井の中のパン屋

 とある田舎町に「田口ベーカリー」というパン屋があった。
そのパン屋は街で唯一のパン屋だったため、
来る日もくる日も人が絶えず訪れ、毎日大繁盛だったそうだ。人気の秘訣は唯一のパン屋ということだけではなくカレーパンやらメロンパン、ちくわパンに世にも珍しいピーターパンなど、様々なパンが店に揃っていたからである。
"この世にあるパンの全てが自分の店には揃っている。そして調理できるんだ。"と店長の田口は自負していた。

そんな変態パン屋郎の田口はある時、その自負から全日本パン選手権という日本一を決める大会に応募をした。
町のみんなは優勝して町にトロフィーを掲げ凱旋してくるとおもっていた。(もちろん田口自身も)


結果はまさかの予選落ち。

そんな予想もしなかった結果に町のみんなは肩を落とした。
しかし田口自身の表情は不思議とワクワクしたような清々しい表情をしていた。

「これがコテンパンの味かぁ。」


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