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4歳の鑑賞方法とコスパと赤瀬川原平先生

私は4歳長男を美術館や博物館、展覧会によく連れていく。
自分自身が見たいのもあるし、長男に世の中にたくさんある素敵なものを見せてあげたいからだ。

以前は長男を連れて行くのがあまり好きではなかった。
理由は、長男の鑑賞方法にある。

とにかく早足なのだ。

さっさかさっさか先に行ってしまい、
あっという間に順路の終わりに着いてしまう。

全然見られない!
解説をじっくり読みたいのに!
時間もお金もかけて連れてきたのに・・・
コスパが悪い!

と思っていた。

子どもを連れていくにはちょっと早かったかな、と諦めかけていた時。
ふと思い出したのは学生の頃熟読していた、「赤瀬川原平の名画読本―鑑賞のポイントはどこか 」という本だ。

▼読みすぎてボロボロ

▼Amazonに中古が1円で出ていた!

赤瀬川原平先生は、前衛美術家、随筆家、作家・・・様々なジャンルでご活躍されていた方だが、私にとってはトマソンや新解さんの謎、老人力でおなじみの「なんだか面白いおじさん」だ。

本書では、いわゆる西洋名画を取り上げている。が、それらの由来や堅苦しいウンチクは語られない。ただただ、先生の「好きだ」「心地よい」「浮世絵みたいだなあ」といった素直な感想が綴られている。
何なら「下手な絵だ」「筆先が説明ばかりしている」などの酷評も含まれる(名画とされる絵の酷評を本に載せるって相当すごいことだと思う)。

それにより、西洋名画鑑賞ッと肩に力が入りまくっていた読者は「あ、なーんだ。見たことを素直に感じればいいのね。」と、
ふっと自然体に戻ることができる。

そんな本書の序文で説かれていること。
それこそが「早足鑑賞」だったのである。

早足で見ると、義理や理屈で見るような絵がどんどん通り過ぎる。これが好きだ、これが美味しいという本音の絵の前にぱっと止まる。これは自分の本音を確かめるのにいい方法だと思った。時間が無いから目も張り切っているし、感覚が踊っている。よいものがさっとつかめる。全部平等にというのでのんべんだらりと見ていたんでは、こういう張り切った感覚は出てこない。
(「赤瀬川原平の名画読本―鑑賞のポイントはどこか 」より引用)

近頃の私は、せっかく来たんだからと
順路通りにすべての絵を見て、
解説文もじっくり読み、
なるほどなるほど、と頭で鑑賞していなかったか。

一方で長男はどうか。振り返れば、たまに足を止めてじーっと観察してる時もあった。
さっさと早足で通り過ぎていた長男のほうが、鑑賞の本質をついていたのではなかったか。

本書が書かれた時、先生は58歳。その年齢で、既存の概念にとらわれないこんな美術鑑賞本を書かれた頭の柔らかさが流石!

これに気づいてから、私も早足鑑賞をするようになった。
長男とは足を止める絵が異なるが、それはそれ。私はこの絵のここが好き、ここが面白いと思うの、君はどう?とお話ししたりしている。長男の気に入った絵のお話しもする(もちろん小声で)。

2人して早足鑑賞するので、20~30分で出てくるときもある。費用と絵の網羅度(?)で考えればコスパは悪い。
しかし、費用と時間・充実度で考えたらコスパはとても良くなった
何よりアドレナリンが出てとても楽しい。

新型コロナウイルス感染対策はきっちりしつつ
早足鑑賞で滞在時間を短く。
良かったらみなさんも早足鑑賞を試されてみてはいかがでしょう。

▼おすすめ展覧会情報サイト
https://artscape.jp/exhibition/pickup/index.html

ちなみに・・・サムネイルにしたルノアールの名画「ピアノによる少女たち」も本書に出てきます!絶賛か酷評、どちらだと思いますか?
あなたはこの絵を見てどう感じましたか?


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