室効果ガスのオフセット(相殺)を行うために使用されます。1単位のカーボンクレジットは、1トンのCO2e(CO2換算)の削減を表し、その価値は市場で取引されます。また、削減分として利用されると、カーボンクレジットは相殺され、消滅します。この仕組みは、特に企業や政府が排出削減目標を達成するた

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          気候変動対策:次期🇺🇸大統領候補ハリス氏とトランプ氏の違い

          気候変動対策の観点から、次期アメリカ合衆国大統領としてカマラ・ハリス(Kamala Devi Harris)氏がドナルド・トランプ氏よりも好ましいと多くの人が考えているようです。その違いはどれほど大きいのでしょうか。そして、その違いは何に起因するのでしょうか? 今回は5つの重要な領域について、ハリス氏とバイデン大統領との比較も含めてご紹介します。 1.ハリス氏、トランプ氏、それぞれの気候目標 ハリス氏はバイデン大統領の気候目標である2030年までに2005年比で50-52

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          英国の気候変動対策:前政権とスターマー政権のアプローチの違い

          はじめに 労働党への政権交代に伴い、英国の気候変動対策にはいくつかの変化が見られました。今回は、リシ・スナク前首相の気候変動対策に対する消極姿勢と、キア・スターマー新首相の積極的なアプローチを比較し、それぞれの政策の違いをご紹介いたします。また、過去の英国の気候変動対策の取り組みにも触れたいと思います。 リシ・スナク前首相の気候変動対策に対する消極姿勢 リシ・スナク前首相は、経済的な負担を軽減し、有権者の支持を得るために気候変動対策に消極的でした。🇬🇧高いインフレ率と

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