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ある日本企業での悲喜交交〜前職で学んだこと〜まとめ

みんさんこんにちは、真吾です。※筆者、右

今回は大切なことのまとめです!前回までお付き合いいただいた経緯を読むとより臨場感ありますが、今回の記事だけでも大丈夫と思います。

少しでも共有できれば幸いです。早速行きます。

作り手優位

物を作ることがどれほど素晴らしく尊いことか、
実際にその凄みを感じ取るまでに5年の歳月はかかりました。
前職では「工場さんに足を向けて寝るな」「創業当初は物を作って頂くことから至難だった」とおりに触れ語られる環境でした。

あくまで私どもはお客さんと工場さんの間に入り、
生地の手配・パターンの手配・プロダクトの管理・在庫管理・店舗設計とおもてなしといった、
リスクを負うこと商品改良と新企画の立案、出口の拡大と調整が役割でした。

ところで日本では産業構造改革が途中でストップした結果、
全国共通の最低賃金の設定はなし得ず、各工員さんの給与は横ばい、
工場投資も後継者問題から多くの工場さんが後ろ向きなのが現状です。

「小売価格(プライシング)は欲望の上限値を狙う。それが経営者の技だ。」ともよく聞かされておりましたが、
前職は5900円の商品を中心に、原価率は50%以上。
手前どもの給与も、工場さんへの工賃も、業界では良い方、ですが、
現場では好きでないと続けるのは厳しい環境です。

かと言って我々と工場さんの給与を上げるために単価を値上げしても、日本の実質賃金の推移(過去25年下がる一方)から考えて現実的にいい対策ではないので、国内のシェアは30%を目標に、その先はブランディングを昇華し世界で勝負。が不可欠です。
そうして工場さんにも少しでも多く還元し、また未来の見通しを一緒に立てて、日本製で良い物を継承していくことが良いと思っております。

※ところで生地屋さんで数社、世界で大活躍されている素晴らしい会社様があります。本当に腰を抜かすほど素晴らしい素材と開発力です。

こう考えると、資本主義的な「安くて質も悪くない物」の消費を続けていいのだろうか。
「正しく作られている。環境に優しい。」このような判断も含め買い物をするようになるだけで、一人の意識が変わるだけで、守られる価値がある。
そしてそれは着る人(と周りの人)の心の豊かさを作っていく。

世界中の中流の人みんなが同じ服を着て、ダイバーシティがあるのか?
スローフード(顔の見える食)のように、自分が応援したい、そう思える会社はきっと個性豊かな服を作りますから、結果的にいろいろな個性あふれる街になると良いと思っております!

商売は入口と出口の動的平衡・バランス

これも口煩く聞かされた一つ。
どちらに偏っても会社はなくなる。
常に両方に目を配りながら、調整する
だからこそ、調整の効く日本製がよく、だからこそ小売は直営店が良い。
どのセオリーも多くのアパレルでは一部だけです。
結果的に割りを食うのは誰か?消費者です。

初めからセールを前提にされたプライシング、
大量生産品であるが故にコモディティ化する商品、
売り上げの30%以上を持っていく百貨店ビジネス。

だから毎日・毎週の動向を見ながら、細かく調整していく、52週MD
・予想より売れている=近い将来商品が枯渇する ※逆も然り
・売上は予測通りだけど、中身が予測と違う=在庫に偏りが出る
・残った商品があればページで再打ち出ししていく
・見えない売上ロスを可視化していく:店舗ヒアリング
・売れている商材のその理由を聞く:店舗ヒアリング・・・

店頭・ECに来たお客様に買っていただくには?

フラッと来たお客様を掴めるかが、小売の勝負です。

まず初めに店舗設計です。
棚に置いてあるシャツは絵的に美しく配置されているか?
プライスはわかりやすいか?商品コンセプトの伝わる並びになっているか?
目さんの高さや、導線は快適に確保されているか?

そして次に、必要があればしっかりと向き合って対話をする。
※過度な接客、誰に言っているかわからない「いらっしゃいませ」は不要

自由にみていただく時間を大切にし、提案が必要そうであれば、
3(〜5)点ご用意する。同時に同単価のほかアイテムも添える。

こうして、「これも欲しい。あれも欲しい。」と思っていただけるか。
この欲望の臨界点を超えさせることが大切です。
だからできる限り同一単価の方が良い。「これもあれも同じ値段で買える。」と、いちいち計算する必要を省いて差し上げる。
だからこそ、【専門店・少ロット・多いいバリエーション】がとても大切。

接客は大変奥深いので、ここでは割愛します。
が、言葉一つで全てが変わるくらい、大変レベルの高い技術が必要とされ流ことだけ記しておきます。

リピーターの作り方

1 MOMENT OF TRUTH の考察が必要です。
人は、体を通して情報をとり、心を通して判断し、頭で理由づけると言われております。
そして最終的な満足は、脳が判断します。
心は浮動しやすいため家に帰ってくる時には頼りにならず、体が私たちに「ご主人様このシャツは体にフィットして良いですね」でもなく、頭が「番手と作りが優れているから買ってよかった。」でなく、
その全体の判断を含めて脳が判断します

「前から言いシャツだとは知っていて、お店の雰囲気も良かった。また店員さんの感じもよく、あの方のお勧め通り(サイズ・デザイン)を買ってみて確かに間違い無いな。」
こう思わせられた瞬間にリピーターが生まれます。
どの一つも欠如できません。
そう、だから私たちのお店のWEBのシェアは25%。今後10年でアメリカを中心に、洋服のEC比率は50%を超える勢いですが、それもECが現実同じくらい快適に(場合によっては現実以上に)買い物できるからでしょう。

2 毎週〜毎月の新作投入
定期的に足を運んでいたいて初めてリピーターです。
そのためには、先を満たした上で、リーズナブルな価格設定と、定期的な新作投入が不可欠です。
シーゼンで総入れ替え、年4〜6回の新作とセールの繰り返しではリピーターは獲得し得ません。
できれば毎週、少なくとも毎月の間に、たとえ小ロットでも必ずご紹介できる新作をご用意する。できれば小ロットで売り切れて買えなかった経験をしていたただくくらいが良いです。

リピーターの定義は各社によりますが、単価が1万円前後であれば、
毎月1〜2回お越しいただき、2ヶ月に一回買っていただける方が優良顧客。
数ヶ月に1回お越しいただき、半年に一回買っていただく方が顧客様と言えるでしょう。
※もちろん最近の頻度と同時に、購入累計金額も大切な指標です。
※最近の頻度という点では、これまで買っていただければここ一年購買がない方を放っておくのはもったいないです。新規の方よりもロイヤリティはお持ちなので、謙虚にこの方々へ「最近はこんな新作が入っています」とご連絡差し上げると良いと思います。

3 価値≧期待
価値については次の行で、ここでポイントは、
期待値と比べて実際どうだったか?が大切ということです。
期待値というのは、ディズニーランドの列です。あれがあるから一瞬一瞬を愛しんで楽しもうとして、実際に手の込んだ演出もあり、結果楽しい。
「ステーキでなくてシズル(ジュージューいう音)を売れ」も同じです。
たまに割と綺麗でないレストランで、とてもおいしいご飯があったりするとファンになります。
要は期待値と同じかそれ以上の時、人はファンになる。
過度に期待を上げるのは危険なので、実際のサービスのレベルと同程度に、できれば少しハードル低めにするとファンはできやすいようです。

ものの価値とは?

質 / 価格 × 伝達 = 価値
よって価値を上げるには、質をあげるか、値段を下げるか、はたまた伝達力をあげるほかありません。
質とは、その必要な熟練度(難しさ)・工程数・その業界の模範的な商品に比べてどうかなどで決まります。
伝達と、リアル店舗・ECによるサービス、加えてメディアによるイメージによって決まります。
リーズナブルな価格設定で、良い質と良いサービスが合わさって初めて、価値ある商品となり得ます。

ドリルでなく穴をうれ(ウォンツとニーズについて)、または問題解決のために雇用してもらえる手段を売る

昔から言われているセオリーですが、自分たちはあまりに自社製品に通暁しているため、時々それ自体を売ろうとしてしまいがちです。
ただお客様が必要なのは、ドリル自体でなくて、穴。
穴も絵を飾るためなのか、回線を通すためなのか、盗聴器を仕掛けるためなのか笑、用途が違います。
また時々お客様は、目的はわかっているけれど手段をご存知ない時もあり得ます。
なのでお一人ずつ、何に困っていて、どう解決したいと思っているかを察知して、正しい提案をすることが必要です。

良くある例が、カッコよさと失礼のない服装のギャップ。
多くのアパレルが「カッコよさ」を売りにしている中で、私たちは「どこにいっても対峙できる正しい装い」を提案していました。
それは多くのビジネスマンにとって問題は「自分のプレゼンテーションを成功させたい。提案する内容に恥ずかしくない装いをしたい。」だからです。
「その解決策として、弊社のシャツを雇用(購買)していただけると、こう問題は解決されます。」というのが正しい提案でした。

サービスとは何か?

お客様が踏むプロセスの全てで、私たちが価値を生み出すことといえます。
顧客サービスの重要性が言われている中で、日本の接客は世界でも最高峰と思います。ここでポイントはそのプロセス全てがサービスであること。
社長のインタビュー記事、使われている包装紙、WEBの使い勝手、使用後の対応、電話の受け答えなど全てです。
それに対して、お客様は多くの場合直感的に(ティンダーのように・・)好き・嫌いを判断されます。
あなたが決めたお客様にとって好きが全てのフローで実現されるよう、目を配ることが大切です。

ビッグデータはどこまで頼れるか?

AI×ビッグデータを駆使できる環境であれば、最高です。
これがあればDトランプさんも勝てるし、ブレグジットもなし得ます。笑
つまり人間をあるタイプに分類して、それぞれにA/Bテストを行い、有効なコンテンツを見つけ、ある方向へ導く。
資本主義でお金さえ払えれば、あなたの思考を丸裸にした上で、メディア上のコンテンツをジャックすることができるとわかりました。

話を戻して、数字の使い方ですが、まず予測が大切です。
直感的にどうなっているか?と現実を照らし合わせ、直感力を磨く。
次に、そのデータをもとにどう行動するか?商品力なのか、在庫数なのか、展開方法なのか、実際に改善をすることが大切です。
ちなみにデータだけで判断を行うことは誰にでもできます。
大切なのは現実を把握しに行くこと。そのデータが作られた背景(例えば何かが足りず代わりに何かが売れていた)や作られなかったデータの背景(これがあれば売れていたのに数字には出てこない)こそが宝です。

長くなってしまいましたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!少しでも役立てば幸いです。

真吾

ご一読いただき感謝です。あなたにとって少しでも新しいこと、役に立つことを共有できていれば嬉しいです。ご支援はお気持ちとしてありがたく頂戴し活動に活かさせていただきます。