未来断捨離 #毎週ショートショートnote
『絶対に夢を叶える方法』。そう書かれた本を見つけたのは、私が小学生の頃だった。町の古本屋で見つけたそれを、興味本位で手に取った私は、以来、その本を人生の指針として生きるようになった。
その本に書かれていた方法は単純明快だ。「夢を達成するために不要なものはすべて捨てろ」というものだ。
私の夢。それは、弁護士になること。その夢を叶えるために、私はゲームやおもちゃを捨てた。習い事もすべて辞めたし、友達と遊ぶのもやめた。親に六法全書、過去問や問題集を買ってもらい、司法試験を受験できる十八歳まで、ただひたすらそれだけを続けてきた。弁護士になるという以外の選択肢をすべて捨て去った。
そしてとうとう、今日が司法試験当日。絶対の自信を胸に、試験会場へ向かう電車に揺られる。
ふと、向かいに座る人が持つ新聞に目が行った。途端、私は絶望した。
『日本政府、全裁判をAIに委任する方針 裁判官・弁護士不要の時代到来』
私の未来は消えてしまっていた。
(410字)
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たらはかにさんの以下の企画に参加しております。
「未来(への選択肢)」を断捨離してしまった男の末路を書いてみました。男は見落としていますが、実は彼の読んだ『絶対に夢を叶える方法』にも、「やりすぎは要注意!」と書かれていた、という設定だったりします。
まあ18歳だったら、まだまだそこから新たな未来が開けるだろうと思いますが、彼的にはもう目の前が真っ暗な状態だろうなぁ、なんて思います。
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