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正論という武器を振りかざす前に、やるべきことがある。

正論とは、暴力だ。

”何事もエビデンス”
社会人になり学んだ重要なことの1つだ。

「人は”言った、言ってない”という記憶ベースのやり取りになると揉めごとに発展する可能性が高くなるから、社内外問わず必ずメールなりテキストでエビデンスを残そう。」と、右も左も分からない学生の時にインターン先の先輩から教わった。

このアドバイスはこれまで幾度となく私を救った。

社内会議で議論した内容は2,3日したら誰しもほぼ忘れる。上司から突然「この間の会議で決まったあのタスクの進捗はどう?」と聞かれれば、議事録のリンクと共に「●●日までに対応すると記載されてます。」と戻す。

またクライアントとの電話で会話した内容も電話後に要点を絞って会話内容をメールをする。後に「電話で言ったはずですが〜」と言われても、「電話後に送付したメールには▲▲については記載がなく、確認後何も指摘がないということは認識しておりませんでした。」と戻せばそれは無かったこととして処理が進む。

とにかく記憶ベースでのやり取りを可能な限り避け、出来るだけエビデンスを残し後日見返せるようにする。そして第三者が見ても客観的な判断を下せるようにする。

これまで自分を守るためにエビデンスという名の「正論」を常に構え、「自分の正しさ」を正当化することを重要視してきた。

ただ、最近これが違うことにやっと気づき始めた。

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私は普段マーケティングコンサルタントとして、企業や個人の”お悩み”を聞き、マーケティングの力で課題解決をするご支援を行なっている。

悩み(≒課題)の種類は千差万別だ。ただし共通していることは、「現状に何かしらの課題があるので、それを解消し、解決したい」ということである。

そもそも「何に悩んでいるのか?」を把握しないと前には進めない。なのでご支援することが決まると最初にすることは現状把握だ。
悩んでいる課題は何故発生したのか?その原因は何か?どうしたら防げそうか?現状解決していない要因は何か?など、とにかく聞くことに徹する。

聞いていくうちに少しずつ「お悩み≒課題」が浮き彫りになり、課題の種が浮上してくる。このように会話の中でディスカッションをしヒアリングした内容はとにかくメモする。メモする理由は、自分が忘れないようにすることだけではなく、相手(ここでは企業や個人)との課題の認識を揃えるためである。

ただし、ここで問題が発生する。
それは、人は話した内容をすぐに忘れるということだ。

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人は誰しも忘れっぽい。

一昨日のランチを聞いて3秒以内に回答できる人は恐らくごく僅かであろう。また中学生の時に書籍で初めて「エビングハウスの忘却曲線(=人は取得した情報を1時間後には56%忘れ、1日後には74%忘れるという分析データ)」というものを知り、記憶力が著しく低い私を勇気づけてくれたことは今でも記憶に新しい。

ただし、コンサルタントとして決議事項を忘れられたら話を前に進められない。だからこそ「前回のお打ち合わせで●●に決まりましたが、改めて相違はありませんか?」など定期的に確認を入れるようにしている。

忘れたら軌道修正すればいい。お客さまと共に前進させることがコンサルタントの役目である。だからこそ「エビデンスを残す」という行為は業務においてかなり重要である。

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最近コンサルティング先の別部署担当の方からフィードバックをいただいた。内容としては「ササモトさんはいつも正論ばかりでしんどいです。メンバーはみんな努力してるんです…」という内容だった。

上記のフィードバックをいただいた時は、私も感情的になり「努力してるのはメンバーみんな同じ。会議で決めたことをやるのは当たり前であり正論を言って何が悪いんだ!!!」と心の中で思ったが、少し時間が経ちフィードバックをいただいた背景を思い返したら反省点と気づきが山ほど出てきた。

ここでの気づきを1つ挙げるとすると「人は正論で動かない」ということだ。

20代の頃、正直「正論こそ正義」だと思っていた。だからこそ、何事もロジカルにエビデンスを元に意見を言うことに神経を注いでいた。そこで幾度となく周りの先輩方から「人は正論では動かない。”感動”という言葉はあるが”論動”という言葉がない意味が分かるか?」と問い続けていただいた。

その頃は「何言ってんだ!分かってるに決まってるだろう!」と正直心の中で思っていたが、今思い返せば「知ってること」と「分かってること」に大きな差があったはずだ。

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正論という武器を振りかざす前に、やるべきことがある。
それは「人間関係の構築」である。相手にリスペクトを持ち仲良くなるということだ。

改めてビジネスシーンにおいて、エビデンスに残すことやロジカルに正論ベースで物事の意思決定をすることは大事だと思う。この逆の、常に記憶ベースかつ感情的に議論を行うと話がとっ散らかり物事の意思決定をすることは困難だからだ。

正論は大事だが、その前にどれだけ相手にリスペクトを示し、相手のことを理解しているだろうか?またこれはクライアント限らず、特に社内のメンバーや上司・部下・同僚こそ大事なことではなかろうか?

常に正論という名の武器を振りかざしていると、周りからは「常にロジカルで冷静に物事を捉えられる人」と印象を抱かれるかもしれないが、一方で人間味がなく正論だけではにっちもさっちも行かなくなった時に頼られることはなさそうだ。

人は誰しもすぐ忘れっぽいし、完璧ではない。だからこそ、目の前の人を労る気持ちを改めて大事にしようと今回失敗から学んだ。


最近本に載りました(P144)📚

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笹本康貴(ささもとこうき)

1992年生まれ 千葉県出身
2016年 法政大学 卒業、新卒としてサイバーエージェントグループ会社に入社。新規営業として大手飲料・食品メーカーにウェブ広告媒体の販売並びに、小売店に対する店舗集客ソリューションの提供に従事。
2019年 マーケティング戦略策定を主軸に独立。
2021年 re株式会社を設立し、現在に至る。

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