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佐々木麦のそそそ

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趣味で書いたショートショートです。作品はすべてとある人物からもらった「お題」を題材にしています。
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記事一覧

掌編小説314 ①(お題:コメント・モリ)

米戸ことは 以下の内容で退会処理を行います。 本当によろしいですか? 本当によろしいです…

佐々木麦
1か月前
3

掌編小説313(お題:プレッツェル知恵の輪)

日曜日、よく晴れた午後のことだった。 街の中心にある噴水広場のベンチに老人が一人で座って…

佐々木麦
2か月前
5

掌編小説312 - 電子言霊の墓場送り

「ここがきみのデスクね」 と、眼鏡の男性に案内されたのは意外にも普通の、どこのオフィスに…

佐々木麦
1年前
13

掌編小説311 - アインシュタインの選択

「鵜ノ沢海里です。趣味は天体観測。鵜ノ沢の『鵜』はペリカン目ウ科の鳥の総称で、日本では古…

佐々木麦
2年前
4

掌編小説310 - 窓から鳩を飛ばしています

鳩山探偵事務所の「鳩山」はもちろん単純に俺の苗字だが、文字どおり鳩が山のように集まること…

佐々木麦
2年前
8

掌編小説309 - 鵜の目鷹の目、鳩の目

鵜ノ沢の「鵜」はペリカン目ウ科の鳥で、日本では古くから漁業や観光業の友でした――と、鵜ノ…

佐々木麦
2年前
2

掌編小説308 - 生死の境をうろうろしています

古い集合住宅の一角。六畳の洋室の片隅で、猫が壁に爪をたてている。右の前足を引っこめるとまたわずかに壁紙がめくれた。がりっ。横顔はまるで用を足すときのような神妙な面持ちだ。 青みがかった黒の体毛に燃えさかるようなルビー色の瞳。それは、由緒ある一族の末裔たる証だった。 先祖はもともと風来坊だったそうだが、あるとき西洋の地で気まぐれに家猫となり、居候先には先住犬がいた。先住犬は代々、主人の家の墓を守るチャーチグリムーー誇り高きブラックドッグだった。その体毛と瞳はのちに先祖が「継

掌編小説307 - 頭隠して口隠さずの巻

数年前にウイルスが流行ってからというもの、この国もすっかりマスク文化というものが定着しま…

佐々木麦
2年前
3

掌編小説306 - Kid A

ママは溜息が嫌いだった。 誰かの溜息が大嫌い。自分が満たされているときはそれを邪魔された…

佐々木麦
2年前
3

掌編小説305(お題:コロコロ変わる名探偵)#ショートショートnote杯応募作品

(394文字) ※ショートショートnote杯への応募作品です。

佐々木麦
2年前
3

掌編小説304(お題:株式会社リストラ)#ショートショートnote杯応募作品

最初にリスがきた。 「本日をもって、御社は弊社に吸収合併されることとなりました。これに伴…

佐々木麦
2年前
5

掌編小説303(お題:違法の冷蔵庫)#ショートショートnote杯応募作品

六時過ぎ、やってきたのは作業着姿の男だった。 「本日は冷象庫の点検ということで」 僕が普…

佐々木麦
2年前
8

掌編小説302(お題:君に贈る火星の)#ショートショートnote杯応募作品

ごはんだよ。きみが呼ぶので、仕事の手をとめてダイニングにむかう。ボウルに山盛りのポテトサ…

佐々木麦
2年前
5

掌編小説301(お題:しゃべるピアノ)#ショートショートnote杯応募作品

ド、レ、ミ。 鍵盤を人差し指で叩いて、亜乃ちゃんは驚きました。 「おねえちゃんのピアノ、おはなしするんだ!」 お姉ちゃんは宿題のプリントから目を離さないまま、つまらなそうに答えます。 「ピアノは『鳴っている』っていうの」 「しゃべってるよ」 「それは『音』っていうの」 ミ、レ、ド。 もう一度人差し指で鍵盤を叩いて、亜乃ちゃんはお姉ちゃんのほうをふりかえりました。 「いまのはね、ミ、レ、ドっていったの。あのにはわかるよ。へんなことば!」 お姉ちゃんはぎょっと