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さすかる2022プレイバック!【コーディネーター×インターン生座談会】

「どう生きて、どう暮らすか?」

働き方や暮らし方が多様になった時代といわれていますが、そもそも「選択肢」を知らなければ、自分らしい選択をするのは難しいのではないでしょうか?

学生や若者がいわきに関われるきっかけをつくりたいと思い、立ち上げたさすかるインターン2022にも、これからの生き方や働き方を模索する学生が各地から集まりました。

地域や地方を目指す学生たちは、いわきでのインターンでどんなことを学んだのか。地域に飛び込んだことで、新たな選択肢は見つかったのか。

さすかるインターンが終わり、約1年経った今だからこそ話せるぶっちゃけ話をしようと、コーディネーターとインターン生を交えた「さすかる座談会」を実施しました!

さすかるインターンに参加したきっかけや就活に対する違和感、インターン後のいわきとの関わりなど、一人ひとりの等身大の言葉が飛び交う時間となりました。

参加者:寺澤亜彩加/さすかるコーディネーター
    前野有咲/さすかるコーディネーター
    井上栞里/さすかる・大運寺インターン
    熊谷真輝/さすかる・古滝屋インターン

さすかるコーディネーター・寺澤亜彩加
さすかるコーディネーター・前野有咲
大運寺インターン・井上栞里
古滝屋インターン・熊谷真輝


偶然みつけた、さすかる

前野:さすかるインターンが終わって、もう1年が経つらしいですよ……さすかるインターン以降もそれぞれにいろんな変化がありましたよね。さすかる2023がはじまる前に、さすかるインターン2022を振り返りたいと思い、今日はみなさんにお集まりいただきました。よろしくお願いします!

座談会@NORERU?

寺澤:去年「さすかる」という謎の団体が立ち上がって、そもそも、なんの実績もないところからスタートしたわけですが、みんな、何をきっかけにこのインターンを知ったんですか?

さすかるコーディネーター・寺澤亜彩加さん(右)

熊谷:自分が住んでいるシェアハウスの同居人に、「まっきー、これに興味ありそう!」って教えてもらったのがさすかるでした。地域に滞在しながらいろんな人と関わったり、学んだりするのがすごく面白そうだなと思って。自分は、大学入学と同時にコロナが流行っていたのでずっと閉塞的な環境にいたんです。やっと外にでれるようになったし、行くなら今しかないと思いました。

熊谷さんが住むシェアハウス

前野:大学3年の夏って、早い人だと、もう就活をはじめている時期だよね? 私は大学3年の時に選択を迫られて、なにも決断できないなと思っていったん地域に行こうと思ったんだけど、まっきーもそういう違和感みたいなものを感じてた?

熊谷:そうですね。それもあったと思います。「いったんレールから外れてみるか」と。シェアハウスのメンバーの中には休学している学生もいて、既存のレールを選択しないという人が周りに多かったんです。知らず知らずのうちに、環境に影響を受けている部分はあるかもしれないです。

さすかる2022インターン生・熊谷真輝さん

寺澤:ありさちゃんも環境に影響を受けている部分ってあったの?

前野:いや、私はむしろ逆で。大学のコミュニティにうまくなじめていなかったんです。やりたいことがあったという言い方もできますけどね(笑)だから、長期休みはいろんな地域に行くことが多かったですね。

さすかるコーディネーター・前野有咲

寺澤:違和感を自分で認識できるのもある意味で能力というか、強さだよね。社会に影響されすぎるのもどうなんだろうと思うし。ところで、しおりちゃんがさすかるを知ったきっかけって?

井上:インターンの受け入れ先のひとつ「古滝屋」の里見さんのFacebookを通じて知りました。他の予定も入れていたので、インターンの期間をみた時に無理かもって諦めてたのですが、よくよくみてみたら日程調整が可能だと知って、参加を決めました。

さすかる2022インターン生の井上栞里さん

前野:たしか、途中から日程調整もしはじめましたよね。

井上:さっき、就活の話が出てたと思うんですけど、私も当時大学4年生で就活真っ只中の時期でした。何社か受けてはいたんですけど、そもそも就職したいのかもわからなくなってきていたタイミングでしたね。就職以外にもいろんな選択肢があるんじゃない?と周囲に言われたり、友達にはしおりは一般企業に向いてないと言われたり… もういいや!って思ってる時にさすかると出会ったんです(笑)

井上さんが参加していた海外ボランティア

それまでは海外の貧困問題に関心があったんですけど、コロナで海外に行けなくなってから、農家さんのお手伝いに行ったり、いわきで畑をはじめたりしていました。そこから日本や地域の課題にも興味を持った感じですね。


就活への違和感、語ってみた!

寺澤:みんな、なにかしら就活に対する違和感を持っているんだなと聞いていて思いました。私は美大に通っていたので、むしろ就活をしない選択の人が圧倒的に多くて。学科50人いたんだけど、3人くらいしかやっていなかったんじゃないかな、おそらく。

前野:目指す業界によっても変わりますよね。NORERU?のインターン「ノレナイズ」で活動していた新田くんは同級生なんですけど、建築は就活は4年生からでも間に合うから、3年の時にいわきで活動できたと話していて、コロナやいろんなタイミングによって今の選択がつくられているんだなと感じました。

ノレナイズ・新田和紀さん

井上:私はさすかるが終わったあとも、結局就活は続けていました。本当はいわきに住みたいけど、働きたい場所やピンと来る仕事が見つからなくて。そんな話をあさかさんにしていた時に、仕事はあるからうちにおいでよって言ってもらって。さすかるインターンを経て、私はいわきに移住しました!

井上さんは、NORERU?のスタッフになりました

(わ〜〜〜〜〜!)拍手

前野:おおおお! まさかの移住!!!

はじめの頃は、東京といわきでの二拠点生活も視野に入れていたのですが、福島でできたつながりやご縁を大事にしていきたいと思い、いわきへの移住を決めました。あとから住もうと思ってもやりたいことが変わってるかもしれないし、今の自分の気持ちを大事にしたいなと思ったんです。自分の好きなライフスタイルができるかどうか。これが人生の選択で一番大切な部分だったのですが、そこについてもしっかり話せたのがよかったと思います。就活では、あまり話せないことだったので。

理想のライフスタイルを模索していた井上さん

寺澤:少しずつすり合わせていったよね。選択には、自分の意思はもちろん、やはり周囲の「環境」が影響している部分が大きいと思っていて。話を聞いていると、「就活はしたほうがいいと親に言われている」という人もいるし。こう考えると、自分が身を置いている環境だけでなく、家庭環境の影響もありそうだよね。家族とのやりとりの中で知らず知らずのうちにインストールされている価値観とかさ。

前野:自分がやりたいことと、家族が自分に求めていることを区別していくのは大事な気がしています。両方を把握した上で、自分はどこに身を置きたいのかを考える。言語化すると、もしかしたらつらい現実に直面することもあるかもしれないけれど、認識するからこそみえるものがありますしね。

寺澤:就活するのだとしても、もっといろんな世界を知ってからの方ががいいよね。就活しなきゃいけない世界だけでは、狭すぎる。

熊谷:僕も、いろんな生き方をしている社会人に出会うのは大事だと考えています。たくさん資格をもっているのに無職の人や、将来について悩んでいるけれど、その状況をおもしろがって生きている人に会って、意外となんとかなるのかも?と思ってきました。

井上:後輩の進路相談にたまにのるんですが、「やりたいことはこれだけど、こうしないといけないのかなと思っていて」と話す子も多くて、そういう人たちにいろんな世界を知ってほしいし、自分が教えてあげれたらと思うんです。就活が、理想の生き方や働き方について、逆に考えさせなくする仕組みになっているともいえるかも。


「潮目」から考える、理想の暮らし

前野:就活やこれからの人生を考えていくタイミングで参加した「さすかるインターン」、改めてどうでしたか?

井上:私は、大運寺というお寺でインターンをしました。住職、まさに暮らすことがインターンのミッションです!笑 「健康と癒し」をテーマにいわきの魅力を探求し、いわきでの理想の暮らしを考えました。

大運寺の住職・霜村さんと

生産者の方の畑に行って手伝いをしたり、地産地消の食事を実践したり、お寺の行事に参加したり。とにかくいろんな暮らし方を実践し、最終発表では、農作業やヨガ、温泉を活用したいわきでの暮らしを提案しました。

仏教行事「お施餓鬼」に参加

それまでも何度かいわきにはきていたんですけど、大学生やよそものとしてではなく、帰る場所があって、自分で自炊や洗濯をして。この地で生きるリアルを聞く体験や、いわきでの暮らしを楽しめたことがよかったと思います。暮らしを想像できていたことが、移住を決めるきっかけにもつながりました。

熊谷:僕は、300年続く老舗旅館の古滝屋で、「人と環境にやさしい地域コミュニティのはじめの一歩を考える」をミッションをテーマに活動しました。お風呂掃除やベッドメイキング、フロントスタッフなど、旅館の仕事をたくさん体験し、業務を通じて会社の理解を深めました。

古滝屋の当主・里見さんと

また、当主の里見さんの活動を通じて本当に多くの方に出会ったのですが、古滝屋に訪れる人にとって古滝屋が自分を癒す場所、つまり「湯治場」の役割を果たしていることを知りました。そこから、自分のようにコロナ渦で苦労した学生たちに必要なのは「湯治場」なのではないかと考えるようになりましたね。

古滝屋の業務を体験!

先ほど伝えそびれてしまったのですが、実は僕も4月から大学を休学し、また古滝屋に住み込んでいます!!(笑) 1ヶ月半ではなく、もっといわきにいて、いろんな人に会いたいと思ったのが休学を決めた理由です。今は、「里見係まっきー」と名乗って活動しています!

現在は、「里見係」として活動中の熊谷さん

(わ〜〜〜〜〜!)拍手

寺澤:2人ともいわきに!! すごい! そして、2人に共通していたのが「暮らし」というテーマでしたね。生き方や暮らしを考えるというテーマにおいて、文化の間であるいわきという土地、「潮目」が大きな役割を果たしていたのかもしれませんね。


新たな「選択肢」をつくりたい

前野:湯治場も暮らしも、居心地のいい場や自分らしさについて考えるという見方もできるのではないでしょうか。これは引き続きいわきで探求しているテーマだと思うのですが、実際にいわきに引っ越してきて、どうですか?

井上:自分の選択は間違いじゃなかったと思っています。仕事は基本リモートワークなので、海辺を散歩したり自分の畑で野菜を育てたりと、自由気ままに暮らしています。一言で言うと、「土地の恵みを楽しむ暮らし」を実践していますね。

いわきでできた友人たちと海へ(右が井上さん)

今はシェアハウスに住んでいるのですが、知らない土地でいきなり1人でやっていくのは、けっこうハードルが高いなと思っていて、帰ってきたら誰かがいるという環境のありがたさを実感しています。消化しきれなかったものを吐き出せる時間もつくれているし。頼れる人が身近にいるっていうのは、心強いですね。

熊谷:頼れる人や場所については、僕も最近考えています。さすかるを通じて、いわきが自分の帰る場所のひとつになったのでより思うのですが、全国各地に「ただいま」と言える場所を作りたいなと思っています。

田植えに挑戦!(右が熊谷さん)

災害が起きた時に心配しあえることはもちろん、知り合いが増えると自分の興味関心も広くなる気がするんです。里見さんが自分の行動範囲を広げていく背景には、原子力災害や沖縄について多くの人に知ってほしいという思いも込められていると思います。自分も、ネットワークを広げながら、どんどん発信していきたいですね。

いわきには、「湯治場」となりえる素材がいっぱいあるのに、ほとんどの人が気づかずに埋もれてしまっている状態です。手つかずのものを開拓する、つまりいろんなものに横串をさす「さすかる」なあり方を今後も実践していけたらと思います。

井上:インターンが終わってからも、「これ手伝ってみない?」と声をかけてもらったことで、いわきとの関わりを継続させることができました。インターンに限らず、定期的に関われるきっかけ、役割や居場所が若者やよそものにとっては大事だと思います。自分もそういう場をつくっていきたいですね。

いわきで出来たさまざまなつながりをいかして

前野:いわきでの体験が、今まさに2人の活動の軸になっているのだと感じました。その時何につながっていくかはわからなくても、地域に関わる窓口があるってやっぱり大事ですよね。

寺澤:本当にそう思います。私たちコーディネーターだけではそのきっかけは作れなくて、立ち上げたばかりの1年目のさすかると、インターン生を見守ってくださった方々のおかげでここまでやってこれました。

いわきめぐり1日目
いわきめぐり3日目
まちあるきイベントにも参加

2023年のさすかるは、去年はインターン生だったしおりちゃんとまっきーが新たに運営に加わり、去年とは違ったかたちで取り組みを行っていく予定です。地域づくりやまちづくりに関わりたい学生や若者のみなさんが、いわきに関われるきっかけをつくっていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします!

前野:はからずして、さすかる新旧コーディネーター対談となりましたね! みなさん今日はありがとうございました。私も、なにかしらの形で今後もさすかるに関わっていければと思います。さすかる2022を応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました!

文・前野有咲(さすかる2022コーディネーター)