#106 明るい表通りで 〜Snatch of Coffee〜
2年前の2021年12月18日、トークイベント TEDx に登壇してトークをした。人生で最高に緊張した時間だった。9月に準備を始めて以降、3ヶ月半の間トークに向けて取り組んだので、本番が終わった後は開放感を超えて浮遊感のような感覚があった。今日はそのトークに関連の深い曲と、友人の夢を掛け算してみたい。
明るい表通りで 〜On the Sunny Side of the Street〜
TEDx トークは英語で、元原稿では数箇所に曲の歌詞を引用していた。しかし TED 本部は著作権にとてもうるさい。著作権への配慮不足という理由でトークの YouTube への掲載が却下されては悲しいので、直前の打ち合わせで、泣く泣く歌詞の引用部分は取り除き、普通の言葉で書き換えた。
当時僕が開発を目指していた教育系 AI システムを、日本の教育現場の「主流に」したいという意味で、フランク・シナトラやナット・キング・コール、ジュディ・ガーランドなど多くの歌手が録音した名曲『明るい表通りで』(原題:On the Sunny Side of the Street)の歌詞の一部、“to the sunny side of the street” を引用していた。実際のトークでは、“to the main street” に変えて話したので、英語屋らしい引用の妙が失われてしまい、残念だった。
数多くの録音の中で、僕はやはりフランク・シナトラの録音が好きなので引用しておく。読みながら聴いていただければと思う。
歌詞の中で輝く一語
この曲の出だしの歌詞が最高だ。少し引用してみる。ネット上の歌詞サイトはサイトによって歌詞がまちまちなので、聞き取って訳詞してみた。単語一つ一つが弾けるような輝きを持っていて、訳すと味わいが失われてしまう。
この歌詞でひときわ光っている一語が、一行目にある snatch だ。動詞 snatch は「素早くつかむ」「盗む」「誘拐する」「確保する」「手に入れる」など複数の訳語があてられているが、訳ではなく意味を説明するならば、「大切なものを逃さないようすかさず確保する」というような意味だ。
「幸運の女神の前髪」を好機を逃さずにキャッチする感覚、あるいは回転寿司でお目当てのレアネタを逃さず取る感覚、と言えば分かりやすいかもしれない。歌詞中のシーンでは、ゴキゲンで散歩する時にお気に入りの帽子がなくてはならない感じがよく伝わってくる。
☕️ ☕️ ☕️
Snatch of Coffee
友人の Karina さんが、下の記事で将来は「Snatch of Coffee」という名前のカフェを作りたいと書いていた。我々が人間らしい生活をするために snatch しなければいけない大切なものを、環境に恵まれないせいで逃してしまいがちな子どもや大人のためのスペースにしたいという思想だ。この思いと意図に深く感銘を受けた。僕も先の投稿「#66 もう一度、『ぶらいと珈琲』一緒にやりませんか?」でいつかカフェをやりたかったと書いたので、夢を同居させてもらえると嬉しいな、と考えていて交渉中だ。
教師だった頃から今まで周囲を見ていると、家庭環境のせいで読書や勉強に集中できなかったり、逆に親の過干渉で読む本や勉強の仕方まで決められてしまい、自由に好奇心を泳がせることのできない子どもたちも多いように思う。
そんな人たちがゆるやかに集い、お茶やコーヒーを飲みながら知的好奇心を満たすための準備ができる場所〜「人間らしい人生を送るために必要な大切なもの」を snatch できるような場所〜を提供したい。
退職した先生や、事情があってフルタイムでは働けない人にも各々のやり方で手伝ってもらい、「お客さん」「従業員」という垣根を超えて、誰でもが人生の「明るい表通りへ 〜 to the sunny side of the street」歩いて行く途中に寄り道できるようなカフェができたら最高だと思う。
今日もお読みくださって、ありがとうございました☕️☕️☕️
(2023年12月27日)