見出し画像

今日も今日とて、お母さん。-外回転術編-

人気アニメのタイトルに空目しそうだけど、話は全然そういうんじゃないよ。
あと「回転」というだけでロールケーキの写真にしてみましたけど、全然関係ないよ。

***

引っ越しも無事にすんだ私は、とにかくぐーたら過ごした。「身体を大切に」という言葉を本当にそのまま真っ直ぐ受け取り、きちんと守っていた。
冬の気配が近づく頃、おうちでぬくぬくと過ごすのがなんとも心地よく、映画を観たりドラマを観たり本を読んだりポケモンアルセウスをやったりして過ごした。

ママになった友人たちが口を揃えて言っていたのが「1人でカフェ行ったり買い物行ったり、もうそういうの本当にできなくなるから今のうちにやっときな!」ということだった。
そうだよね、と思いつつ、根がインドアなのでなかなか外に出ず、おうちで楽しめることばかりしていた。今思う。本当にそういうことしておけばよかったと。カフェとか毎日でも行っておけばよかったよ。とほほ。。もしこれを読んでくれている妊婦さんがいたら伝えたい。1人でカフェ行ったり買い物行ったり、もうそういうの本当にできなくなるから今のうちにやっときな!

ぐーたらしながらもきちんと検診には行って(当たり前)、赤ちゃんの成長を確認しては喜び、自身の体重増加に怯えて震えたりしていた。
私は妊娠期間中、めちゃくちゃに体重が増えた。妊娠前から20kgの増加。だいたい増えても10kg前後と言われる中、余裕でその倍増えた(肥えた)。

良いのか悪いのか、だけど私が通っていた産婦人科の先生から注意されることはなかった。プラス13kgの時点で一度だけ助産師さんから「うーん、今をキープって感じで!」と言われたけれど、その後7kgの増量に成功した。
とはいえ妊娠中の体重管理はとても大切で、あまり増えすぎると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病等のリスクがあるので、本当は全然褒められた状態ではなかった。だが幸い特にそういったことにもならず、ただ体重だけが20kg増え、お腹だけでなく、顔やら脚やらもすごく、すごくパンパンになった。


ただ私はそんなこと、全然気にならなかった。
気になって気になって仕方がなかったのは、赤ちゃんがずっと逆さまの状態でいたことだった。
逆子。
つまり頭が自分の胸の方の位置にある状態のこと言うが、通常妊娠後期までには頭が下になることが多いそうな。そしてその頃から子宮内に動けるスペースもなくなってくるから胎動も少なくなる、といわれている。

我が子はずっとがっつり逆子で、いつまでたっても激しくグニグニと動いていた。

経膣分娩(赤ちゃんが産道を通って膣から生まれる方法)の普通分娩(自然に陣痛が起こるのを待ち、麻酔や吸引等を使用しない方法)を希望していた私は諦め切れず、とにかく毎晩逆子体操をしまくった。
大きなお腹でなければ大したことない動きとポーズなのだが、かなりの大きさになったボディーでは結構辛く、毎晩「なんでこんなしんどい思いをしなければ…くそぅっ!」と愚痴りながらも、経膣分娩の普通分娩をしたかった私はとにかく希望を捨てずに頑張ったのだった。


が、頑張りも虚しく、臨月になっても逆子は治らなかった。
このままでは経膣分娩は難しくなる。帝王切開も視野に入れて、と先生に言われたとき、私は半泣きで「あの…なんかぐるっと回すやつ、やって欲しいです」とお願いをした。

ぐるっと回すやつ。正しくは【骨盤位外回転術】という。

先生がお腹の上から、手で赤ちゃんの頭とお尻を捉え、ぐるっと前回りさせ逆子を治すという術。

事前に少し調べてはいたが、手でぐるっとさせるなんてまさかそんな嘘みたいな!ほんまかいな!と思っていたのだけど、実際本当にそんな感じだった。
赤ちゃんが回転しやすくなるようにお腹の張りをおさえる点滴をしたり、麻酔をかけたりして、それから先生にえぃっ!としてもらうんだが、その点滴やら麻酔やらが地味にしんどかった。
妊娠36週の妊婦が、同じ姿勢でずっと座っていることのしんどさは、例えるなら映画館で別に観たくもない映画を8時間観させられるくらいのしんどさと同じ感じかなー?どうかなー?

外回転術は、破水して早産になるリスクを避けるために妊娠36週に行われるのが一般的とのことで、ギリギリまで粘った私は「やるなら今しかない」というところで先生にお願いしたのだ。
エコーで見ると、臍の緒が首に巻き付いているらしく、そのため先生からは「やっても治る確率は10%以下だと思ってね」と言われていた。
これで治らなければしょうがない。この子は今の位置が居心地良いんだから、しょうがないしょうがない!と言い聞かせ、でも本当は全然「ぜっっっっったい治って!!!!!!」と思いながら診察台に寝転がった。


先生が魔術師のように私のお腹にそっと手を当て、「うん、うんうん」とかなんとか言いながら「ここだね」と頭とお尻を捉え(まじかよ)、ちょいちょい動かすみたいなことを何分か続けたのち、「ヨイショ!」とハンドルを切るような動きをした。とそのとき、確実に私のお腹の中で赤ちゃんはぐるんっ!と回った。
ぐるんっ!とした感覚がはっきりとわかり、私が「あ!」と言ったと同時に先生も「お!」と声を出し、「今動いたね」と言いながらエコーを確認したら、赤ちゃんの頭はすっかり下を向き、丸まってそこにいたのだった。

私は泣いてしまった。
逆子が治った嬉しさと、万が一の緊張から解放された安心で「ありがとうございましたあぁあ」と大泣きしてしまった。
すると看護師さん、助産師さんたちが「おめでとう!」と言いながら拍手して奥からわらわらたくさん出てきて祝福してくれた。あれ産んだのかな?と錯覚するほどだった。

夫もここに一緒にいられたらよかったのにな、と思った。逆子に悩み、毎晩必死の形相で逆子体操をしていた私をずっと見てきた夫。きっとこの場にいたら、私と同じように泣いてしまうほど嬉しい気持ちになれたかもしれない。
辛いこともしんどいことも妊婦自身が一手に引き受けていることに若干の不公平さを感じていたけれど、こういう嬉しい瞬間や体験も妊婦である方にしかおとずれないというのも、考えてみれば不公平なことだ。

こうして私は希望通り、経膣分娩の普通分娩ができることになり、あとは自然に陣痛が起こるのを待つばかりとなった。
陣痛ってどのくらい痛いんだろう。鼻からスイカ出すより、本当はきっと痛いんだろうな。でも頑張ろう。だってそのために2万円払って逆子直してもらったんだし(世知辛い)、やるしかないよね!


と息巻いていたのだが、そう予定通りに進まないのが出産というもので。
私は子宮口が1cmも開いていないまま陣痛がはじまり、体力等の問題から無痛分娩に切り替えざるを得なくなってしまったのだった。

***

出産て、産むまでにいろんなことが起こるし、いろんなところにお金もかかります。産院によって値段もピンキリですが、自分の身体とお腹の赤ちゃんの具合で、産むまでの時間やお金のかかり方も様々。私が子を産むまでにかかったお金のことなんかも、参考までにいつかまとめておけたらいいなと思ってますが、とにかく子どもを産みたいと望む人が、少なくともそういった心配をせずに産める社会になってくれと願います。政治家の人たちはみーんな10ヶ月間妊婦実習みたいなのしてくれたらもう少し変わるのかもしれないなぁ、と本気で思ったりもしてます。(大きいお腹の服を数分間ちょっと着て体験した気になるああいうやつじゃなくてさ)

さて次回は、「子宮口、クローズだね」「分娩台の上で食べる白ごはん」「ターボ発射」の3本です!おたのしみにね!

この記事が参加している募集

#スキしてみて

527,181件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?