- 運営しているクリエイター
2023年8月の記事一覧
鳥獣戯画ノリ #毎週ショートショートnote
「ぎゃー!」
目眩がしてぼーっとしていたところに、悲鳴が飛び込んできて目が覚めた。悲鳴が聞こえた方に目をやると、そこには、等身大のカエルがいた。
「ぎゃー!」
俺も思わず悲鳴を上げてしまった。その声でまた向こうも悲鳴を上げた。
――悲鳴のラリーが3回ほど続いたところで、向こうの口から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「あれ、も、もしかして、シンジ?」
「その声は……コーちゃん!?
告白水平線 #毎週ショートショートnote
「ねえ、ウミガメのスープって知ってる?」
下校中、綾は幼馴染の圭太にそう話しかけた。
「ああ、水平思考ゲームってやつだろ? YESかNOで答えられる質問で状況を絞り込む、みたいなの」
「それそれ。私さ、問題考えたから、やってみない?」
「すごいじゃん。いいよ」
「じゃあ、問題。アヤはケイタと遊んでいると、胸が苦しくなります。なぜでしょう」
圭太は、少し焦った様子を見せながら質問を始めた。
「
未来断捨離 #毎週ショートショートnote
『絶対に夢を叶える方法』。そう書かれた本を見つけたのは、私が小学生の頃だった。町の古本屋で見つけたそれを、興味本位で手に取った私は、以来、その本を人生の指針として生きるようになった。
その本に書かれていた方法は単純明快だ。「夢を達成するために不要なものはすべて捨てろ」というものだ。
私の夢。それは、弁護士になること。その夢を叶えるために、私はゲームやおもちゃを捨てた。習い事もすべて辞めたし
最後のマスカラ #毎週ショートショートnote
「ウチもここまで、か……」
亜美はビルの屋上へ逃げ込んできていた。閉めた扉も内側からガンガンと殴られていて、長くはもちそうにない。
街中がゾンビで溢れた、あの最悪のパンデミックから命からがら生き残ってきた彼女も、もう限界が来ていた。ここが自分の死に場所だと悟った。
体中傷だらけの彼女は、残った体力をふり絞り、肩にかけた小さな鞄から、鏡と、探索中唯一手に入れられた化粧品のマスカラを取り出し