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「マーケティング・コンサルタント」とはどのような仕事か具体例を用いて解説してみた。

医者とコンサルタントは似ている気がする

私は21歳の頃、人材会社の長期インターンをキッカケにFacebook広告運用にて初めて「マーケティング」に触れました。そこからサーチ(検索型広告)やディスプレイ、その他SNS広告運用と幅広くデジタル広告運用を経験し、新卒の広告会社では新規営業を行う傍らDSPの広告運用を担当。その後は、フリーランスマーケターとして独立し、メルマガ改善やSEO戦略、販促施策など幅広く「マーケティング」に携わっています。

「マーケティングをやっている」と話すと「私もです!」と言う人が多いですが、深く業務内容を聞くと全く知らない領域を担当されることは珍しくありません。

「なぜ同じマーケティングに携わっているのに、ここまで話が合わないのだろう…」と長期間疑問を持ってましたが、数年前にふとこの悩みが解消されました。

マーケティングは医療と同じだ

日本には多くの優秀なマーケティング従事者がいますが、その中で私はトライバルメディアハウスの池田さんと経営者の壁打ちを本業とされている菅原さん(すがけんさん)の思想と思考が好きでよくコラムやSNSで勉強させて頂いています。

お二人とも「マーケティングは医療と同じ」と話しており、この一言をSNSか記事コンテンツで初めて目にした時に「なるほど!!」と今までの悩みが一気に腑に落ちた記憶があります。
(いつか対談してほしい…とつぶやいたらすがけんさんが拾って下さいました🙏)

普段会話に出てくる「マーケティング」とは、「マーケティング施策」や「マーケティングコミュニケーション施策」を指していることが多く、医療現場で置き換えると「処方薬」と同等だと考えたら、今まで抱えていたモヤモヤが解消されました。世の中には無数の「薬」があり診断箇所によって処方する薬が異なる訳で、マーケティング施策においても課題に応じて打ち手も無数に存在します。

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私は現在「マーケティング・コンサルタント」として複数の企業の事業支援を行なっています。ただ「マーケティング・コンサルタント」と言っても中々「何をやっている人なのか分からない」と言われることが多いので、今回は普段どのような業務を行なっているのかを具体例を用いながら簡単にまとめてみました。


1)「マーケティング・コンサルタント」とは?

まず初めに「マーケティング・コンサルタント」として私の業務は下記です。(※注:企業や業界によって定義が異なる為、ここでは私個人の業務ベースでの説明になります。)

▼マーケティングコンサルティングとしての役割
① マーケティング戦略策定支援(調査・分析・戦略立案)
② マーケティング戦術設計支援
③ プロモーション施策の企画提案
④ 販売チャネルの構築と改善提案
⑤ 社内体制の構築と人材育成(採用支援)

現状の役割を羅列したところで、あまり具体的なイメージが付きづらいと思うので少し咀嚼します。先ほどの「マーケティングは医療と同じ」という前提で考えるととても理解が捗ります。

今回は分かりやすく医者とコンサルタントの役割を並列にして説明します。

医者は来院した患者に対して「診察」を行い、適切な「診断」をして、痛みを緩和させる為に薬を「処方」します。

医者と同じようにコンサルタントはマーケティングの側面から、企業が抱えている「課題」を把握し、その課題が発生している背景を「カウンセリング / ヒアリング」をして、課題解決に繋がる「戦術策定/施策設計」を提供します。

ここで重要なことは、プロの医者が処方した「薬」が100%効かないケースがあるのと同様に、プロのコンサルタントが設計した「戦術/施策」が効かないケースもあるということです。

もし「施策」が効かない場合は、戦術設計が誤りなのか?、それともその前のカウンセリング(戦略策定)が誤りなのか?を振り返り仮説立てをして、別の「薬=施策」を「処方=実行」する必要があります。

2)多くの企業はなんとなく「薬」を飲んでいる

これまでマーケティング・コンサルタントとして複数の企業様をご支援させて頂いたりご相談を頂きましたが、多くの企業で共通することがあります。

それはなんとなく「薬」を飲んでいるということです。

これは即ち、「病院に行かずにこのお腹の痛みは恐らく胃が原因だと思うから胃腸薬を飲んでおこう」みたいなもので、本当は大腸炎ですぐさま診察が必要なケースがよくあります。

なので、そもそも現在の企業課題は何が原因なのかをコンサルタントとして早急に究明する必要があります。

では、どのように企業課題を紐解くかを具体例を用いて説明します。

上記の資料はSaaSのサービスを展開している企業様に対して初回のオリエンテーションで提示するものです。

例えば、とあるSaaS企業において現在の課題が「売上が伸び悩んでいる」だと仮定します。過去の売上推移を見ればダウントレンドなのは分かりますが、どこの要素が特に減少しているのかが不明確な場合があります。

そこで、上記のように「売上」をそもそも「トライアル売上 / 初回売上」と「リピート売上」に分類し、「売上が減少している」というファクトに対して具体的にトライアル売上が減少しているのか?はたまたリピート売上が減少しているのか?を明確にします。

すると、「リピート売上は一定だが、トライアル売上が減少している」ことが分かり、次はトライアル売上を構成する要素のどこが更に減少しているのか突き止めます。

重要な点はここからで、スタートアップはじめ特に中小企業で多い悩みが売上を構成している要素ごとの数値が揃っていないというケースです。これは医療で例えると「お腹が痛いが、お腹のどの辺りが痛いのか、どんな感じで痛いのかが分からない」と言っている状態に近しいです。

上記の場合は、数値を揃えるところからご支援したり、売上構造の分解から説明したりします。今回は一旦各数値が揃っているという前提で話を進めます。

3)「痛み」を解消するための処方薬を投じる

諸々数値を揃えてみると、トライアル売上の中でも特に「想起率≒リード化率」が課題の可能性が出てきました。ここで初めて「想起率≒リード化率」を改善する為には何をすべきかというマーケティング戦略を考えはじめます。

マーケティング戦略を設計した後に、マーケティング戦術設計(薬)を羅列して、まずは広告施策を見直そうであったり、広報部と連携を取りPR施策の強化を行うなど優先順位を見ながら進めます。

4)その「痛み」は対処出来ない可能性がある

私は企業の中でも「マーケティング部」の方々と相対することが多いですが、カウンセリングをしながら現状課題を紐解いていくと「マーケティング部の範疇を超えている」ことも頻繁に起こります。

例えば、上記のトライアル売上の中でも特に「契約率」が減少傾向にある場合、これは営業(=インサイドセールスやフィールドセールス)の役目になり、マーケティング部ではどうすることも出来ないケースもあります。

この場合は、契約率低下以外の原因を探さなければそこで終了、他にマーケティングの側面から治療(支援)することがあれば対応する流れになります。

5)プロに任せることも重要な決断

これまでは課題の把握から原因究明までの流れを説明しましたが、ここでは戦略策定の重要性についてお話します。

よくマーケティングのプロが不在の企業が陥るケースとして「施策から考える病」です。分かりやすい例だと「Instagramの運用をはじめたいです」や「SEO対策を強化したいです」なのです。

これは先ほど例に挙げた「病院に行かずにこのお腹の痛みは恐らく胃が原因だと思うから胃腸薬を飲んでおこう」と全く同じで、適切な診察と診断が済んだ後の処方薬(施策実行)なら良いですが、上記の場合は9割以上「施策から考える病」の企業がほとんどです。

上記の資料は、戦略策定と戦術設計の妥当/不当を四章限で表したものです。

こちらを見れば一目瞭然ですが、診断(戦略策定)が誤れば施策が破綻する可能性は約50%、診断(戦略策定)が適切でも処方薬(戦術設計)の判断が誤れば破綻する可能性が約75%まで上昇します。

なので、社内でなんとか対応する努力は必要ですが、自社判断で無駄にリソースやコストを消化するくらいなら、早い段階でプロを一時的でも良いので入れて適切な診断(戦略策定)だけでも任せると成功確率は格段に上がります。

6)プロに任せる前に準備すること

社内では限界だと踏ん切りをつけ、マーケティング・コンサルタントのようなプロに依頼する意思決定を行うと、多くの企業は次に「採用」を検討します。

もちろん「採用」を検討することは妥当ですが、経験則からお話すると正社員として一定のマーケティングスキルを合わせ持った人材を採用することはかなり難易度が高いです。理由は複数ありますが、明確に言えることは母数が少なく単価が釣り合わないからです。

ここ数年で広告代理店や事業会社にいる優秀なマーケターは独立して個人で仕事を請け負う傾向が高く、また年々マーケター需要が上昇している側面から単価も高くなっている傾向があります。(※あくまでここは感覚値になります)

なので、フリーランスのマーケターは契約単価も優しく柔軟に動ける為オススメです。(※契約単価が優しいと記載しましたが、ある程度の経験値があるマーケターは時給1万円以上が妥当な気がします)

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外部の「プロ」に任せるとしても、社内で事前に課題整理と事前準備が必須です。具体的には下記の項目をチームとして認識しておくことです。

上記の6つの項目が事前に整理されていないとマーケティング・コンサルタントが外部から入ったとしても、戦略策定や戦術設計に入るまでにかなり時間が掛かります。上記の項目は可能であれば定量的なデータよりファクトを掴めたら理想で、もし厳しければ最低限でも定性的なデータ(傾向)があるとよいと思います。

7)コンサルタントは「ブラックジャック」ではない

今回は「マーケティング・コンサルタント」の概要と具体的な動き方の一部をご説明しました。スタートアップや中小企業でマーケティングにお悩みの方は是非社内検討だけではなく、外部からプロを入れることを検討材料として持ち合わせることをオススメします。

またどこから依頼していいのか分からない…という事業責任者やマーケティング担当者の方から頻繁に相談を頂きます。なので、45分間で簡単に事業課題の整理とネクストアクションの明確化のサポートを無料で30社限定で対応することにしましたので、詳細が気になる方は下記ご覧ください。

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最後にコンサルタントは「ブラックジャック」ではないという話で締めます。これは社内にマーケティング部がない中小企業に多い悩みで「ヒト(人材)・モノ(サービス)・カネ(資金)」はあるが、戦略がないので何とかしてほしいというものです。

相談内容がかなり抽象度高いことは一旦置いておいて、ここでお伝えしたいことは医者もそれぞれ専門医が居るのと同様に、マーケティングもそれぞれ専門医がいます。

なので、一人のブラックジャックのような天才医師は現実的に居ないのと同じで、マーケティングも戦略を描く人もいれば、SEOに特化した人や、広告運用が専門の人がいます。大事なことは、出来る限りコストを抑えたいが為に一人のマーケティング・コンサルタントにあれやこれやと期待しないことが重要になります。

まず診断を経て「病名」が分かるだけでかなりの進歩です。まずは気軽に診察を受けてみませんか?


最近本に載りました(P144)📚

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笹本康貴(ささもとこうき)

1992年生まれ 千葉県出身
2016年 法政大学 卒業、新卒としてサイバーエージェントグループ会社に入社。新規営業として大手飲料・食品メーカーにウェブ広告媒体の販売並びに、小売店に対する店舗集客ソリューションの提供に従事。
2019年 マーケティング戦略策定を主軸に独立。
2021年 re株式会社を設立し、現在に至る。

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