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マラソンにおける筋トレの有用性について

先日、100kmのレースレポを書いたところだが、引き続き今回得られた考察を書いてみたい。今回最も顕著だったのが、レース後のダメージの少なさだった。今まで何年も100kmを走ってきたが、戦略的にうまくいったレースでは怪我(肉離れ、関節炎など)、失敗レースでは極度の内臓疲労が定番だった。今回はそのどちらもない(PB更新なので、手抜きのはずはない)。それは10ヶ月ほど取り組んだ筋トレの効果だと思う。
今回の100kmでは、最初から最後まで、特定の筋肉を痛めることなく、上半身を重荷に感じることなく、滑らかなエネルギーの流れを感じながら走ることができた。強いて言えば、腹筋の奥のほうが少々痛かったが、100km耐えられる程度だと証明できた。また、終盤においても、「フォームがキレイだった」と、嬉しい評価をいくらかいただいた。

長距離ランナーに筋トレって意味あるの?

そもそも、「筋トレ」の定義が広すぎて、巷には誤解が氾濫していると思う。例えば、僕が今まで持っていた筋トレのイメージは、ベンチプレスや高重量スクワットなどで、「10回程度で燃え尽きる強度のトレーニング」「可能な限り、ターゲットの筋肉だけを使う運動」だった。そういう意味では長距離ランナーには無意味だと思う。また、最近では「体幹トレーニング」なる言葉も流行しているが、これも定義が曖昧。そもそも体幹とは、「胴体」くらいの意味しかない。だから、いわゆる腹筋や背筋の自重トレーニングも、体幹トレに含まれる。他に有名なのは、プランクとか、四つん這いで手足を持ち上げて静止するポーズだとか、定義にによってはヨガなんかも含まれてくる。「体幹トレって効果ありますか?」も同様に、あまり意味のない質問ということだ。

全身の連動性を高めるトレーニング

僕があえて冒頭で書いた「筋トレ」とは、この全身の連動性を高めるトレーニングのこと(以下、フィジカルトレーニングと呼ぶ)である。体幹も使うし、手足も使う。自重トレもあるし、高重量を扱うこともある。重要なのは、効率的な身体の動きを身につけることだ。これが何を意味するかというと、マラソンにおいては、ランニングエコノミーの向上ということになる。ランニングは足を使うが、足だけを使おうと思うと、非常に効率が悪くなる。上半身が「ただの重り」になってしまうからだ。上半身と下半身が動的に連動することで、ただの重りが、推進力補助装置になりうるのだ。
(もちろん、よく言われる、効率的な着地とか、ハムストリングスの活用とかも含まれる)

やり方とメニュー例

これは非常に残念な報告になるが、「独学はほぼ不可能」というのが僕の結論。僕の場合、昨年オープンした”みゃーく筋トレ塾”のお世話になっているが、ここのトレーナーは一流のプロである。それまで独学でやってみては「効果不明」として中止するのを繰り返してきた「我流筋トレ」が、いかに無意味だったか、よくわかった。そもそも、「基本的に知らない、やったことのない動き」を、本や動画で学ぶのは無理なのだ。動画では、内部の筋肉の動きや連動は見ることができないし、自分が目的の動作をできているかどうか、指摘してもらうこともできない。運動の天才ならどうか知らないが、少なくともそういう天才が僕の文章を読む機会は無いに違いない。その道のトレーナーに、一定期間以上、マンツーレッスンを受けないと厳しいのではないだろうか。
とは言え、せっかくなので、僕が特に効果を感じたメニューをいくつか紹介してみたい。ただ、残念なことに、オリジナルメニューが多いので、メニューの「公式名称」がない(あるいは不明)。

グラグラする片足スクワット
ディスク型クッション(すでにアイテム名が不明)に片足立ちして、ハーフスクワット。上体は倒してもいい。必要な筋力は少ないが、バランスを取るのがとても難しいので、重心の扱い方が勝手にうまくなる。

ちっちゃいハードル
高さ20cmくらいのおもちゃみたいなハードルを両足を揃えて連続ジャンプ。なれてきたら、足に重りを挟む。このとき、腕と肩を振り上げる動作を使って、身体を浮かせる。ランニングで、腕振りから効率的に推進力を得る感触がつかめる。

ラットプル・・・?
どこのジムでも見かける、ワイヤーで重りを引っ張るマシン(ホントは珍しいやつらしいけど、素人目にはよくあるやつと区別しにくい)。たいていは体幹を固定して、広背筋トレーニングとして使われてるけど、ここでは、骨盤の全後傾と肩甲骨の三次元的な動きを連動させて行う。下半身から骨盤、肋骨、肩甲骨、脛骨までの連動が、身体で理解できる。

おすすめできる?

前述の通り、それなりのコストと時間はかかるので、ランニングに何を求めるかによると思う。もちろん、タイムやパフォーマンス向上に投資する覚悟がある選手には文句なくおすすめできる。あるいは、ファンランナーだとしても、怪我が多いのが悩みだとか、ウルトラ、超ウルトラなどを安定して快走したいとか、なにかしら動機があれば、投資する価値があると思う。そういう場合、「身体の使い方をある程度まで覚えてしまうまで」というふうに、期間を割り切れば、さほど高額にはならないと思う。自転車の乗り方と同じで、一度覚えてしまえば、基本的には忘れないはずだからだ。

特にオチはないが、この筋トレネタは、十分に効果を実感した上で、レース結果を出してから書きたかった。ただ、僕はそっちの専門家ではないので、間違いもあるかもしれない。そのへんはご容赦いただいた上で、何か誰かの参考になれば幸いである。

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