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ひとり旅までのまわり道

はじめてひとり旅をしたのは、2017年のこと。
転職のタイミングに40日間のヨーロッパ周遊の旅に出た。実は、この旅に出る以前にも、二度ほどヨーロッパに行こうとしたことがあった。しかも、航空券をとったのに、行けなかったことが二回...。

一度目は、大学4年の夏。8月〜9月まで一ヶ月ほどのヨーロッパ行きの計画を立てた。自分で何でも決めたかったのもあって、友達とではなくひとりで、長期の旅行に挑戦してみようと思った。ヨーロッパにいる友人に会いに行きがてら、いろんな国を見てみたい。パリから入り、ハンガリーから日本に帰る航空券をドキドキしながら取った。航空券の値段は今でも覚えている。それくらい、アルバイト学生にとってはお金を工面する面でも挑戦だった。語学があやふやなこともあり、行きあたりばったりの旅ではなく、ある程度自由にできる余白は取りつつルートを決めた。泊まるホテルもブッキングした。計画を立てながら、もう、心はヨーロッパだった。

いよいよ出発という1時間前に、念のため航空券の予約票を印刷しようと思い、PDFを印刷にかけてる途中にはたと気づいた。私が予約したのは、8月30日の0時20分羽田発パリ行きの飛行機。何かがおかしい。20時に家を出て22時には羽田空港着のはず。でも、あれ。今、時計は8月30日の19時00分だ。

完璧に、1日勘違いしていたことに気づく。

そう、私は気づかないあいだに飛行機に乗り遅れていた。飛行機の出発日(8月30日)に気を取られ、家を出発するのも同日(8月30日)だと思っていた。羽田空港に2時間前に到着するために、本当は8月29日に家を出てなくては行けなかったのに。なんという不注意。それに気づいた私は、リビングで突然の号泣。夕食時で、ご飯を食べていた家族は、騒然。振替航空券を探すも、値段が倍以上になっていて、断念。今は笑い話だけれど、二週間は引きずった。会いにいく予定だった友達やホテルに事情を話して、キャンセルしたときの心情と言ったら。情けないやら、悲しいやら、悔しいやら。私は、まだヨーロッパに呼ばれていないんだと思った。

二度目のチャレンジは、同じく大学4年の冬、二月。卒業後の進路に、やきもきし、とにかく吹っ切りたかった私は、ロンドン行きの航空券をなかば投げやりな心でとった。

ちょうど出発する1週間前。癌で闘病中だった祖父の容態が悪化し、病院側からは、心づもりをしておいてくださいと言われた。私の無気力な心を見透かしたかのように、「そんなんで一人でヨーロッパは危ないよ」と、おじいちゃんに言われているようだった。いさぎよく渡航をやめた。ちょうど、発つ予定だった日に、祖父は亡くなった。おかげで、看取ることも、葬儀にでることもできた。ヨーロッパには、逃げるようにではなく、恋い焦がれて行きたいと思い直した。

そうして、ようやく4年越しでひとりヨーロッパ周遊の旅へ。
まず、飛行機に乗れたことがとても嬉しかった。(深夜発ではなく、午後発に)バンコクでのトランジット、パリのシャルルゴールド空港、バスに乗って流れ行く街の景色を見ながらパリの街へ。順調に、一歩ずつ近づけていることにゾクゾクして、少し涙が出た。現地で待ち合わせした友人と会えた時は、踊りだしたくなるほど嬉しかった。あのとき、パリの街並みはとても輝いて見えて、祝福されているような光が降り注いでいた。

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