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わたしが好きな本・3冊

本が好きだ。人並みに読書を楽しんできた。でも、わたしがいまいる出版業界にはハイレベルな本好きが集まっているため、いつもの「わたしなんて」が発動し、最近は本への愛を表現することが全然できなくなっていたように思う。

だが読書量が少なかろうと、大衆小説ばかり読んでいようと、関係ないではないか。好きに貴賎はない。好きなものは好きだ。

だから今日は、わたしが大切にしている3冊を紹介したいと思う。もし本好きな人が読んでくれていたら、あなたの3冊も教えてくれると、すごくうれしいです!


1 『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる著)

1冊目は、佐藤さとるさんによる『だれも知らない小さな国』。これは小学生の頃に、母がわたしにすすめてくれた本だ。

わたしの母親も本を読むのが好きな人で、我が家には母親専用の本棚があった。そこにはたくさんの文庫本が並べられていたのだが、当時小学生だったわたしにとって、文庫本は“大人の本”に見えていた。

この本は、そういう意味で、わたしが初めて読んだ大人の本だ。とは言っても、中身はしっかり子どもも読めるファンタジー。小さなコロボックルの活躍に当時のわたしは夢中になり、20年以上たったいまでも、コロボックルのいる山や街の様子をはっきりと心に浮かべることができる。

そして物語も最高に面白いのだが、母と同じ“大人の本”を読み、感想を言い合えたことが当時とてもうれしく、わたしのなかでずっと変わらずに大切な一冊になっている。


2 『もものかんづめ』(さくらももこ著) 

みんな大好き、さくらももこさんのエッセイがわたしもやっぱり大好きだ。大学に入る前まで、本は親が買ってくれるものだった。でも大学で上京し、ひとり暮らしを始めるようになってからは、当たり前けれど、自分でお金を払って本を買うようになった。

貧乏な大学生だ。いまと比べたとて、本1冊を買う重みがまるで違う。

そんななか手にした、このエッセイ集にわたしは夢中になった。文章だけで人をこんなに笑わせるなんて! さくらももこって本当にすごいと素直に感動し、尊敬した。

また、それまでのわたしは本をどこか「いいもの」「正しいもの」だと思っていたけれど、『もものかんづめ』は、本とは無意味でくだらなく、決して「いいもの」などではないことをわたしに教えてくれた。

それは、話すのにちょっと緊張する関係だった同級生と、本当の友だちになれた瞬間のようだった。この本をきっかけに、わたしと本も友だちになった。
くだらない本も、無意味な本も、たまにくだらなくない本も、大学時代に本当にたくさんの本を読んだ。


3 『カンガルー日和』(村上春樹著)

最後の1冊に、村上春樹さんの著書をあげるのは、最大公約数的で気がひけるけれど、それでもやっぱり嘘はつけない。村上さんの『カンガルー日和』に収録されている、「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」という短編が、わたしは大好きだ。

この短編を読んだ瞬間、「出会ってしまった……」という衝撃的なカッコよさに身体が痺れた。軽妙で、軽快で、シャレっ気があり、ロマンティックで、まさに100パーセントの文章に感じた。だれもが知る偉大な作家・村上春樹は、以前からよく読む作家の1人ではあったけれど、これを機に、わたしは村上ワールドにどっぷりとはまることになる。

その後、村上作品をきっかけに、わたしの興味は、文学だけでなく音楽やあらゆる文化に対しアメーバ状に広がっていく。

読書の醍醐味とは、大好きな1人(1冊)と出会うと、そこから数珠つなぎのように興味が広がっていくことにあると思う。作者が影響をうけた著者から、本に出てくる音楽まで、好きだから知りたくなる。

この本と村上春樹さんは、わたしにとってまさにその発端であり、象徴のような存在になっている。


たらたらと書き連ねてしまったが、わたしにとって大切な1冊とは、本の内容のみならず、自分自身にとって何らかのターニングポイントを与えてくれているものだった。

これからそんな本に何冊出会えるんだろう。そして、わたしはどう変わっていくのだろう。未知なる本との出会いに期待しつつ、最後に言わせて欲しい。

やっぱりわたしは、本が好きだ!

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