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誰かの本棚[2020年8月]

書籍はそのヒトの考えていることが
目の前に可視化されるモノ。
学生のころから,他人の本棚を眺めるのが大好きだった私が
note上に私自身の本棚を展開していきます。

大体は前半で書籍の要約ファクト
後半では導かれる教訓・意義みたいなのをサクッとまとめてます。

持続可能な資本主義

鎌倉投信の創業者,新井和宏さんがつづる一冊。

従来の金融資本主義では,「リターン=お金」,つまり投資家と社会が分断されていることに課題を感じ,これからの金融の在り方は「リターン=資産×社会×心」と定義して「いい会社」のみに投資を行う鎌倉投信を創業。
「いい会社」という定性的な評価に基づきつつも,投信という金融の真っ只中でビジネスを進めた新井さんの取り組みがつづられています。次に紹介する書籍”ビジネスモデル2.0図鑑”にも引用されています。

この本を手にとったきっかけ。
友人からこの書籍の著者・新井和宏さんが出版した"共感資本社会を生きる"を読んでから,FUSEさんと話したくなったと連絡いただき,すぐに取り寄せた一冊。何よりも本をきっかけにして声をかけていただき,またそれを語れるという関係性がほんとうに嬉しい。この感情はおそらく"共感資本社会を生きる"に通じる思想を先に体現したんだろうなーと感じつつTo Readリストに登録。
eumoというサービスを立ち上げていらっしゃるのですが,サービス紹介の動画がまさに共感しました。合わせてどうぞ。


ビジネスモデル2.0図鑑

noteでも大人気のチャーリーさんが出版されている一冊。

新しいビジネスモデルである2.0は逆説の構造,八方良し,儲けの仕組みがあることと定義した上で,数多のビジネスモデルを図解で解説した一冊。

今まで知っていた企業のビジネスモデルが理解でき,さらに,今まで知らなかった企業を知ることもできる。多分どっちも大事で,既存の枠組みをなにかにあてはめるときの引き出しになるし,新しい取り組みを行う時に活用できる起爆剤にもなりうる。財やサービスの動きをきちんと自分で可視化,言語化することで,身の回りの環境の見方ががらっと変わる,と気付きのあった一冊。


分解の哲学 腐敗と発酵をめぐる思考

「分解」という現象に関してとことん語られる一冊。難しい化学的なプロセスの話ではなく,街場のゴミ清掃人や,微生物の役割,修復の美学など,様々な切り口で「分解」について考察されつつ,この世界はそもそも分解が基底にあると貫いている。

ともすると人間は生まれ,成長し新たに創造することこそが役割という考えは一転させられ,そもそも産み落とされた瞬間から,皮膚・汗をばらまきながら崩壊しているという逆説的な問いがおもしろい。家にあるビニール傘を横目に,これらも玄関でそのときを待ち続けている姿をみると,簡単にコンビニで新しい傘を買っては,ただ壊すことに加担している自分の生活様式に決まりが悪く感じる。そんなことを突きつけられた一冊。


武器になる哲学

哲学の「使い方」がわかる一冊。50個のキーワードを挙げながら,その意味,哲学者がそこに至った思考の過程をとおして,「使い方」を提示する一冊。

物事を考える時に回り道して考えたほうがいい解決策が思い浮かぶことがあります。そんな回り道を指南してくれるような思考の型が学べる一冊。良書。


エンデの遺言

タイトルにもあるエンデとは,児童文学「モモ」を書いたミヒャエル・エンデのこと。お金がお金を生み出す金融資本主義の結果うまれた経済格差を課題としてあげています。そのうえで,価値が減少するような貨幣の形を提唱し,それを実践した地域の事例などを取り上げています。

この本を手にとったきっかけは最初に挙げた新井さんがeumoを立ち上げる時に参考にされた一冊という理由から。書籍自体は2011年に発売,元となるエンデ氏へのインタビューは1999年ということで,けっこうまえ。取り上げられている地域貨幣(イサカアワー)のイマを調べてみると,すでにほとんど使われなくなったとのこと。理由は明確で,ある店舗のみにイサカアワーが集中してしまったり,家賃や保険などに使えないという実体経済との乖離があるようでした。eumoの新しい仕組みがどう使われ,どう進化していくのか,気になるところです。


田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

岡山県で「パン屋タルマーリー」を再オープンされた店主が描き下ろした一冊。現在の経済を「腐らない経済」とした上で,それと対象的な「腐る経済」についてパン屋の視点から論考されています。無理のない暮らし,無理のない社会のヒントを「腐る」ということに見出して,借金や借菌することのない,地元で回るパンを作るという小商いのヒントがつまっています。

残念なことに経済学者ピケティさんによって「富の再分配は起こらない」ということが証明されてしまいました。そんないま,共感に基づいた共同体の重要性に注目が集まっている気がします。関わりしろのある地域で暮らしを求めているイマの自分が,地域に根ざすパン屋さんの活動から,大いに刺激をもらった一冊でした。



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先生は言いました。「本だけはケチるな」

限られた人生の中で一人が感じられる感情や思考は限られているもの。
それを圧倒的に広げてくれるのが本。
この本棚も誰かの時間を生きられますように。

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