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「飛び込み営業」の極意

アルバイト求人サイト「OPPO」を運営する株式会社オポチュニティへは私含めて15名の新人が配属されました。

■株式会社インテリジェンスとオポチュニティについて
参照:会社の看板で営業しない。本物の営業力を身に着ける

実はインテリジェンスとしても人材紹介、派遣に次ぐ第三の事業を立ち上げたいと考えていた時期で求人広告事業にはこれから力を入れていこうとしていました。

しかし、当時キャリアコンサルタントが人気職種になっており、人材紹介事業部や派遣事業部でキャリアコンサルタントをやりたいと入社してきた女子社員は多くいました。
そのためオポチュニティへの配属が決まった時に「親になんて言ったらいいの?」と泣き出す社員もいました。また他の男性社員でもインテリジェンスへの入社動機がクライアント企業の事業戦略に対して人事面からサポートする仕事をしたいと人材紹介事業部を希望して入社した社員もいたので、アルバイトの求人広告の営業をするオポチュニティへの配属で「本流から外された」と考えた同期がいたのは事実です。
そんな落ち込む同期を横目に私は「看板が無い中で営業できる」ということに一人興奮していました。

「OPPO」の営業先は大きく分けて2つに分けられます。
一つは飲食店や販売店、塾、娯楽施設などの広い意味でのサービス業と、もう一つは一般派遣や短期派遣を行っている人材業でした。後者の人材業は大手企業の数が決まっているため、そこには既に先輩社員が配置されていました。
そのため私たち新人が担当するのは全国に数10万社あるサービス業界への営業でした。ここには例えばすかいらーくグループやマクドナルドなどの大手飲食チェーンもあれば、コンビニエンスストアやスーパー、アパレルなどの販売店。塾、映画館、テーマパークなど様々な業種の大手から個別店舗まで様々あり、そこに対してどうやって営業をかけるかが問題でした。

ここで登場するのがいわゆる「飛び込み営業」です。

オポチュニティではこの「飛び込み営業」の研修として「名刺獲得大会」というものがありました。ルールは簡単で10時から16時までの間に何枚お客様の名刺をもらってくることができるかを競います。

新人15人は名刺とパンフレットだけ渡されて、朝10時に街に放り出され、あとはひたすら見ず知らずのお店に行って「名刺交換してください」とお願いして回ります。
営業中のお店に行っていきなり名刺交換をお願いするわけですから、当たり前ですが嫌な顔されます。最初は訳が分からないので飛び込めるのですが、2~3件飛び込み『拒絶』を受けると人はどうなるか。

次のお店に入ることができなくなります^^

お店の前に行っても立ちすくんでしまい中に入りたくても入れない。頭の中では

「忙しいよな」「今行ったら迷惑だよな」

と行かないほうがいい理由がいくつも浮かんできて「止めておこう」という気持ちになります。この状態になってしまうともう「飛び込み営業」はできません。実際1日かけて獲得した名刺が10数枚という新人も何人かいました。

そしてこの名刺をもらえなかったという事実の受けとめ方は2つあります。
一つは自分はダメだと自己効力感を下げるか、もう一つは

「こんなこと意味ない」「非効率だ」

と自分ができなかった事実を「効率」という言葉で「正当化」するしかありません。
(実際「飛び込み営業」は非効率なのですが、この研修の目的は『名刺を獲得してくること』なので、飛び込み営業が効率的か非効率なのかをここで問うことは論点のすり替えです)

もちろん私も5件目あたりで頭の中で「行かないほうがいい理由」がいくつも浮かんできました。
しかし、この頭の中に浮かぶ否定的な考えは、「拒絶」によって自分を傷つけないために自分が作り出している「幻想」です(つまり防衛本能です)。

ではここを乗り越えて飛び込みを続けるとどうなるか。
まず丁寧に誠意をもって失礼が無いように話しをすると、相手からあからさまな拒絶が意外と少ないことに気付きます。
中には「ちょうどアルバイト採用困ってたんだよね。パンフレット見ておくね」やこの取組みの意図を察してくれて「新人さん?お疲れさま。頑張ってね」と励ましてくれる方もいます。もちろん拒絶はありますが、相手もサービス業の方なので自分が思っているほどのダメージを与えてくる人はまずいません。

この自分の頭の中の否定的な言葉は自分が作り出した「幻想」であることに気付き、相手にフラットな気持ちで話しかけることができるようになるかが、この「飛び込み」研修の真の狙いです。
つまり、自分が何か物事を行おうとしたした時に、それを止めようとする「メンタルブロック」を客観視して外すことができるかどうかが、飛び込み営業では求められるのです。

(もちろん単に「新人は苦労した方が良い」という上司の思い込みでやらせる会社もあると思いますが…)

やっている最中にここまで整理して理解はできませんが、思ったほど拒絶が少ないことに気付くと、あとは面白くなってきます。私も最初の数件だけビビりがありましたが30分もすれば慣れてきてあとはこのゲームを楽しめるようになりました。

結果として私は60枚以上の名刺を獲得しました。制限時間6時間なので1時間で平均10名以上、6分ごとに一人と名刺交換したことになります。またその間に昼食も食べて、さらにお客様とお話しもしてこの枚数なのかなり良い成果だと思います。
途中新人同士で様子の探り合いをしていたので、その状況から考えると自分が一番の可能性が高いことが分かりました。本社に戻るとき、内心私は「勝ったな」と思いました。そして意気揚々と本社に戻り自分の枚数を報告したのですが、結果は第2位。

1位は100枚以上獲得した女性でした。(平均1時間で16枚以上。3分45秒ごとに1枚獲得している計算になります)

この驚異的な結果を出した女性とこの後も営業成績で競い合うことになりました。そして、この女性が自分の運命の人となるのはもっとずっと後の事でした(笑)

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