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記憶に刻まれた,その一瞬

卒業式を2日後に控え,式に向けての最後の練習。その日,所用のため不在の校長に代わって,子どもたちに練習用の卒業証書をステージの上で渡す役を6年担任で回すことになった。私はC組の担任だったので,A組児童に証書を渡すことになるのだが,私の脳に「消えることのない瞬間」が刻まれることになった。

✅名付けるなら「ティーチャーズ・ハイ」

「ランナーズ・ハイ」ならぬ「ティーチャーズ・ハイ」。いわゆるゾーンに入るというやつが,教育現場でも存在します☺️当時の子たちとの記憶の中で,想い出そうとしなくても,いつでも鮮明に蘇る瞬間があります。私はその年,最後の卒業式の練習の際に,34名の児童に卒業証書(練習用)を渡したのですが,その中の1枚の話です。最後から2番目か3番目くらいのある女の子,先に彼女のことを話します。

 詳しくは言えませんが,とにかく大変なバックボーンを抱えた子でした。5年6年とその学年を受け持ちましたが,彼女の担任ではありませんでした。けれど,行事や授業などで比較的よく関わっていて,人懐っこくて何事にもなんやかんや言いながら最後まで一生懸命に取り組む,そんな子でした。卒業式を意識することになった頃の放課後,帰り際に「実は私,小学校の先生になりたいねん‼️だから,中学校でもっともっと勉強頑張るわ‼️」と言って走っていきました。どちらかというと,学習は得意ではないタイプだった彼女の発言にグッと来るものがありました。そして,やってきた最後の練習。たまたま偶然が重なって,私は彼女に卒業証書を渡すことになったのです。

 「はい‼️」担任の先生に名前を呼ばれ,よく通る声で返事をした後,彼女は演台の前に歩いてくる。目を合わせて,礼。右手,左手,抱えて一歩下がって,もう一度,礼。よし,しっかりできている。無事に渡して,ほんの少しだけホッとする数秒。けれど次の瞬間,私は別世界にいた。証書を抱えて振り向き,堂々とスロープを降りていく彼女の背中が,いつもと違った。白いトレーナーを着ていたはずの彼女が紺色のスーツを着ている。上靴を履いていたはずの足元は黒い革靴。背も少し伸びて,髪の毛は後ろで綺麗に束ねられている。間違いなく,私の目にはそう見えた。「先生‼️」目の前の男の子に声をかけられて,現実に戻る。彼に証書を渡しながら横目で見た彼女は,いつもと変わらない様子で自分の席に向かって歩いていた。

あれから10年。今でも卒業式シーズンになると,必ず鮮明に蘇ってくる瞬間です。今年の4月1日。彼女は私が見た光景のように,スーツを着てどこかの小学校へ向かって歩いているのかな。

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