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行けるところまでー障害者登山(山寺・蔵王編)~2

まだ山寺の「や」も始まっていない入り口は『登山口』とある。
ここから階段がはじまる

1日目ー宝珠山立石寺(山寺)

一番下の根本中堂付近ですら段差が多く、車イスではお参りしにくい場所でした。
一般的に神社やお寺は、バリアフリーになっている方が少ないのでそこは仕方ありません、古い建物ですし、山の上に建ってることが多いし。
だけど、全ての階段をとは言いません、境内に敷かれている石の一段など、ほんの少しスロープがかかっているだけで全然違ってくるのになぁと常々思います。

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参考:例えば成田山新勝寺のように、EVとスロープ完備でバリアフリーなお寺もある。ここは車イスに乗ったままでOK。

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会の健常者のサポートで、山門までは車イスを使用。でも段差が多く(そもそも初っ端に階段が10段以上)車イスを持ち上げてもらうことが多かったので、ご家族などでは下の根本中堂付近もちょっと大変かな。

バリアフリーになっている施設は山寺駅からすぐのところに芭蕉記念館がありますが、参拝目的で行くのなら、少しでも『立って歩く』ことができないと厳しい場所かと思います。歩荷さんが常駐してくれれば、高齢のおばあちゃんも登れるのにねぇ・・・。

この先が山門。ギリギリまで車イスに乗る

ところで、私はいつも山行には電動ではなく介助用の軽量車イスを持っていきます。ハンドリムをつけず(どうせ手で回せないからいらない)、フレームもアルミ仕様で細いもの。
介助者に押してもらうのが前提の車イスで、7キロです。
縦走の場合、車イスを背負って運ぶのでの負担を少しでも減らすのに、軽いに越した事はありません。

山寺では、車イスは境内にあるお店屋さんに了解を取って置いていくことになります。ここでハーネスと膝サポーターを装着。ハーネスは後ろ、またはサイドから引っ張り上げてもらうため使用します。

山門。ここからは奥の院まで階段が連続する

山門をくぐります。

登り始め
木立の中は良い風が吹き抜ける

前を健常者に歩いてもらいます。
先行健常者のザック下部にシュリンゲを通し、それを私がつかみます。右上肢が不調のため、左に健常者についてもらって腕を組んでもらい、体を左から持ち上げ気味にして一緒に歩いてもらいます。この体制で階段を上っていきます。
一段、また一段。

赤い紐。これに手を通して支えにする

予報では雨っぽかったのにピーカン天気で日差しがきつい。
はぁ、はぁ、と息を継ぎ、息を継ぎ、ゆっくり、一段一段、時には利き足を変えて、時には立ち止まって両足に体重をかけ一拍置き、足を整えつつ登ります。

姥堂。
「この場所から下は地獄、上が極楽という浄土口で、新しい着物に着替えて極楽に登り、 古い衣服はお堂の奪衣婆に奉納するためのお堂」だそうです

階段が一時終わって広い空間まできた時、そこは360段目。
せみ塚でした。

松尾芭蕉の有名な句を、ここで改めて読んでみる、
という余裕はなかった・・・
階段はまだまだ続く。一つの段が浅いのが救い

100段行けばいいと思っていたのに、360段!という事は、あと半分強。
「行けるかも」
「無理しないで。ダメだと思ったら、そこで待っていればいいから」
いや、行けそう。
『一歩一歩』は、地味ではなくてすごいこと。だっていつの間にか想像もしない場所へと進んでいますから。

一段、また一段、息を切らしながら登っていきます。
熱中症が怖いので、何度も何度も休憩し、呼吸を整え、水分を取り、行動食を食べ、ゆっくり一段ずつ登ります。
とにかく私の歩みは時間がかかるんだわ。

弥陀洞。
岩肌に阿弥陀さまが見える、ということでみんなここで立ち止まって岩を見上げていた。
道々、本当に見るべきものがたくさんある

木陰がある場所はいいんです。心地よい風も通る。
夏の日差しが降り注ぐ場所では、足の痛みよりも暑さで体調が崩れることを恐れます。したたる汗を拭い、一段、また一段、足を前に進めていきます。

日陰を歩こう

健常者のサポートは、一人の人に負荷がかからないよう、次々にバトンタッチして行きます。先行のKさんは一人でずっと引っ張ってくれます。彼、70を過ぎていますが、頼れる山男です。

いつの間にか仁王門も潜り抜けていて、もうその頃は景色や、お寺のいわれとか、そこまで頭は回らず、とにかく一段一段、登ることに全集中です。

仁王門。
本当はどこもかしこも、立ち止まってじっくりお参りしたかったけど、もはや、時間的にも体力的にもそのような余裕もなく・・
観明院。
仁王門をくぐると右手に現れる
次は金乗院。

だいぶ登ってきて、『もう少しだよ!」という声が聞こえます。
「ほら、あそこだあそこ!」
お〜、見上げて振り返ると私の目的地が目の前に。
行ってみたかった場所、五大堂。
ここココ!この場所!
また一つ、会のサポートのおかげで行けました。

この景色、なんて素敵なの!(とりわけ松尾芭蕉が好きとか、御朱印が欲しいとかではなくて、ただただ行ってみたかった、見てみたかった!)

開山堂、納経堂
右の階段をもう少し行く。(まだ階段・・・そろそろ足に来てる)
五大堂。誰もがここでどよめく。ここまでの行程が一気に癒される。いい風だぁ〜!
(拝観順がちょっと違うけど。ほんとは先に奥の院です)
眺めてみてる・・・・・・・・・。
Wanderどころの話じゃない。すごい!自分の足できたよ!

みんなで集合写真を撮った後、会のみんなはそのまま奥の院まで進みますが、私は金乗院の裏あたりにある山頂売店のベンチで待つことにします。
会の女性が1人残ってくださいました。
大ベテランの彼女は、「昔何度か奥の院まで行ったことあるから、いいのよ」と、笑います。ありがたい。何度だって参拝したいでしょうに・・。
ポカリスエットと甘酒を買って来てもらい、ベンチの上に足を投げ出して、山の風景を見ながら飲み干します。持ってきた麦茶はすでに空っぽ。冷たい甘酒が体に吸収されていきます。

こんな休憩どうでしょう。

足をちょっとでも高く。冷たい甘酒でエネルギー補給。
ほんとは下山したら昼食のはずだったのだが、もう14時近い。
思った以上に時間がかかってお腹ぺこぺこ。

ちなみに靴は登山靴ではなく、処方箋による装具履。足型をとって作成してもらった足底装具を敷いたものです。ハイカットなのは特に山用というのではなく足関節の変形に対応してのもの、日常履です。
脱ぎ履きにドレッシングエードが必要なので面倒ですが、足裏、足首への負担少なく、歩く時は必ずこの靴です。

以下は奥の院まで行った会の仲間から見せてもらった写真です。奥の院はまだもっと先ですが(みんなはすぐそこだと言うのですが・・)、見どころ満載。
行ってみたかったですが無理をせず、ここまで来られたことに満足。ここまで来られて十分十分。もっともっとと欲張ってしまいがちですが、よく来られた、もう十分満足した、そう思わないと自分の体にも会の皆さんにも余計な負担をかけてしまいます。
いただいた写真を見て、へぇあの先にこのような建物が・・!と堪能します。
(ここまで一緒に登ってくれてありがとね・・・)

それにしても本当に素晴らしいところ。足がなんでもなくて時間が許すなら、ずっと、ゆっくり、1箇所1箇所、回ってみたかったです。

(以下、キャプションが違っていたらごめんなさい)

華蔵院
三重小塔
金燈籠
奥の院
大佛殿

さて。
奥の院から戻ってきた皆さんと合流し帰路につくのですが、帰りの電車、予約したタクシーの時間等等に、私のカメ歩きでは間に合わない。帰りは、会のリーダーの背負子に背負われることになりました。
今登ってきた階段を、リーダーは私を背負って降りるわけです。
ただのおんぶではありません。
人をザック化させるような、体をすっぽり覆って、背負う人の背中に密着させて固定する専用の背負子(おんぶ袋のようなもの)があり、これで背負われます。

私が、約30年前に両膝いっぺんに人工関節置換手術を受けた時、執刀医に言われた言葉「太るな」。その言いつけを守って、体重は今も当時のまま。
とは言え、この体重を引き受けて下山する、誰がそんなことしたいと思うかしら。そんな苦行をするかしら、って思ってしまう。
私みたいに肉体的に何もできない人もいれば、人一人を背負って、山を登り、山を降りられる人がいるってすごいなといつも思います。

リズミカルに降りていくけれど、暑いだろうな、重たいだろうな。と思っているうちに・・・すごいな、帰り道はあっという間。

以下は根本中堂付近で撮ってもらった写真です。

御神木だそうです
お墓かな
どこかな。
ちゃんと見学したかったけど、こんなとこあった?くらいな勢いで帰ってしまった。
もう一回行きたい。登らなくても素敵なところだから。
こけし塚、ですって。(こんな場所あったかなぁ)
お地蔵さま?じゃないか、どちらさま? 素敵なたたずまい

もっと時間があればくまなく隅々まで見学し、しっかりゆっくり参拝し、写真もあちゃこちゃ撮りたかったのですが、今回は時間が押しているので速攻駅へ。
一旦山形駅に戻ってそこからタクシーで宿泊地の蔵王に行きます。

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参考:ちなみに山寺の参拝ルートはこちら

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仙山線

仙山線ってどんなかなぁ〜などと、ローカル列車に乗れるのも、障害者一人ではなかなか大変なこと。会の健常者の助けで難なく乗車です。

ローカル線は無人駅が多く、また駅には階段しかないところが多いです。
確認はしませんでしたが、手すりの形状から山寺駅は多分エスカル(車イス昇降機)があるかなぁ・・・(未確認です)。有人駅なので事前連絡で介助はしてくれると思います。
まぁいずれにせよ、車イス一人では使えない駅ですから、この機会に電車の旅も楽しめて嬉しかったのです。

翌日は夏山山行、蔵王です。

雨予報で諦めていたお釜が、当日はバッチリ見えた!

その3へ続く


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