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『36℃の枷』


夕暮れに立ち昇った怪物が
夜の闇に完全に溶けきった頃
車も街灯もない一本道は
前も後ろも奥行のない闇だった

突如現れた天然の自由帳に
小さい頃の記憶が落書きされる
穏やかだった満杯のコップに
得体の知れない何かが込み上げる

発狂。

一瞬、真の世界へと暗転し
脳裏を掻き乱す映像と
筋肉を強ばらせる感覚が
何一つ言葉にならないまま
耳に届く声で落ち着いていく

脳裏には残影が響き渡る
4℃の闇は既に私の体温でぬるんでいる
脳にはデジタル画のように
明るい黒として保存される
その出力された画像を見て
私は心底失望する

その後はもういくら待ってみても
期待が雑音として居座っている
私はすっかり諦めて家路に着く
街の光が心の内を食い散らかしていく



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