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【起業家のリアル】事業承継とOEM脱却で新市場開拓 その道のりを聞く-後編

「起業家のリアル」は起業、事業承継、経営のリアルに迫る対話型トークセッションです。
今回は、有限会社畑中義和商店より、代表取締役社長の藤原尚嗣さんをゲストに迎え、実際のプロジェクトを振り返っていきます。
この投稿は後編となります。

Phase3 アイデアの表現
突然の事業承継とパッケージデザインの完成

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アセット 3-100


突然の事業承継

-そうこうして、デザインは形になってきていたころに、グラフで気になっていた、唯一の降下の話なんですが、突然の事業承継になってしまったんですよね?

藤原「そうですね。元々先代が病気を患っていて、退院に合わせて畑中義和商店に入社したんですが、治ったから退院したわけではなく、数値が安定したから退院したっていうことだったんですね。正直、重い病気だったんですが、最低でも二年間は商品の製造は徹底的に教えてもらう予定でした。」

-はい

藤原「一年目から泊まり込みで、つきっきりでたくさんのことを教えていただいていたんですが、僕も先代もすごく頑固で、頑固者どおしだったのですごくもめたんです。」

-どういったことでもめてたんですか?

藤原「売り方に関してですね。ほぼ毎日言い合ってました。」
近藤「具体的にはどんな内容だったんですか?」
藤原「多かったのは問屋さんを通すか通さないかですね。代々お付き合いしていた問屋さんだったということや、前の先代は慎重だったこともあって、問屋さんを通さなくても本当に売れるのかっていうところをすごく気にされてましたね。」

-藤原さんはどう思っていたんですか?

藤原「僕は、畑中義和商店に入社する前に徹底的に営業の経験も積んでいましたし、自分一人でも絶対売れると思っていました。でも言うのは簡単なので…。一年目はそこでよく言い合いになってしまっていましたね。」

-二年目はどういう感じだったんですか?

藤原「二年目に入る少し前に、病院から数値がよくないという診察を受けて入院することになってしまい、急遽一人でせざるをえない状況になってしまいました。当然他の従業員の方々は僕が生まれる前からつやの玉を作っていらっしゃるので、運営は問題なかったんですが、三年目に入る直前に先代は病気で亡くなってしまったんです。僕が入社する前は、二年で亡くなってしまうような状態ではなかったので、継ぐといったことが結果的にストレスや負担につながってしまったんじゃないかとすごく責任を感じましたね。

-そうだったんですね…とても辛い体験だったと思うんですが、そこから立ち直れたのはなんでだったんですか?

藤原「葬儀の時に、先代の奥様に「主人もう命がけでつやの玉を守ろうとしていたので、主人の分まで頑張ってください。」って言っていただけたんです。感覚的ですけど、本当に心から言って頂けているように感じて、亡くなった方に恩返しすることは物理的にも不可能ですけど、僕に継がせてよかったと思ってもらえるぐらい事業を伸ばして、先代がつやの玉を届けたかった方々に、認識していただくことは難しかもしれませんが、命がけでつないでくれたということを伝えていくことで恩返しをするということがモチベーションに変わっていきましたね。」

近藤「僕が印象的だったのは、当時打ち合わせをしていて、「こんにゃくスポンジ」っていう言葉が長いし、スポンジっていうのが現代的すぎるから変えたほうがいいんじゃないかという提案を何度もしたんですが、絶対変えたくないって言ってましたよね。」

-それはなんでだったんですか?

藤原「先代がこれだけは絶対残してくれって言っていたんですよね。だから意地でも変えたくなかったんです。」
近藤「そういう漢気みたいなものもとても印象的でしたね。」

先代から二年でたくさんのことを学んでいた

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近藤「別に褒めても何もないんですが、藤原さんは二年で先代から、これがどういう風に作られていて、自分でどういう風に改良するべきか理解していたんです。これは重要な事で、物が売れる時に、売れすぎるとよくないんです。それは生産背景といって売れるものと作るものとのバランスが取れていないと、クレームにつながってしまうからです。だから、売るということと、作るということの両方をバランスをとって学びながらやっていたのはすごいことだと思います。」

-それってすごく難しいことだと思うんですが、どこかで学ばれたんですか?

藤原「もちろん独学でそんなことができたわけではなく、でも僕はあんまり本を読むのが得意ではないので、とにかく色んな先輩経営者の方々にお願いしてアドバイスをもらていましたね。」
近藤「そうそう、藤原さん、電話長いんですよ笑。大体15分は絶対取られるからいつも心の準備してから電話でてましたね。」

新パッケージ完成

近藤「そのころパッケージが完成しました。まず、手にとったらこの面をみて、ここでカゴに入れて、あけたらこの面を見る、みたいなところまで話をしながら詰めていきました。また特に伝統的なものだから本質的なものだけで伝えようと、文章にも拘って作ってきましたね。」

-一見白地にしか見えないパッケージですけど、どんな意図があるんですか?

近藤「正面は白地に真ん中に薄くつやの玉の形で、すごく薄い色で印刷したんですが、この色の薄さはすごく繊細に検討していきました。これは雪の中に埋れているつやの玉の様子をイメージして、つやの玉が持つ透明感とか、瑞々しさなんかを表現するためにすごく薄い色で印刷しました。」

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Phase4 アイデアの投稿
販路展開とコラボ

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展示会

-ついにパッケージができて、展示会にも出店し始めた頃ですが、反応はどうだったんですか?

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藤原「それがめちゃくちゃよかったんです。もちろん、大きな企業さんからしたら大した金額ではないんですが、もう思っていた以上によくて驚きました。」
近藤「気になっていたところなんですけど、本当は伝統的なものですけど、知名度もあって、新興メーカーのように見られることもあったと思うんですけど、何か嫌なことを言われたりすることはなかったんですか?」

藤原「もちろんたくさんご意見は頂きましたね。本当にきれいになるのかとか、手間のかかるものですのでめんどくさそうとか。ただ、僕は100人中100人ヒットする商品は存在しないと思っているので、貴重な意見だとは思っていましたが、たまたま合わなかったと割り切っていたところはありましたね。」

コラボ商品の展開

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近藤「この展示会をきっかけに色々な展開が広がって、快進撃が始まりましたね。」
藤原「そうでしたね。」

-実際にはどのような展開があったんですか?

藤原「コラボ商品のお話をたくさんいただきましたね。例えば由緒正しい、首脳会議なんかでも使われるような日本旅館のアメニティですとか、雑貨店などがありましたね。赤ちゃんの肌洗い用として使っていただけるので、多可町では出産のお祝いとしても採用していただいています。」

Phase5 アイデアのピポッドと持続可能なイノベーション
商品の拡充と海外進出

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商品の展開、つやの玉たおる

-今後、つやの玉としてどういった展開を予定されているんですか?

藤原「そうですね、これまでもこんにゃくスポンジのタオル状の商品などもあったんですが、規程を満たしていなかったためにつやの玉という名前をつけることが出来なかったんですが、改良を重ねて、つやの玉たおるとして販売していくことができるようになりました。」

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-それはどういった規定なんですか?

藤原「これはその名の通りつやの玉をタオル状にした商品なんですが、このまま乾燥させると輸送している最中に割れてしまったりすることがあったんです。なので、抗菌剤を染み込ませて乾燥させず、初めから柔らかい状態で輸送していたんですが、つやの玉は全く薬品を使っていないというコンセプトなので、そこをクリアできていなかったんです。」

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アジア圏へ販路拡大

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近藤「僕たちはデザインをするだけではなく、売り方を含めたご相談もさせていただいていて、つやの玉のブランドイメージを高めながら売どうやって売り上げを上げていこうか、ということもよくお話させていただくんですが、その中でも先日「台湾を中心としたアジア圏でも販売拡大」というのを伺ってすごく嬉しかったんですが、これってどういうことなんですか?」

藤原「東京の展示会がきっかけで、台湾含めた海外の代理店の方々とお引き合いがあったんですが、その中からご縁があったところとお付き合いさせていただいて、来月からアジアでも販売を開始させていただけることになりました。」

まとめ

-今日は世界展開も含めた輝かしい成果だけでなく、苦しかった経験や藤原さんのお人柄なんかにも迫れた貴重なお話を伺えたと思います。最後に藤原さんから今後のビジョンや目標も交え一言いただけますでしょうか?

藤原「はい、冒頭でもお話した目標にしている熊野筆の産地にいった時にすごく感じたのが、地元の方々が熊野筆にとても誇りを持っていたんですね。つやの玉はまだまだ知名度も低いですが、まずは地元の方に誇ってもらえるブランドにしたいと考えています。ゆくゆくは冬に、多可町でしか見れないああいった製造風景を、観光地と呼ばれるほどのものにしていきたいです。」

-今日はありがとうございました

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