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談笑師匠の高座収録に行ってきた!|立川談笑『令和版 現代落語論〜私を落語に連れてって〜』

こんにちは、さちこです。普段は、外国の方に第二言語としての日本語を教えています。どうぞよろしくお願いします。

昭和の家には、もとい子供の頃の我が家には、テレビは1台しかなかった。
そのため、見たい番組がある時に父や母が先にテレビを見ていると、チャンネルを変えることができず(我が家でのチャンネル権は先に見ていた人優先)、
はぶてていた(注:広島弁)。

小学生の頃のある日も、見たい番組の時間になり居間へ行くと、
母が先にテレビを見ていた。
はぶてながら、仕方がないので母の隣に座り、母が見ている番組を一緒に見た。

ブラウン管の中で、着物を着た丸坊主のおじさんが一人で必死のパッチに汗をかきかき話していたのだが、それがもう滅茶苦茶に面白かった。一瞬で虜になった。

それが落語というものだと、その日初めて知った。

演者の名前は知らなかった。いや、母に聞いたかもしれないが、覚えていられなかった。その声とその丸坊主と着物姿だけが小学生の頭にキョーレツに記録された。

その落語家さんは、桂枝雀さんであった。
落語は、大阪・京都を中心とする畿内(=上方)で主に演じられる上方落語と
江戸(いまの東京)を中心とする江戸落語とに分けられるそうだが、
枝雀師匠は上方落語の噺家さんである。

広島育ちなので、身近に生の落語を見る機会はなかったが、
「落語は面白いもの」という印象は残り続けた。

生まれて初めて読んだ少女漫画は、星野めみさんの作品で、
その作品の中には落語を題材にしたものもあり、大好きなシリーズだった。
作中では様々な演目が紹介されており、それも楽しみだった。

東京に越してから、帰省などで飛行機を利用する機会が増えた。
現在は国内線でも各座席にモニターがある便が増え、
座席モニターがなくとも機内WiFiに無料で接続してスマホやタブレット端末でインターネットを楽しむことができるが、
ほんの数年前までは座席のイヤホンジャックに搭乗時に配られるイヤホンを指し、
機内オーディオを楽しむか、空弁を食べるか、仕事をするか、ほぼ日手帳を書くしかなかった。
そんな折に、全日空便で見つけたのが、「全日空寄席」というオーディオ番組だ。


ANA HPより
https://www.ana.co.jp/common-operation/serviceinfo/domestic/inflight/pdf/2023/digitalbook_j_2309.pdf

「全日空寄席」を聞いてあらためて知ったのは、
「耳だけで聞いても落語って面白い。」ということである。
一人だけの演者なのに、複数の登場人物の様子や動きが想像でき、
物語の成り行きに夢中になれるのである。物凄い技である。

月替わりで様々な落語家さんの様々な演目が2〜3つ放送されている。
1時間程度のプログラムで、終了すると始めに戻り、延々再放送される。
帰省先までのフライトが1時間程度なので、搭乗してから聴き始めると、
着陸時にだいたい丁度終わる。
風の影響で予定より早く着いちゃったりすると、一番良いところで途中切れとなり、物凄くもんもんすることがあるのが玉に瑕である。

世に「ひろのぶと株式会社」という新進気鋭の出版社がある。

読みたいことを、書けばいい。』『会って、話すこと。』の著者である
田中泰延さんが立ち上げた前衛的?革新的?な出版社だ。
何がどう前衛的?革新的?なのかというと、
慣習的に1割となっている著者への印税支払いを、2割からスタートし、
売り上げに応じて割合を上げる累進印税を導入して、
著者が本の創作だけで生活できるよう保障しようしているのだ。
著者が安心して創作に取り組めることは、
読者が面白い創作を手にできることにも繋がるだろう。
詳しくは下記(↓)をご参照いただければと。

その「ひろのぶと株式会社」の3冊目の出版作が決まったそうだ。

ちなみに、1冊目と2冊目はこちら。

そして、待望の3冊目が、
立川談笑『令和版 現代落語論 〜私を落語に連れてって〜』である。

談笑師匠は、江戸落語の噺家さんで、
古典落語に現代の私たちが聞きやすいように工夫を加えられ、
「改作の達人」と評されているそうだ。
『令和版 現代落語論 〜私を落語に連れてって〜』では、
それらの改作落語について、「どのような視点で、どのように改作したのか?」をわかりやすく解説するパートがあり、そこで紹介される演目の高座がQRコードで見られるようになるという。
そして、その高座収録を観覧させていただけるという募集が、過日ひろのぶと株式会社よりなされ、な、な、なんと当たってしまったのである。
(ばんざーい🙌ばんざーい🙌ばんざーい🙌)

これまで落語をポツポツと聞いたことはあったものの、
生で、LIVEで、拝聴するのは初めてである。
東京に来てから寄席があることを知り、行ってみたいと思うものの、
どうも敷居高く感じてしまって、中々行けずにいたのである。
ひろのぶと株式会社主催で、ひろのぶと株式会社推しの皆さんが観客のお席なら、
行ける気がしたので、当選のご連絡に天にも昇る心地がした。

さて、いよいよ当日。
会場の落語・小料理 やきもちに到着。

建物内を進むと、お店の入り口が。

う、う、歌丸師匠のお名前がっ!?
余談ですが、わたくし、笑点では子供の頃からこの歳に至るまで、
ず〜っと歌丸師匠推しだったのです。
師匠の頭の切れるお話と、すげない切返し、照れ笑いが大好きでした。

そんな師匠のお名前にお目にかかれるとは、思わず写真をパシャパシャ。

中に入ると、正面に高座が設られていました。

主人はまだいらっしゃらないのですが、期待値MAX膨らみます。

受付を済ませると、前のお席にどうぞと勧めてくださいます。
実は同行者が寡黙な外国人だったので、御本のための収録で師匠の目の前に笑わない人がいたらマズイんじゃないかと一抹の不安を感じ、同行者に「前でも大丈夫?」と焦って確認したのですが、おそらく意図は伝わっていなかったと思われます。ハハハ。(結果オーライだったんですけどね。ホッとしました。)
落語って、話し言葉だし、江戸表現もあるし、時代要素の知識がないとイメージしにくい場面もあるだろうし、実は外国の方には難しい面もあるだろうなあと思いつつ、そうは言っても同じ人間として共感する笑いや泣きもあるだろうから、是非知ってほしいと誘ってみたのでした。

いざ、お席に座ってみると、いや、近い、近い、近い、近い、近い、近い!!
師匠が出ていらっしゃると、尚更です。

本当に貴重な体験をさせていただきました。

約2時間の収録中、どっと湧く時と、
しーんと物音一つせずに会場中が静まっている(=聞き入っている)時と、
会場中が緩急の波に漂っていて、そのことに途中で気がついた時には、
ゾクゾクゾクっとしました。

前のお席だったので、その波を生み出す師匠の汗や、
師匠の目の白目までが鮮明に見え、
そこに浮かぶ真摯さが怖いくらい、真剣さにのまれるように拝聴しました。

落語は耳で聞くだけでも情景が浮かび楽しめますが、
生で、LIVEで、拝聴すると、
談笑師匠の目線や顔の向き、手の動きやその伸ばした先、体の動きや向き、扇子や手拭いによる見立て、声音などが重奏的に織り重なることで想像力が刺激され、
まるでその場にいるかのような臨場感でした。

1つ目の演目は、まんじゅうとか怖い。
絵本とかでも有名ですが、終了後の師匠のお話で、
原典は中国と伺い、一同「へ〜っ」となりました。

2つ目の演目は、テレビ算。
聞いているわたしも、店員さんのように最後は訳がわからなくなって、こんがらがってしまい、自分のこんがらがり具合がなんとも楽しかったです。
終了後の師匠の話では、近年は、
聞き手が優しく?真面目?になり、店員さんに感情移入するようになったそうで、
言われてみれば、自分も後半になるほど店員さん寄りになっていたなあと。
昔は買い手側に同調し、してやったりと思う人が多かったそうです。
また、現代でも理解されやすいようにと「テレビ」に改作なさったそうですが、
そのテレビすらも今後は難しくなるのではとも。
「テレビ」の次に改作するとしたら、何になるのかなあなんて。

最後は、芝浜。
既知のお話だったのですが、
談笑師匠の語られる夫婦は、二人揃って骨太?な印象でした。
そして、夫婦ってそういうものかもなあとも思わされました。
演者によって同じお話でも立ち上がる人物像がこれほど変わるのだなあと実感し、
とても興味深かったです。
終了後の師匠のお話では、嘘が焦点の話で、
従来は相手が気づいていない設定だが、
「そんなわけないやろー」という師匠のお考えで改作なさったとのこと。
確かに、気づいている方がより人間味が出る気がしました。

高座の最後には、談笑師匠から手拭いまでいただきました。

以前何かで、手ぬぐいは落語家の名刺代わりと読んだことがあって、
有難いやら恐縮するやら光栄やらで、この上もなく嬉しかったです。
大事に大事にします。

終了後の師匠のお話のような内容が、10月出版の御本には書かれているそうで、
益々ますますマスマス升枡楽しみになりました!!

(お読みくださり、ありがとうございました)


(2023.9.21)
立川談笑『令和版 現代落語論 〜私を落語に連れてって〜』
ひろのぶと株式会社オンラインストアによる予約情報を本文内に追記しました。

(2023.9.29)
ひろのぶと株式会社よりの書店宛お知らせを文末に追記しました。


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