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【映画レビュー】三谷ワールド全開「スオミの話をしよう」

三谷幸喜のこれまでの映画が面白かっただけに、今回は私の期待値が勝手に上がっていたのかもしれません。特に予告編が非常に良くできていて、少し騙された気分です。
ただ、爆笑シーンこそないものの、クスッと笑わせてくれる場面がいくつもあり、面白いか面白くないかで言えば、間違いなく面白い作品です。
ただ、これが映画でなく舞台だったら、もっと面白かったかも とも思いました。

あらすじ

突然行方をくらませた大富豪の妻・スオミ。彼女の失踪を知り、夫が住む豪邸に集まったのは、スオミを愛した5人の男たち(現在の夫と4人の元夫)。しかし、彼らが語るスオミは、見た目も性格も全く異なる女性だった。スオミとは一体何者なのか?そして、犯人は誰なのか?

多かれ少なかれ人間なら誰にでもあること

多かれ少なかれ、誰にでも「好きな人に合わせる」ことはありますよね。
スオミは結婚相手に合わせてその理想のタイプになりきっていました。
ここまで極端ではないにしても、私たちも相手に少なからず合わせることってあるはず。

そして、「自分こそが一番スオミに愛され、彼女を愛していた」と思い込む男たち。これもあるあるではないでしょうか?
【男の恋愛は「名前を付けて保存」、女の恋愛は「上書き保存」】
なんて名言もあるくらいですから。
男性は別れた女性との思い出を大事にし、時には美化することがありますが、女性は新しい恋人ができると過去の思い出を断ち切る傾向にあると言われています。
これには、男女による脳の構造の違いが影響していると言う説があるようです。

個性的な男たちと昭和のコントのようなシーン

スオミに振り回される5人の男たちも、それぞれ個性的です。
現夫も元夫たちも、詩人や元教師、YouTuber兼経営者、刑事といった多彩な職業の持ち主で、性格や女性の好みもバラバラ。
彼らがスオミをめぐって「俺が一番だ」と主張しあい、ドタバタ劇を繰り広げる場面は、まさに昭和のコントを見ているようでした。

「当て書き」の妙

三谷幸喜監督は、俳優たちがどうすれば面白く演じられるか、どんなセリフが彼らに似合うかを考えながら脚本を書くことで知られています。
今作も主演の長澤まさみを想定して当て書きしたと明かしており、「今の彼女の魅力を存分に引き出したかった。これは長澤まさみのためのムービーだ」と断言しています。
その言葉通り、長澤まさみの演技が光る作品であり、他のキャストもそれぞれのチャーミングな面白さをうまく引き出していました。
出演者全員が個性的で魅力的に映っていたのが印象的です。

くだらないことを全力でやる楽しさ

詳細はネタバレになってしまうので控えますが、エンディングでは「何を見せられているんだ?」と思うシーンが続きます。これは、くだらないことを全力でやる面白さと言えるでしょう(笑)。

「誰のものでもない」スオミの魅力

夫ごとに態度や言葉遣いを変えていたスオミですが、最終的に男たちから独立し「誰のものでもない」スオミこそが一番魅力的に映りました。これこそが、三谷幸喜監督がこの作品で一番伝えたかったことかもしれません。

三谷幸喜ワールド全開

賛否両論があるようですが、三谷作品らしい「笑わせようとして、どこかズレている」独特のユーモアが詰まった映画です。大笑いする場面はありませんが、クスッと笑える作品です。ストーリー重視の映画を楽しみたい方にはあまりお勧めできませんが、深く考えずに楽しみたい方や、三谷幸喜ワールドが好きな方にはぜひ観てほしい映画です。

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