本屋大賞の大賞作品の装丁に使われている紙を観察してみた。
本屋さんに行ったときの楽しみと言えば、ハードカバーの書籍に使われている紙が何か観察することですよね。…え?違いますか?
「違うわ」という声が多数かもしれませんが、きっと共感してくださる方もいると信じて話を続けます。
いつもカバーを外して表紙を見て、見返しや扉をチェックして、この紙はコレじゃないかアレじゃないか、と推理して楽しんでいるのですが、今日はそれをnote上でやってみます。
近所の本屋さんで棚一面に本屋大賞の受賞作品が並んでいたので、大賞作品の「流浪の月」を買ってきて観察してみました。(確認に使っているのは竹尾の見本帳です)
大賞作品「流浪の月」
装丁は鈴木久美さん。
カバー:コート紙+PP
イラストを使ったカバーが多い中で、この本は写真。物語の中で重要な要素を占めるアイスクリームです。
キャストコート紙(塗工紙にドラムと言われる丸い筒の鏡面を転写した光沢の強い紙)かな、とも思ったんですが、裏面がコート紙っぽいのでコート紙にグロスPP(フイルムの一種です)の可能性も。このあたりの見分けは難しい。。
表紙:NTラシャ 鼠
表紙のデザインは仮フランス装。3辺を折り返しているので通常よりもしっかりと厚みが出ます。
最初はアラベールとかロベールかな、と思って見本帳を出したら違う…。
じゃあNTラシャか!と見たら当たりっぽいです。
見返し:モフル ショコラ
これは一発でわかる!鈴木久美さんはモフルの開発に携われた方ですね。色名もショコラで、カバーの写真とリンクも感じられます。
扉:ポルカレイド トウフ
これもすぐわかる!すぐわかると楽しいんですよね(笑)
カラフルなチリ+レイド柄が特徴的なポルカレイド。ここまでやや暗めのトーンで構成されていましたが、扉はポップな感じに。
帯:OKミューズガリバーグロスCoC オフホワイト
ラフグロスなのはわかるんですけど、ヴァンヌーボもミセスBも色が合わないなーと思っていたら、OKミューズガリバーグロスCoCが色味が合ったのでこれじゃないかなと。見返しや扉に比べるとちょっと自信はないのですが(笑)。
こうやって観察していくと王子エフテックスさんの紙が多いですね。
本の感想も少しだけ
誘拐された女の子とその犯人がもう一度出会って…という話なのですが、感想としては「重いけど軽い」でしょうか。題材としては重苦しいものを取り扱っていますが、それをあまり感じさせない「軽さ」が漂う。その軽さを是とするか非とするかは人によって分かれそうな気がします。
そういうわけで、見返しにダークな色味だけど軽やかさを感じるモフルが使用されているのは、とても合っている気がします。これがNTラシャだったらもっと重くなっちゃうような。
装丁の美しさを楽しめるのは紙の本ならでは。装丁も物語の一部だと思います。読んで楽しい、見て楽しい。それが紙の本の魅力ではないでしょうか。
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