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本当の恩返しの仕方

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私は大学2年生の2月に、何の前触れもなく大学を除籍になっている事実を知りました。
この時私は「大学に自分の籍がない」という事実をすぐに受け入れることができませんでした。また同時に実は父がお金に困窮しているということもどういうことなのか想像できませんでした。

正直絶望的な気持ちになりました。

しかし、ここまで苦労して入った大学を簡単に辞めてしまっていいのか。何とか残る道はないかと思い直し、そこから大学と交渉した結果、2年生分の学費と3年生分の学費を一括で支払うことが出来れば「除籍解除」して復学できるようにしてくれるところまでは話しをすることが出来ました。
ただし、支払い期限は3年生の履修届を提出する4月末まで。それまでに支払えない場合は復学できないという条件付きでした(授業が始まってから途中で復学するということはできなかったのです)。

この時すでに2月末。しかも私は私立の理系だったので、2年間分の学費約260万円を2か月で用意しなければいけませんでした。
まずは親戚に貸してもらうということを考えましたが、実は父が自分の借金返済のために既に多額のお金を借りていて、私がさらに追加で借りるということはできないことを知りました。そのため二十歳過ぎの学生がわずか2か月で260万円を自分だけで作らなければいけないことになりました。

翌日からお金を貸してくれそうな知人に片っ端から事情を説明して、お金を貸してほしいとお願いして回りました。また空いている時間は全てアルバイトを入れて働きました。2か月間で何とか60万円を作ることが出来ましたが、それでも残りの200万円は誰かに借りる以外に手がありませんでした。

しかし学生に200万円も貸してくれる人がそんなに簡単にいるはずもありません。また2か月という短期間で集めるというのも非常に困難でした。ほとんどの人は同情し何とか力になりたいと言ってくれましたが、いますぐにはそんなお金を用意できないと断られてしまいました。またお金は出せないけど、せめて大学を辞めたあとの働き口を探してあげると言って動いてくれた方もいました。

しかし、200万円を借りる目途が着かないまま時間だけが過ぎていき、支払い期日までは残り1週間となっていました。
そこで最後ここに頼んでダメだったら諦めようと思って私が高校生のころ通っていた空手道場の先生にお願いしに浜松に行きました。もともと先生と母は顔見知りだったので、私の家がそんな状態になっていることを知った先生もとても驚かれていました。しかし先生からの返事も「貸してあげたいがすぐには無理だ」との返事でした。

「もう駄目だ。。。」

と諦めました。

しかしここで奇跡が起こりました。
私が高校生の時に一緒に稽古していた3つ上の先輩が、社会人になり京都の会社に就職していたのですが、たまたま私が帰省したこの日道場に遊びに来ていました。そして私の話しを横で聞いた先輩が突然

「分かった、俺が貸してやる。あと200万円では払ったら生活が出来なくなるだろ。250万円貸してやる」

と言ってくれたのです。

その言葉を聞いた瞬間、私はひざから崩れ落ちそうになるくらい力が抜け涙が溢れました。

先輩はこの時25歳、社会人3年目だったと思います。おそらく持っているお金のほぼ全額だったと思います。それを私を信用して出してくれると言ってくださったのです。

私は涙ながらに先輩に感謝の言葉を述べました。

そして先輩から借りたお金を大学から指定された支払期日の2日前に払うことができ、私は大学に復学することが出来ました。

結局先輩には私が大学を卒業し、働き始めてから少しずつ返済を行い3年かけて返済しました。この時お金を貸してくれてから6年がたっていました。しかもこの貸してくれたお金は無利子・無担保という今考えるとあり得ない条件で貸していただきました。
そして最後の返済の時に私は直接お会いしてお返ししたいと申し出、京都まで会いに行きました。ところが帰り際京都駅まで見送りに来てくれた先輩が「新幹線代だ、とっておけ」と言って、その最後に返済したお金をそのまま私に渡してくれたのです。
この先輩がいなかったら今の自分はなかったと思います。

私は結果的に多くの人に助けていただき大学に復学することができました。私はこの時

「自分は一人で努力して生きているような気になっていたけど、本当は多くの人に支えられ、見守っていただき、その関係の中で『生かしてもらっている』のだ」

と感じました。
そしてどうしたらこのお世話になった方々へ恩返しできるのかを真剣に考えました。結果私は

「恩返しとはきっと、何かものをあげたり何かしてあげることではなく(それはそれで嬉しとは思うけど)、いついかなる時に会ったとしても『あのとき助けてあげて良かった』と思ってもらえる姿を見せること、そして『あの時助けてもらったおかげで、いま自分は幸せです』そう言える状態でい続ける努力をすること」

だと考えました。
私はこの時から、どんなに辛いことがあったとしても人生を諦め暗い顔でいることなく(瞬間的には落ち込むことはあっても)、常に前を向いて頑張ろうと思うようになりました。

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