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冷蔵庫に眠る高級チョコレート

最近の私は、食欲が止まらない。


昨日の夕方、どうしようもなくお菓子が食べたくなった。お昼ご飯はがっつり食べた。少し前まで、ダイエットのために間食を極力我慢していた。それなのに、お菓子が欲しい。身体の調子のこともあるのだろうけど、私の身体は無性に甘いものを求めているようだ。

向かった先は、キッチン。そして、乾麺やレトルト食品などを収納している小さなスペース。父の買い溜め癖を象徴するかのように、次から次へと発掘される食べ物たち。食べ物の山をかき分けながら、私は食べたいものを探した。

そんな中、私は冷蔵庫で見つけた。高級チョコレートの箱を。賞味期限が2ヶ月前に切れている。未開封のまま。誰が買ってきたのか、あるいはもらってきたのか。それは分からないけど、せっかくの高級チョコレートがもったいない。自称・賞味期限切れ食品ハンターの私は、これ以上悪くならないうちに食べることとした。


大手お菓子メーカーが販売してくれるチョコレートと、高級チョコレート。私にはこの差が分からない。もちろん、味が微妙に違うことは分かっている。値段が違うことも。でも、厳密な違いはあるのだろうか。口に入れてしまえば、チョコレートのステータスなんて一緒ではないか。なんてことを口走りそうになりながら、私はチョコレートの箱を開けた。

中には、高級チョコレートであるという誇りを持った12粒のチョコレートが、お行儀良く並んでいた。大手お菓子メーカーのチョコレートでは決して見かけない形をしている。一口で食べるには少し大きい気もするけど、私はそんなことを気にせず1粒頬張った。

高級チョコレートらしい味、というとかなり抽象的だけれど。チョコレートの甘さが適度に抑えられている。奥に秘めたほろ苦さが、チョコレート本来の甘さをより引き出しているのだ。チョコレート1粒1粒が「その辺では出会えないのよ、私」と言わんばかりの顔をしている。その所以が分かったような気がした。


仕事から帰ってきた母に、賞味期限切れの高級チョコレートがあった話をした。すると、母が私に一言。

「それ、パパのじゃない?」

話を聞くと、どうやら父がバレンタインデーの時期に買ってきたか、誰かからもらってきたものらしい。それは初耳だ。その話を聞いた頃には、もうすでに3粒なくなっていた。空腹の私が夢中で食べたから。せっかくの高級チョコレートなんだから、もったいぶっていないで食べればいいのに。父はチョコレートの存在を忘れ去ってしまったのだろうか。

私が勝手に高級チョコレートを食べたこと。今のところ、父はこのことをまだ知らない。

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