【日経新聞】日本酒と科学
「○○の酒蔵の△△というお酒が美味しいよ」と、よくお酒の席で話す機会がある。
私も酒蔵と日本酒名はセットで印象に残ることが多く、
片方がきっかけで、もう一方の情報に巡り合うことも多かった。
今回の記事は、従来の酒蔵独自の日本酒とは違う形の日本酒開発の話だ。
日本酒そのものではなく
地方の特産物から日本酒を作るために必要な花酵母を開発した話。
開発したのは、愛媛県酒造組合•愛媛県産業技術研究所•
食品産業技術センター•東京農業大学の方々。
大まかな流れを下にまとめてみた。——————————
地元で品種改良した特産物の「さくらひめ」という花から、
まずそこに生息する酵母を採取してくる。次に、その酵母には複数の種類が存在しているので
その中から日本酒製造に適している酵母を選択する。複数種類の酵母が適している場合は、1種類ずつになるように分離する。
(この過程は詳しく記されていなかったが、おそらく何種類かの条件でスクリーニングした後にゲノム解析とかで詳しく解析して同定していくのかなと思う。)試験醸造を行い優良だった酵母を選定する。
※今回は”愛媛さくら酵母”と選定された。(4種類)
この花酵母で面白いのは、“果実のような香り””すっきりとした味わい”など
4種類ごとに特徴があることだ。
組合に加盟している酒蔵は、”えひめ香る地酒”として定められたガイドラインを守りながら、酵母を選んで日本酒を製造する。
ここまでが大まかな流れである。———————————-
それぞれの蔵元の特色を持ちながらも、製造方法•条件のガイドラインをつくることで、愛媛県の地酒として統一したブランディングを目指す。
私は「特産物で町おこしの一環かな」と読んでいたのだが
この開発は国内よりも海外市場を視野に入れた取り組みらしい。
日本酒が海外で人気だとはニュースで耳にしていたが、想像以上だった。
実際に数値で見てみると、2021年に海外輸出額が1000億円を突破し
10年連続で過去最高を更新中とのこと。
どんな風に世界の人たちは日本酒を飲むのか気になる。
最後に、少し話はそれてしまうが
この花酵母の開発は日本の伝統(日本酒)と
技術力(花酵母の単離•解析)があったからこそできたことだ。
伝統そのものを守ること•新しい価値を見出すためには
考える力が今後重要になっていく。
最近、日本の研究環境に関するネガティブなニュースが増えて気が重い。
基礎研究や応用研究で生み出した知見•技術が積み重なっていくことで、
こんなふうに社会に還元されていることをもっと多くの人に知ってほしい。
(できれば、すぐに結果に結びつくことばかりでないことも知ってほしい)
国外から優秀な研究者を集めるという話があるが
国内にも優秀な研究者はたくさんいる。と思う。
どうして日本の研究者が海外へ流出していくのか考えた結果なのだろうか。
もう少し、同じ目線で物事を考えてくれればいいのに。
短期的なことばかりに力を入れるのではなく、
長期的に投資することも重要なのではないだろうか。
sato
#日経COMEMO #NIKKEI
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