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愚かで愛おしい女

ここ1ヶ月ほど、彼の体調が芳しくない。体重の減少もみられるので、心配していたところである。

先日からは、加えて発熱(微熱)や腹痛を訴えている。年齢も私よりひとまわり上の彼である。

数年前に亡くなった祖父の姿と重ね合わせ、諸々の不安が押し寄せる。見た目の変化も顕著であるが故に、不安が膨らむ。


私と彼は「結婚」という制度をとっていない。戸籍上は他人の状態である。そのため、彼に何かあった時、私には何も残らない。財産というものもそうだが、「彼」の痕跡は私は得ることができないのである。

納得していたはずのことが、突然恐怖となって私を包み込んだ。


カレガイナクナッテモ、ワタシニハナニモノコラナイ。


涙が滝のように流れ落ちてきた。止めることができない。目からボロボロボロボロ溢れ出てくる水分に圧倒される。

想像できない不安が、恐怖が私を支配していく。

こわいこわいこわいこわい・・・。

私が何を言っても笑ってくれた
私が何を相談しても真摯に受け止めてくれた
本気で叱ってくれ、本気で心配してくれた

笑うと目尻による皺も
形のいい唇も
ゴツゴツした太い指も

全て消えてなくなってしまうのだ。なくなってしまうのだ。

私の前から・・・。


こんなにも彼に依存していたのか。
こんなにも安心していたのか。
こんなにも信頼していたのか。

こんなにも愛していたのか。


ともにいられる時間は有限である。

ともにいられることが当たり前になってしまうこともある。

それでも長い時間ともにあり続けているのは、何か理由があるのだろう。


失うかもしれない瞬間に気づくなんて、

私という人間は、なんて愚かで、そして愛おしい女なのか。



ちなみに彼の症状は過労と食あたりでした(笑)。

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